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おいしいものを、すこしだけ 第2話

二度目に亜紀さんが倒れたときは、私もその場にいた。一緒に歩いていたら道の真ん中で亜紀さんがふらふらとしゃがみこんだのだ。この時は意識があって救急車を呼ばなくていいと言うので、タクシーで前回と同じ病院に行った。私は待合室の椅子に腰掛けて、世の中にまったく迷惑をかけない人というのはいないものだ、と痛感していた。
「清水さん」
 病院の人に呼びかけられて、一瞬誰のことだろうと考えてから、亜紀さんの苗字だということに気づいた。そういえば最初のころはそう呼んでいた記憶がある。亜紀さんが苗字を呼ばれるのを嫌がったので名前で呼び合うことにして以来すっかり忘れていた。「妹」の私も当然清水だと思われたらしい。もし身分証を見せろと言われたら、清水亜紀と萩原日向子という姉妹をどう説明すればいいだろう。亜紀さんに離婚歴があることにするか。あるいは両親が離婚して別々に引き取られたのか。万一このまま入院や手術ということになったら、たしか家族の同意書か何かが必要ではなかったか。亜紀さんはなぜか実家に連絡が行く事態を恐れているようだった。前回私を妹だとか無茶なことを言い出したのも、患者本人が妹だと主張する人物が目の前にいる以上、何かあっても病院が実家に連絡することはないと踏んだからだと思う。けれど意識不明になったらいくらなんでも私が代理を務めるわけにはいかなくなる。
 いろいろなことが頭を巡ったわりにすべて無用な心配で、亜紀さんは前回同様点滴と説教と栄養剤の処方を受けて帰されただけだった。今回は間違ったダイエットの弊害に関するプリントももらった。医者はダイエットのせいだと思いこんでいるらしい。給料が安くて食費を削っていたらこうなりました、とは亜紀さんとしてもみっともなくて言いたくないだろうから、ダイエットのほうがまだしも体裁がいい。病院は病気を治すところで患者の給料を上げてくれるところではないので、ここで忠告を受けても意味はなさそうだ。

 亜紀さんはもともと長身でほっそりしていて、余分な肉というものがまったくついていなかった。聞くと百七十センチあるという。私より十五センチも高い。
「いいなあモデルみたいで。うらやましい」
 背の高い人に対するお決まりの社交辞令でそう言うと、亜紀さんは真面目な顔で首を振った。
「身長が十五センチ違えば栄養所要量が三百五十キロカロリーは違うでしょう。お米に換算すると一日約百グラム、一か月で千円近い差になるわけで、ちょっとしたコストですよ」
 数字がすらすらと出てきたのにも驚いたけれど、今まで背の高い人の悩みと言えば「男性に敬遠される」「服のサイズがない」「可憐に見えなくて損」といったことだと思っていたのでこういう考え方があるとは知らなかった。

 もともと痩せているから気がつかなかったけれど、あらためて見ると、亜紀さんは最初のころと比べても痩せすぎだ。頬骨や顎のまわりがナイフで削いだようになっている。うらやましいというレベルではない。
「ちゃんと食べなきゃだめじゃないですか。毎日栄養計算してたでしょう」
「あれは怖いもの見たさというか、足りていないことがわかっていてもつい見てしまうんです」
 自分が栄養失調状態であることを確認していただけらしい。
 部屋に帰ってくると、亜紀さんはソファに座りこんだ。普段は背中に鉄板でも入っているのかというほど姿勢の良い人なのに、ぐにゃりと体を曲げてクッションにもたれている。
 その姿を見ていると不安になった。この調子ではいずれ入院するはめになるのではないか。そうでなくともこのまま放っておいて餓死したら、いくら家族でないとはいっても私が保護責任者遺棄致死とか、そういったものに問われるんじゃないだろうか。
