日本スゴイ映画じゃなくてよかった 映画『黒部の太陽』ネタバレあり
黒部の太陽 1968年2月17日公開196分
はじめて石原裕次郎の映画見たかも。
写真ではかっこよさがわかんなかったけど、カッコイイ。。。
丸顔だけど整ってて、とにかく足が長いっ!
野生性もあるけど現代っぽさもあって。
(このときはまだ30代だし)
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無謀なダム工事が戦争と重ねられてるんですね。
戦争の記憶がまだまだギンギンに残る1950年代。
経済成長に伴う電力需要のために黒部にダムを建設することに。
人が行くこと自体が困難で命がけだったその秘境の地でのダム建設計画は、人命の軽視などの批判もあった。
工期中の作業員はのべ1,000万人。
事故死者数は171人、
宿舎の雪崩などでの死者は87人。
「もし地獄というのがあるのなら、ここの工事が地獄でした」
「黒部ではケガはない。ミスしたら死ぬしかない。」
「犠牲者が出ることがわかって工事するんですか。日本のためですか。電力のためですか?」
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「わしはな、黒部の土手っ腹の中でダイナマイトでぶっ飛ばされて死ぬ男になりてぇんだ」
「親父は、他人の血、他人の命なんてトンネルが通ればどうでもいいって男だ。
腹の中じゃ虫ケラ一匹死んだくらいにしか思ってない。」
「時代が欲求してるんだ。日本の電力需要のため…」
「戦争で懲りてないのか。ズルズルズルズル引き込まれて気がついたら仲間がたくさん死んでいた。」
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崖から落ちて死ぬシーンが何回かありますが、当然全部人形。
「あ〜人形が落ちているなぁ」と思っちゃうんだけど
これが映画的な意味としても悪くない。
人の命がまるで人形のように軽い、というのが残酷に伝わってくる。
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映画の中盤あたりでトンネルの落盤事故から大洪水が起きるんですが、、
大スペクタル過ぎて心配。。
それこそ命が人形のように軽く見える大岩と洪水。。
しかもこのシーンは人形じゃないですからね。。
三船敏郎とか石原裕次郎とかが岩と木材と共に洪水に流される恐怖シーン。。
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中盤ではトンネル掘削で起きた数々の事故を、ナレーションだけではなくいちいち大スペクタルのディザスター映像で見せてくれる。
そしてついに死者が出る事故では、
劇伴もなくなくセリフもなく(実際は喋っているようだけど声が消されてる)ただ水が岩にぶつかる轟音だけ。
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「人間に金と知恵と金さえあればなんでもできるだと?
人間のすることに不可能ってことはまだ山ほどあるんだ。」
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熊谷組の崩壊がとくに面白い。
社長とその息子(石原裕次郎)の対立が映画のポイントだけど、
社長と息子が対立してるなんて社員にとってこれほど迷惑なことはない。
石原裕次郎を単なるヒーローとして描いてないとこもいい。
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ラストネタバレは以下に
ラスト。
破砕帯を通過し掘り続け、 反対側から掘っていた穴とめでたく繋がりトンネル開通! トンネル内では祭りが開催され、200人くらいの男たちが大騒ぎ。 押し潰されてる人いそうで怖い。
日本酒の樽が何個も運ばれて、最初は杓子を回して飲んでたけどめんどくせーってことで ヘルメットで酒を酌んで飲み回す。
今まで散々死人を出した無謀な計画のことなんて忘れて 成功したら全部忘れてイエ〜イッ!おめでとう!良かったよね! ってなんとも日本らしいラスト。。。嫌だ嫌だ。。
と思っていたら 三船敏郎のもとに娘の死を知らせる電報が届く。
石原裕次郎の父は、老いてちょっとボケてしまったようで 自分のせいで長男を殺してしまった事故のシーンを脳内リプレイする。 そのまま死亡。ずっとトンネルに取り憑かれた狂気の父だったが、長男を死なせてしまったことにずっと苦しんでいたんですね。
命を賭した作業員たちを称えつつも、やはり無謀な計画とエネルギー問題を映像のコラージュで表現。 劇伴も陰鬱。
(流石にエンディング曲はめでたい感じのオーケストレーションでしたけど、まぁこれは3時間映画を観てきた観客席たちへの感謝の気持ち、かな。)
人の命の重さをきちんと描くことに注力した良い映画でございました。