河川の水質調査!
こんにちは。福井県衛生環境研究センター広報委員会です。
今回は、衛犬ちゃん・環犬ちゃんが水質環境研究グループにお邪魔します。
採水です!水質環境研究グループのBOD怖い(ペンネーム)です。私たちのグループでは、定期的に県内の主要な河川を周って、採水と分析を行っています!
河川の健康状態の測り方
河川の水質調査は、簡単に言うと川の健康状態を測っているのですが、どのような方法で健康状態が分かると思いますか?
よく知られている方法に、BOD(生物化学的酸素要求量)と呼ばれる調査項目があります。これは汚れによる水の中の酸素の減りやすさの指標です。陸上の生き物と同じように魚などの水のなかの生き物も水中の酸素が必要です。汚れが多く、BODの値が高いと、その川は酸欠状態になりやすくて、魚が死んでしまうことがあります。また、悪臭が発生したり、へどろが溜まったりもします。
BODの測定方法は、採水した水を密閉容器に入れて、5日間で減る酸素の量を測定するものです。測定の様子を見てみましょう。
このような感じで、終始、ひとの「手」を使って分析を行うので、「手分析」と呼ばれたりします。BODは、水質汚濁防止法が施行された当時から、継続して測定されている項目なので、少し古臭く感じるかもしれません。実際、私も初めて測定を行ったときは、ビュレットや、摺りガラスでできた器具を使ったりして、学生実験みたいだなぁとすこし驚きました。
そうとも言えないですよ。それを説明する前に、少し河川の水質調査の歴史をお話ししますね。
水質調査は50年の歴史アリ
河川の水質調査は1970年頃、約50年前から行っています。その頃の日本は、高度経済成長期の末期で、多くの河川の水質がとても悪い状態でした。工場の排ガスが、経済発展のシンボルとして七色の煙と言われたりして、公害の被害よりも経済が優先される風潮があったようです。その当時の雰囲気を知るために福井県史(引用:福井県文書館リンク)を見てみましょう。
・1967年 長野ダム完成(後に九頭竜ダムに改称)
・1968年 三方五湖有料道路レインボーライン開通〔福井経済〕.
・1969年 福井県公害防止条例を定める
・1968年 福井鉄道労組,無期限ストを実施(290日で終結)
・1969年 福井大学で大学紛争が激化,スト実行委員会,学長室を占拠
・1970年 日本万国博覧会 大阪で開催
・1970年 福井県公害センター設立(1972年に移転)
・1970年頃 地域住民による公害対策委員会が結成
・1970年 鉱山からのカドミウム廃液が問題化、川魚から水銀が高濃度で検出
・1970年 工場廃液により海岸線約9㎞,沖合約2㎞がヘドロ化
・1971年 環境庁発足
・1973年 PCB問題表出。スズキの売買禁止。県内企業によるPCBの投棄の報告。
※福井県史から抜粋し、一部改変。
大阪万博の開催や大型建設事業の完成など華やかなニュースがある一方で、大学紛争やストライキも発生していたようです。同時期に、公害も社会問題として注目され始めたことがわかります。
50年間のBODの推移を見てみる
BODはその頃から今も変わらず測定されている古参の項目なので、約50年間にわたる膨大なデータが蓄積されています。ですから、BODはこれまでの水質の変化を知るために貴重な存在といえます。そして、私たちの調査も脈々と続く重要な仕事だと感じます。
では、BODの変遷を見てみましょう!
水質汚濁防止法の施行当初の1970年代から右肩下がりでBODが低くなっていることがわかります。特に1970年代や80年代の減り方は顕著です。
どうですか、BODの重要性は分かってもらえましたか?
水のなかの生き物を守るために
BODなどのいわゆる有機汚濁の問題については、落ち着いていると思われます。福井県が調査している地点では、どの地点でも環境基準を達成している状況です。でも、現在では異なる視点からも水質の保全を図ろうとしています。
それは、川、湖、海のなかに住んでいる生き物たちの保全を目的とした調査です。この調査は、20年程前から行うようになりました。
例えば、金属の亜鉛という物質は魚などに悪影響があるとされ、廃鉱山等からの排水の影響が懸念されています。また、主に化学工業に利用されているノニルフェノールという物質は女性(男性)ホルモンに似た化学的特徴を持つため生き物に悪影響があるとされています。
ちなみに、これらの物質の分析は、とても高度な技術を必要とします。例えばノニルフェノールは、家庭のお風呂に一粒の食塩を溶かしたくらいの濃度(0.000001g/L)を測れるくらいの精度が必要です!このため、化学的に1000倍程濃縮したうえで、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS/MS)という高性能な装置を使って測定します。
化学物質のモンダイ
いま世界的に「化学物質」の影響が懸念されています。化学物質は、現代の生活には欠かせないもので、医薬品や、シャンプーなどの生活用品、農薬や、家電製品・自動車・衣類の原材料など様々なものに使われています。これらの物質の中には、わずかな量でも生物へ影響するものがあるため、対策が必要と考えられています。特に、化学物質は非常に種類が多い(国内:約7万種)ため実態把握が困難なことが問題とされています。このため、現在、世界中で環境毒性や環境中濃度の調査が積極的に行われていて、当センターでも、河川中の医薬品や界面活性剤の実態把握などの調査・研究をしています。
みんなで良い水環境をつくりましょう
県内の川を周っていると、いろんな違いに気づきます。例えば、水草の繁茂の様子や、水の濁りや色、水鳥の多さなどは場所によって大きく異なります。水質が良い地点は、水辺の雰囲気も良いように感じます。
普段あまり意識しないかもしれませんが、私たちの生活が水環境に影響しているということをみんなが意識すると、水環境はだんだん良くなっていくのかなと思います。
例えば、私たちの使用した水はどのように環境中に戻るのか、洗車に使った洗剤はどこに流れていくのか、不要物を川に流すとどうなるのか、農薬を過剰に使用するとどうなるのか、など考えてみてはいかがでしょうか。
ぜひ、川に立ち寄ったときは、少し足をとめて、せせらぎを眺めながら全身で「水環境」を感じてほしいなぁと思います。
河川の水質調査はこんな感じです。引き続き、美しい福井県の環境を守るために、調査や研究に励みます!
<参考リンク>
生活排水読本(環境省)
川の水環境をより良くするために、私たちの普段の生活でできることがまとめられたホームページです。
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