 それにしてもどういう食生活を送ればこうなるのかがわからない。いくら給料が安いといっても、私はほぼ同程度の収入で普通に暮らしている。これだけ質素に暮らしていて食費がやりくりできないはずがない。
「毎日何を食べてきたか教えてください。昨日は何を食べましたか」
 亜紀さんは言いたくなさそうではあったけれど、二度も迷惑をかけられた以上、追及しないわけにはいかない。
「朝はヨーグルト一個、昼は職場の人が鎌倉のお土産でくれたサブレ一枚で、夜は玄米とカブの葉っぱと味噌です」
「修行僧じゃないんですよ」
「毎日そうだというわけではないです。もうすこし食べる日もあります。今日はカブの根っこの部分を食べる予定でした」
「朝と昼はもっと食べないんですか」
「朝食べると昼によけいお腹がすくので、それなら最初から食べないほうが早手回しだと思って抜いたところ、食べなければ食べないで平気だということがわかったんですね。そのうちに胃が縮んだのかあまり食べたくもなくなりました。人間がどれほど少ない食べ物で生きられるか、驚くべきものですよ」
「生きられてないです。死にますよそのうち」
 パソコンを開いて簡易栄養計算サイトで亜紀さんの食べたものを入力していった。予想どおりまったく栄養が足りない。カロリーなんか所要量の半分も摂っていない。限りなく菜食主義に近いので鉄分不足と表示される。貧血はこのせいだ。栄養指導室でこの実情を正直に説明していたら、栄養士さんは卒倒していたかもしれない。
「卵と大豆製品と乳製品を摂っていれば死ぬことはないです。月に一度は肉と魚も食べて、米は玄米にして、野菜も食べていますし」
 昔国語の教科書に載っていた『雨ニモマケズ』の一節が頭に浮かんだ。「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ」。当時玄米四合は食べ過ぎだと思ったものだけれど、それくらい食べないと体が持たないかもしれない。亜紀さんは一日半合くらいしか食べていない。
「理論上は問題のない範囲なんですけどねえ」
「理論と実践は違います。現実に倒れてるじゃないですか」
「そこが不思議です」
「前にはときどきごちそうをつくってくれましたよね」
「さすがにこういう生活はストレスがたまるので、月に一回くらいちゃんとしたものをつくりたくなったんですね」
 私が食べた牛肉や穴子は、亜紀さんにとって月に一度の肉や魚だったことになる。知らなかったとはいえ申しわけなさでいっぱいになり、そう言って謝ると亜紀さんは首を振った。
「私はもうそんなに食べられないので、日向子さんが食べてくれて助かりました。誰かがおいしそうに食べてくれるほうがストレス解消になります。最近はそういう気力もないですが」
「そもそも、そこまでして節約する必要があるんですか」
「収入を全額食べてしまうわけにはいきません。ここの更新料やいざというときの引っ越し費用も考えないといけませんし。私は半年ごとの契約更新で働いていますが、五年勤めたところで契約打ち切りの通知が来ました。結局私の希望で継続雇用になっていますが、将来も継続できる保証はまったくないと言い渡されています。もし職を失ったら、二、三十万の貯金がないためにホームレスになるのはよくあることです」
 私は毎月の仕送りとバイト料をほとんど全部使い切ってしまっている。貯金は就職してボーナスなんかがもらえるようになってからすればいいと思っていた。
「本当は私のような者がおいしいものを食べたいと思ったりしてはいけないのですが、食べる量を減らせば金額は同じなので、たとえばパン屋さんのパンがスーパーの倍するなら、六枚切りを十二枚切りにすれば一食当たりの値段は同じです。発泡酒を五回飲むお金で一回トラピストビールが飲めます。お肉も月百グラムまでにすれば国産の牛肉だって食べられますし、そもそも野菜にすれば二百円で上等な大根が丸ごと一本買えますし」
 そういえば亜紀さんとスーパーで一緒に買い物したとき、安い食材を買わない印象はあった。原材料の表示を見て悩んでいたりするので「こっちのほうが安いですよ」と指さすと、困ったような顔で「それはちょっと」と言っていた。
