父が監督&主演、息子が劇伴作曲映画『地獄の波止場』(1956)
小杉勇の監督&主演作。
ブラッドリー・クーパーか!っていうくらいに美味しい役を
美味しそうに
自分の監督作でやり尽くすっ!
ブラッドリー・クーパーと違うのは抑えた演技に徹してるとこですね。
さすが1930年代あたりには当代切っての名優言われた小杉勇。
助演の三橋達也もちゃんと映えるようにしてるとこも監督として好感が持てる。
コメディパートの北林谷栄の面白さったらない。
一体どうなるんだっ!という緊迫感の中で北林谷栄の自由さがたまらなく面白い。
北林谷栄この時45歳。
小杉勇は52歳。
北林谷栄の方が年上に見えた。。
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小杉勇が監督として優れているのがよくわかる。
冒頭でササっと人物相関図を描いて、しかも全員に好感を持たせられる。
で、ある事件が起きて小杉勇(父)が大金の入ったカバンを盗んでしまう。
そういうことしてしまいそうな感じも小杉勇には確かにある。。
それから娘の結婚話が危うくなったり、
娘婿が金を盗んだ犯人と疑われたり、
そして真犯人がなぜか犬を抱えながら小杉勇を追跡したり、と
出口ナシ!の状態。。
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小説が原作なので?やはり話自体が面白い。
あの居酒屋(兼売春宿?)の女性店員は、
物語自体には絡んでこないんだけど、
つまりは自分の娘も下手したらこんなふうに社会の末端で酔っ払いオヤジにすがりながら(時には体を売りながら)生きることになるかもっ!
ということの示唆なわけですね
じわじわと全員が不幸になってって追い詰められていくのが怖かったです。
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あとは鉄工場の迫力ですね。
全員やけどしてますよね。。
めちゃ熱いでしょ、あれ。。
ラストバトルの鉄筋地獄はかっこよかった。
ただ、ちょっと長かったかな。。
眠くなりました。。
位置関係がよくわかんないし、
犯人からの銃撃も当たったり当たんなかったりが説得力なさすぎて。。
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所々のコメディ感が良かったです。
北林谷栄パートとか
押入れに隠してあるカバン見つかりそう!とか
犯人が抱えてる犬の可愛さとかね。
やっぱ犬抱えてるとそんなに悪い人には見えなくなるよね。
繋いでるわけでもなく、犬も逃げずにそばにいるわけだから良い人なのかな?って思っちゃう。
良い人なのかな?って思わせることはサスペンス性で言えばイマイチなんですけど、
やっぱ犬抱えてた方が断然面白い。
人間味が増すからかな。
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今回は、
京橋の国立映画アーカイブの「日本映画と音楽 1950年代から1960年代の作曲家たち」の企画展での上映でした。
300席くらいあって250席くらい埋まっていたのでは。
まさか『地獄の波止場』でこんなに人が集まるとは。。
今は観れる機会ないですからね。
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てことで、作曲家が大事なわけです。
なんと今作の作曲家である小杉太一郎は
小杉勇の息子。
小杉太一郎は、『ゴジラ』の伊福部昭に師事していただけあって?確かに怪獣出てきそうな
迫力ある音楽で、
鉄工場自体が怪獣かのような存在感を感じられるものでした。