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御料理 一燈/倉橋宏紀さん(日本料理)

飲食業界のトップランナーにインタビューする「つなぐ人」。福井県での開業準備で心がけることや土地ならではの魅力について、飲食に関わる様々な分野の方に教わります。

今回ご紹介する倉橋宏紀さんは、JR福井福井駅から車で約5分、さくら通りに面した日本料理店『御料理 一燈』の大将です。2021年にはミシュランガイドブックで二つ星店に掲載され、全国各地の食通たちが季節ごとに福井の味を求め訪れます。

日本料理人/御料理 一燈/倉橋宏紀(福井県越前市)
福井県越前市出身。16歳で食の道を志し、日本料理の研鑽を数店舗で積んだ後、2007年鯖江市に『ときの蔵』をオープン。2012年には二店舗目となる『御料理 一燈』を開業し、2019年に現在の地に移転した。
https://www.instagram.com/norihiro_kurahash/

プロフィール

1.北陸の味を堪能できる「越味」を表現

実家がお酒を飲む家だったので、小さい頃から簡単な酒の肴を作っていました。高校に入り、アルバイトとして飲食店で働くうちに料理にハマり、高校卒業後、上京して本格的に修業の道へ。福井に戻ってからもいろんなお店で研鑽を積みました。30歳になるまでに自分のお店を持ちたいと思っていたので、修業の区切りとなった27歳のタイミングで独立。一店舗目の『ときの蔵』を鯖江市で、5年後にはニ店舗目の『御料理 一燈』を開業しました。

ちょうどその頃からでしょうか。全国的に「地産地消」という言葉が広まりだしたように思います。魚介や野菜はもちろん、伝統食材など、地域に根付いた食材で地域独自の料理をお出ししようと、さらに地元の食材に興味を持つようになりました。

例えば、春は越前町宮﨑地区の筍やサクラマス。夏は池田町の鮎や若狭町の甘鯛。秋になれば大野・勝山の天然キノコ、冬には越前がに…と福井県内だけでも素晴らしい食材があります。これが石川・富山と北陸に広がれば表現できる世界が無限に広がるはず。そこで『御料理 一燈』では、富山・石川・福井の食材を使って、北陸の味を満喫できる「越味(えつみ)」をテーマにコース料理を提供しています。

『御料理 一燈』


2.ある食材を使うのではなく、ほしい食材を獲りに行く

食材の開拓は基本、自分で情報を仕入れて生産者のもとを訪れます。僕は食べ歩きも好きなので、気になった食材があればお店の方に教えてもらうこともありますね。特に和食に不可欠である米は、越前町宮崎地区で栽培されている完全無農薬のコシヒカリ『田んぼの天使』を使わせてもらっているのですが、使うだけで無く若い衆を連れて田植えや稲刈りに参加させてもらい、生産者の方と一緒に苦労を共有することも大切にしています。

宮崎村の農家、井上さんの田んぼで田植えの手伝いをする倉橋さん

生産者、料理人の壁を超えて情報交換も大切にしていますね。例えば、10年ほど前の福井では一般的に流通されている野菜しか栽培されていませんでしたが、例えば「都市部のイタリアンはマイクロサイズの野菜が使われている」など、料理のジャンル問わず今のトレンドをお伝えすることで、料理人が求めているサイズの野菜もかなり出回るようになり、種類も豊富になりました。

また、福井ではよく鯛が水揚げされますが、瀬戸内海で捕れたものに比べると、身質や風味はかないません。地元の漁師とともに調べると、瀬戸内海の鯛は強い海流のなかでエビを食べて育つそうで、福井の鯛にはない旨みと脂のりにつながることが分かりました。それ以来、漁師にはいつもの漁場ではなく、瀬戸内と近い環境である沖合いでの漁をリクエストしています。

福井の食材は全国でもトップクラスだと自信を持って言えます。でも、ある食材を使うのではなく、自分が求める食材を生産者とともに探究しながら、まだまだ上を目指していきたいですね。

小浜で獲れた希少な赤ウニの水無月豆腐


3.海だけじゃない福井県。開業するなら山が狙い目

福井県は海というイメージがありますが、実は山にも囲まれています。どちらの食材も30分圏内で手に入る場所は全国探しても珍しいのでないでしょうか。そのような意味でも、福井で飲食店を開業するチャンスは、他県よりまだまだ転がっているなと感じます。特に福井は魚介に力を入れている飲食店が多いので、個人的には“山の食材”も気になりますね。

開業後も、人気と言われる店から頭一つ抜き出るには、修業して独立するのがゴールではなく、勉強し続けることが大事だと感じています。例えば、お隣の石川県金沢市にある『レスピラシオン』は僕もすごい!と思う店の一つ。チームワークが良く、常に探究心を持って新しい挑戦を続けています。福井でも「あの食材について教えてください!」と貪欲に吸収しようとする人が増えてほしいですね。僕でよければいつでも相談に乗りますよ。

北陸新幹線の福井・敦賀開業、そして中部縦貫道の開通はかなり注目しています。全国からお客様が来られるなかで、求められるのは “わざわざ福井に食べに行く価値のあるもの”。「この街といえばあのお店」とすぐに名前が出るような圧倒的な店が増えたら、福井の飲食も大きく変わるはずです。ともに切磋琢磨し、福井の飲食シーンを盛り上げていきましょう!(取材日:2022年5月/石原藍)


つなぐ人ーアーカイブ
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福井県交流文化部定住交流課/三津谷勇気さん
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