売春禁止法が大議論になっている時代のリアリティ 映画『赤線地帯』
子供のミルク一つ買えないで、何が文化国家よ!
行政整理でクビになった夫に代わって赤線で働く妻。
赤ちゃんを育てている。
「坊やがこんなに可愛くなったんじゃ、親子心中もできなくなるわね。
ママって言うんだもの。
子供のミルク一つ買えないで、何が文化国家よ!」
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赤線廃止まで
1946年に日本の公娼制度(貸座敷・娼妓)をGHQが、女性を前借金で拘束する人身売買だとして禁止した。
そのことにより逆に街娼が増えたし、
ほぼ公認の売春地域の赤線地帯も各地で生まれた。
警察が地図に赤い線で囲っていたことが名前の由来。
なんで線なんだろうと不思議だったけど。あと青線(もぐりの集団売春地帯)、白線(白人米兵相手の売春街)、黒線(黒人兵士専用の地域)ってのもあったんですね。
1956年に売春禁止法が制定され、
1958年から適用され、赤線は廃止へ。
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この映画は1956年公開。
売春禁止法が大議論になっている最中の時代のリアリティがこの映画の大きな魅力。
売春を容認しない社会風潮が高まるが、
男女雇用機会均等法が施行されるのは1972年。
女性が就ける仕事が少なかった時代に、売春さえ禁止されたらどうやって生きていくのか。
結局男を頼るしかないじゃないか。
強烈なリアリティは現在でも通じる性差別を描いている。
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多様なキャラクター
息子を育てるために出稼ぎで赤線で働き、故郷では「都会で売春をやってる母」と噂され息子に拒絶される母。
夫が行政処理に遭い仕事を失い赤ちゃんのミルク代を稼ぐために赤線で働く母。
結婚相手を見つけて嫁ぐも無料の労働者としてしか認識されておらず一日中家業で働かされ夜も夫の尽くさねばらない女性。
赤線で活躍し男を騙し商売で成功する女性。
「赤線は法では救ってくれない女性たちを助ける社会事業なのだ」と主張する赤線の主人。
多様なキャラクターがそれぞれの立場で「売春と女性解放」というテーマにぶつかっていく。
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古さをあまり感じなかった
若尾文子が現代でも通じるめちゃカワ美人なのもあるけど、
全体的に古さをあまり感じなかったです。
ポンポンと展開していくし、
キャラの描き込みもくどくないし
古臭い演出もない。
さすが溝口健二監督、ということなのでしょうか。
(恥ずかしながら溝口健二作観たことなくて。。)
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友近とゆりあん
女性キャラが突然謎の小唄(?)を歌い始めるシーンがちょこちょこあるんですが、、
友近とゆりあんが嬉々としてこのシーンのモノマネをしてるのを思い出して笑っちゃった。。
哀しき名シーンなはずなのに。。