「結局毎月の食費っていくらなんですか」
「八千円くらいでしょうか」
栄養失調の謎が解けた。食材の質を落とす代わりに量を減らすことで対応していたら、そのうち倒れるに決まっている。
「それに時間当たりの稼ぎが悪いと、現金の価値が異常に高く思えるんですね。同世代の人が一か月で稼ぐ金額を私は二か月働かないと稼げないので、食べ物ひとつ買うにもそれが何十分かの労働に相当すると思うと、苦労して稼いだお金でおいしくないものを買うのも悲しく思えて」
 クッションにもたれてぼそぼそとしゃべる亜紀さんを見ていると、こっちまで悲しくなってきた。
「でもそれで倒れていたらどうにもならないし、すこしは妥協というのも必要では」
「そのとおりだとは思いますが……。私の舌とお腹が要求するものを私の財布は賄いきれないし、食費を増やそうと思ったらもっと稼がなければいけないし、考え出すと何が正しい食べ物なのかわからなくなってきて、いっそ食べないほうが楽だと思ったんですね」
「その話、病院でしゃべったらどう思われたでしょうね」
「だから黙っていたんです。心療内科に回されかねません」
 亜紀さんはすこし体を起こした。
「私は子どものころからお腹が弱かったので、母が心配して市販の加工品を食べさせなかったんですね。ホワイトシチューは小麦粉とバターを炒めて牛乳で練って作るものと思っていたので、大きくなってシチューの素というのがあるのを知ってびっくりしたくらいです。今でも安いパンとか揚げ物とか、ファーストフードのたぐいを食べるとてきめんにお腹を壊します。油が合わないのだと思います。母としては娘が将来こんなことになるなんて思わないので、自分が食べさせて育てたようなものを大人になっても食べられるものだと思っていたでしょうね。どのみち母が亡くなった今となっては、私が何を食べようと気にする人もないわけですが」
「お母さんは亡くなったんですか」
「二年前です。突然倒れて救急車で運ばれて、搬送先の病院で服を開いてみたら」
 亜紀さんは胸に手を当てた。
「ここのところに、大きなカニみたいな形がくっきり盛り上がっていたそうです」
「カニ?」
「癌のことを英語でキャンサーと言うでしょう。病巣がカニに似ていることが語源になっているらしいです。末期の乳癌でした。そこまで進行するともう手の施しようがないので、半月後に亡くなりました」
「それは……」
 亜紀さんが淡々としゃべっているだけに、どう返していいかわからない。一年以上一緒に住んでいて、スベスベマンジュウガ二だのそばがきの極意だのの話ばかりで、個人的な話を聞いたのは初めてだった。
「どうしてそんなになるまで放っておいたのかわかりません。自覚症状がなかったはずがないです。病院で体をいじられるのが嫌だったのかもしれないし、現実を直視するのが怖かったのかもしれないし、あるいはそうまでして生き延びたくないと思ったのかもしれません」
 その血が亜紀さんにも流れているわけだ。
「父は自分の妻が末期癌で死にかけていることにまったく気づいていなかったそうです。もともと母が熱を出して寝こんでも自分のぶんだけコンビニ弁当を買って食べているような人でしたしね。もちろん私が同居していても気づかなかったかもしれないし、早期発見すれば助かるというものではなかったかもしれないし、わからないです」
「とすると今ご実家には」
「父が一人で住んでいます。私には兄もいますが、ずっと前に結婚して独立しているので」
 私の知る限り、亜紀さんはお盆や年末年始にも一度も帰省したことがない。そのあたりの事情はなんとなく察しがついた。
「亜紀さんは、つきあってる人とかいないんですか。結婚すればここまで生活を切り詰めなくて済むんじゃ」
