神級俳優の演技対決 映画『グッドライアー 偽りのゲーム』ネタバレあり
神々の遊び
ヘレン・ミレンとイアン・マッケランの演技対決がマジで素晴らしい。
やっぱこの2人は別格よ。
別っっっっっっっっっっっっっ格。
もう神の領域の2人が、
どういうわけだか下界の人間どもにエンターテインメントを観せてくれている。
この2人をキャスティングできた時点でこの映画は神話ですよ。
**
監督は
ディズニーの実写版の『美女と野獣』、
『グレイテスト・シャーマン』の
ビル・コンドン。
『グレイテスト・ショーマン』は無視するとして、
『美女と野獣』の現代化に成功できた手腕はさすが。
今作でもその手腕がいかんなく発揮されてると言って良いのでは。
面白かったですよ。
**
原作の限界?
原作読んでないから知らんけど
たぶんこれ以上面白くなりようがない話しだと思う。
冒頭の、
「老人同士が出会い系!???」
みたいなスタートがどうしても下世話。。
この映画、結果、深くて重いので、、
この設定は陳腐に思えてしまう。。。
でも、
これはこの映画の大事な個性なので、
致し方ない。。
だし、
やっぱ。。
あ、ネタバレなしには書けない。。
ネタバレは以下に。
すべてはヘレン・ミレンが演じた女性(ベティ)が彼女が幼い頃にイアン・マッケランにレイプされたこと、父が密告されて逮捕され母が自殺して一家離散したこと、への復讐として行われたこと。
彼女の両親も「どうやら我々の娘は家庭教師からレイプ的なことをされたらしい」と気付いてたけど、それを明るみにしようとしなかった。
娘が傷モノになった(された)ことが恥だと思っている。
これが世間様にばれたら娘は結婚できないだろうと思っている。
「男を誘惑する悪女だ」と言われるかもしれない。
もしかしたら両親自体そう思ってるかも。
レイプ被害者が声をあげられない、あげても被害者が悪者扱いされる、
ってのは現代のほとんどどの国でもそうですね。
「幼い頃に受けたレイプは本人の記憶にも残ってないだろうし、その後恋人もできて結婚もして孫も何人もいてっていう生活をしたら、レイプのことなんてすっかり忘れてるでしょうよ」
ってのも間違いだとこの映画は教えてくれる。
ずっと引きずって、どんなに現状幸せでも心に暗い闇を落とし続ける問題だと告発している。
そして、加害者は罰を受けないどころか、どういうわけだか擁護される(男ってそういうもんだ、とか、女に嵌められたんだろ、とか)。
****
あとは2人ともドイツ人で
しかも高齢者ってことは第二次大戦時の敗戦を経験している。
当時この2人はまだ10代だった。
ナチスドイツの国民とは言え、まだ10代。
物心ついた時にはナチスがいた世界で成長した彼らには「他に正しい道がある」という知識がない。
長期政権の悪いとこ。
政治とはこういうモノだと思っちゃう。若い世代が現政権を支持する理由がここにある。歴史も世界も知らないから。
特に当時はネットで独自に歴史や世界のことを調べることはできないから、ただただ自分の周囲で起こっている事に飲み込まれるしかない。時に子供は。
10代だった彼らも被害者なんだけど、彼らにも多くのものが背負わされた。
第二次大戦のドイツ人ってほとんど悪者として描かれるけど、こうして彼らの物語を描いてくれるのはとても貴重ですね。
****
なので、本当にこの映画は意義深いと思います。
でも、、フォーマットが「老人同士が出会い系!?」っていう感じなので、、なんかね、軽いんですよね。。
ま、これがこの映画の個性なんですけどね。
****
ヘレン・ミレンが裏で操ってるんだろうなってのは誰でもわかるので、もっと早くヘレン・ミレンの二重性を匂わせた複雑な演技を見たい。
結局ずっと孫の彼氏と演劇やってたことになっちゃうので、、
そんなリアリティのないことでミステリーを維持させるよりは
ヘレン・ミレンが怪しいとハッキリさせた上で
2人の演技合戦を見せた方が得だったかなぁ。。
2人の演技がすごいからもうすでに演技が合戦したことになってるけど、
ヘレン・ミレンはただ演劇やってただけなので
イアン・マッケランと直で戦っていたわけではない。
原作小説の仕組みを守るならば
もっと伏線貼りまくって
ラストで「実はあの時ああでした!」みたいな紹介をしてくれないと。。
「実はあの時こっそり聞いてました」とか
「実はあの時作戦がこんがらがってました。でも立て直しました」とか
もなかったからね。
「昔住んでた家に行ってた」ってのだけだったよ。
しかも、どういうわけだか誰もヘレン・ミレンを見張ってなくて
老女が床を剥がして、偶然、若きイワン・マッケランの毛髪を採取できました!
っていう荒唐無稽な状況だったし。。
2人の名優の演技合戦が凄すぎて、、勿体無さの方が気になってしまいましたね。。
ま、全然面白いんですけどね。。