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映画『落下の解剖学』ラストネタバレあり 「個人」の自己実現よりも「家族」のことが「不均衡」に優先される 

落下の解剖学(2023年製作の映画) Anatomie d'une chute/Anatomy of a Fall
上映日:2024年02月23日
製作国:フランス
上映時間:152分
監督 ジュスティーヌ・トリエ
脚本 ジュスティーヌ・トリエ アルチュール・アラリ
出演者 ザンドラ・ヒュラー   スワン・アルロー


素人臭いカメラワーク(わざとらしいアップや急なパン)は普通とても苦手なんですけど



この映画の場合は
その不気味さがとても良いですね。


「無罪なの〜?有罪なの〜?」と野次馬的に観てる自分(観客)の視線が不気味だぞと言われているよう。


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物語の流れを作るためとはいえ、
あとからあとから新事実が出てくるのも普通ならすごく嫌なんですけど
この映画の場合は
それ自体が真実の揺らぎを表現しているのでとても良い。


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性差別も表現されているのかなぁ。




これは日本だからそう感じるだけかなぁ。
フランスやドイツではもうクリアされているのだろうか。


「個人」の自己実現よりも「家族」のことが「不均衡」に優先される、
という状況は
性別関係なくキツい。
というのがこの映画の基本設定ですね。


「(個の願望を捨てて)家族を支えるのは幸せなことなんだよ」という思想が充満している世界では、この映画は成り立たない。
夫の気持ちが全くわかんなくなるからね。


また、昔の世界、
つまりは「女性は家族のために滅私奉公して当然」という思想の世界で
さらにこの映画が〝男女逆転〟していたならば
「働いている夫に逆ギレするワガママな妻」になっていたことでしょう。


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ネタバレになるから何も書けない。。


ネタバレは以下に。








母は裁判で無罪になるけど、、

「あ〜無罪だったんだぁ!」と100パー納得できた観客は少ないでしょう。

ほんとに無罪だとは思い切れない。

終盤で息子が突如、

車中での父の長台詞を思い出してスルスルと法廷で喋ったのも不審。

自分が信じたい真実を息子は作り出したのかもしれない感がある。

だが、僕は母が父を殺すほどまでの捻れた気持ちがあったとも思えない。

だって離婚すりゃいいんだもん。

殺すなんて一番めんどくさいじゃん。

咄嗟の暴力で(ほぼ事故的に)突き落として殺しちゃうくらいに 激高するような人物にも思えないし 頭を何かで殴ってから突き落とすって結構な手間だしちょっと無理がある。

ってことは、

この映画の設定として「無罪か有罪かどっちかわかんないし、

おそらくそもそも決まっていない」んでしょうね。

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