映画『オールド・ジョイ』「悲しみは昔味わった喜び」の意味
『ファースト・カウ』が素晴らしかったので同監督の2006年の『オールド・ジョイ』。
製作にケイト・ブランシェット主演『キャロル』の監督をしたトッド・ヘインズもいますね。
**
だいぶ低予算感の強いロードムービー。
登場人物はほぼ2人。
2人とも30代半ば?
数年ぶりに会う旧友のマークとカート。
一泊二日の車での温泉旅行に出る。
マークの妻は妊娠中。
マークは妻に「旧友から旅行にさそわれた。君が嫌なら行かない。嫌なら行って全然行かないから」と言う。
↑これめちゃ腹立ちますよね。。
「君が嫌なら行かない」って。。
嫌だから行くなって言えるわけないじゃんね。
そもそも行こうとしてる段階でちょっと腹立ってるわけだし
「嫌だって言われたから行かなかった」という事実が生まれることが死ぬほどイヤ。
だから勝手に行けよ、と。
マークが大人になろうと頑張ってる姿だとは思うけど、まぁまだまだだよね。
**
タイトルは「old joy」。
劇中に「悲しみは昔味わった喜び」という謎の言葉がある。
「昔味わった喜び」ってなんじゃいと思って調べてみたら
日本語にも旧歓という言葉が。
きゅう‐かん〔キウクワン〕
昔味わったよろこび。
とのこと。
そこはかとない寂しさは感じますね。
昔はあったけど今はない、というニュアンスを感じる。
**
で、この映画。
昔仲良かった男子2人が数年振りに会ったら
片方は社会に適応しようとしてる段階で
片方はまだまだ社会からはみ出た生き方に憧れてて
2人の間には深い溝ができていた…という話。
まだ感想書けていない空音監督の映画『HAPPYEND』が似ている構図(真逆とも言える)だと思いました。
社会に反抗していたこたで繋がっていた2人が離れていくのがこの映画。
片方が政治的な活動にのめり込むことで2人に溝ができるのが『HAPPYEND』ですかね。
**
ラストネタバレは以下に。
念願の温泉にたどり着いたけれどもはや会話のないふたり。
なんにも話すことがない。
そこでカートが動く。
2人とも温泉に入った状態でカートがマークの肩を揉む。
ギョッとするマーク。
しかし身を委ねる。
言葉ではなく イデオロギーでもなく
ただ友愛の気持ちを持っている人間同士の労わり。
そして車に乗って帰路。
家に着き、別れ。
おわり