 こういう考え方は自分でもあまり好きではないけれど、私の頭で今思いつく解決策といえば、それくらいしかなさそうに思う。亜紀さんは地味ではあったけれど、すらりとして目元の涼しい、まあまあ美人と言えなくもない人なので、もうすこし栄養状態を良くしてワンピースのひとつも買って綺麗に化粧していれば、お金持ちの男性の一人くらい捕まえられそうだ。
 亜紀さんはクッションに顔を埋めたまま答えた。
「私は男のひとは好きではないのです。女のひとが好きなので」
 それが意味するところを理解したとき、この人が私と同居しているのはもしかしてそっちの目的で、という考えが一瞬頭をよぎったことは否定できない。亜紀さんは私の考えを見透かしたように顔を上げ、ふっと冷たい表情になった。
「もし私のことが気持ち悪いと思うなら、ルームシェアを解消してもいいですよ。私の代わりにここに住む人を探してもいいですし」
「そんなこと思ってません」
 慌てて言った。これはいわゆるカミングアウトというやつではないだろうか。大学の授業で習ったLGBTとかセクシャルマイノリティとかいう単語が頭をぐるぐる回った。私が何か不適切な対応をしていないかと考えると何から何まで不適切な気もするし、どうしていいかわからない。とりあえず話の軌道を戻すことにした。
「じゃあ彼女とかがいるんですか」
 この際、お金持ちの女性でもかまわないだろう。
「前は、いましたけれど」
 その表情を見て聞いてはいけなかったかもしれないと思ったけれど、驚いたことに亜紀さんは言葉を続けた。
「その人は、同業者だったんですよ。図書館員の研修会で知り合いました。私と同じように非正規で働いている人で、本当に図書館が好きで。こんなに心の通じ合う人に初めて会ったと思いました。知り合ったころは毎日何時間電話しても飽きませんでしたね。子どものころのこととか、本のこととか。それから一緒に住むようになって、四年間暮らしました。私のほうは、死ぬまで一緒にいたいと思っていました」
「どうして別れたんですか」
「彼女が、男性と結婚することになったんです。もう三十近くになってしまったし、このまま一緒にいてもお互い先がないので、いつまでもこうしているわけにはいかないと言われました」
「そんな」
「その時はひどい話だと思いましたけど、今はすこしあきらめがついたというか、彼女の選択は正しかったと思っています。私と一緒に将来貧困に陥ってくれとはとても言えないし、彼女に転職してくれとも言えないです。私たちは正規職員とまったく同じ業務をしているわけではないので、ある程度の格差があるのは仕方ないですけど、ただここまで大きな格差というのは社会的に正当化できるものではないので、そのうち待遇は改善されるでしょうし、二人で働けばなんとかなると私は思っていましたが、彼女はそうではなかったんですね。現実的でしっかりした人でしたから。普通のサラリーマンと結婚すれば、彼女も図書館の仕事を続けていけるでしょうし、どこかで幸せに暮らしてくれればそれでいいと」
 亜紀さんがルームシェアのサイトに投稿していた文章が頭にひらめいた。「前の同居人が結婚して退去したので」。
「立ち入ったことを聞くようですが、私の前にここに住んでいた人というのはもしかして」
 亜紀さんはしばらく黙ってから「そうです」と答えた。
「ただべつに日向子さんがその後釜だとかそういったことではなくて、純粋に家賃を折半してくれる人を探す必要に迫られたから募集しただけですし、女性に限定したのは防犯上の理由です」
「それはわかりますけど」
 さすがにそういう誤解をするほどではない。
「彼女は今どうしてるんですか」
「引っ越し先は聞いてないです。連絡先も消してしまいましたし。今も同じ図書館に勤めているなら、訪ねて行けばいるかもしれませんが、ストーカーみたいな真似はしたくないですし、今のこの状態では彼女に合わせる顔もないです」
 たしかに彼女が今の亜紀さんを見たら、満足な食事をしていないことが一目でわかってしまう。
 亜紀さんはまたクッションに顔を伏せた。
「結局こうなったのも自分が悪いので。正規職員の司書を募集する自治体は減る一方ですけど、それでもその難関を突破して採用される人はいるわけで、それができないおまえが悪いと言われれば一言もないです。私には手のかかる子どもがいるわけでもないし、バリバリ働いて男性並みに稼ぐ女性は今どき珍しくもないので、女性だということも言い訳にはならないです。彼女が離れていったのも単なる収入や将来への不安ではなくて、ほかにもいろいろ私に不満があったのだと思います」
 語尾が湿っぽくなったまま消えていき、気がつくと声を立てずに泣いている。いよいよどうしていいかわからなくなって時計を見ると、夜の八時を過ぎていた。
「とにかくもう遅いので、ごはんにしましょう。何かつくります」
 逃げるように台所に行って、鍋に水を入れて火にかけた。沸騰したところでかつおぶし一パックを放りこみ、とりあえずしばらく煮た。だしがらをすくったりするべきなのかもしれないが面倒なのでそのままにして、野菜室から亜紀さんが今日食べる予定のカブを見つけ出し、薄切りにしてこれも放りこんだ。さらに冷凍してあった玄米も解凍して放りこみ、醤油が切れていたので味噌を溶いて入れ、ついでに卵も落とした。五分後、至高の一品とはいいかねる適当な味噌おじやが完成した。

 亜紀さんはおじやを食べるとすこしは気を取り直したようで、赤い目をしてしょんぼりと言った。
「さっきはつい取り乱してすみません」
「お腹が空いていたからですよ」
「迷惑をかけたうえにごはんまでつくってもらって」
「亜紀さんの食材、勝手に使いましたから」
「どうぞ。日向子さんも食べてください」
 残りのおじやを食べながら無責任なことを言った。
「いっそのこと亜紀さんも男性と結婚してしまったらどうですか。男だって悪くないかもしれませんよ」
「食わず嫌いはしていません」
 男性経験がないわけではないという意味らしい。
「好き嫌いをせず何でも食べなさいという躾は受けましたけど、好き嫌いをせず誰とでも寝なさいという躾を受けなかったのは残念でしたね。どちらも不本意なものを体の中に入れたくないということでは同じことです」
「嫌な言い方をしますね」
「私はなぜか食材の好き嫌いはないんですよ。おいしいものは何でも好きです。兄は偏食で、ピーマンが嫌だとかお肉の脂身が嫌だとかいう子どもでしたけど、私のほうが子どものくせに可愛げがないと思われていました。低温殺菌の牛乳は飲めるけど給食のぬるくなった牛乳は飲めないとか、大人から嫌がられました」
 亜紀さんは食器を洗おうと立ちあがった。
「好きな仕事をして、好きな人と暮らして、好きなものを食べたいなんてやっぱり贅沢で、どれかをあきらめてうまく辻褄を合わせなかればいけなかったんですけど、その辻褄の合わせかたがよくわからなくて、結局こんなことになってしまいました。迷惑をかけてごめんなさい」

 子どものころのことを思い出した。近所に「オホホのおばさん」と呼ばれる人が住んでいた。と言っても私が勝手にそう呼んでいただけだ。どこぞの重役夫人だという話で、見るからに裕福そうだった。「オホホ」という笑い方をする人が実在することを初めて知った。母親のコーラスサークル仲間で、笑う時もつねに腹式発声なので、その響きわたりかたも尋常ではなかった。
「うちでは天ぷらはいたしませんのよオホホ。そういったものは外でいただきますの」
 外と言ってもそのへんの天丼屋ではなくて、銀座あたりの、白木のカウンターで和紙の上に揚げたてが出てくるようなところだと思う。
 その人は、昨日はコーラス今日はお茶席明日は観劇、といった調子でまったく労働しているようには見えず、いつも肌はつやつやしていた。
「この歳になりますと、何でもそうモリモリとはいただけませんから、本当においしいものをすこしだけ、ね。オホホ」


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