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自動運転車に乗ってみたらあくびが出た

ちょっと前にAmazonクーポンの開発チームはアリゾナにいるよという話を書いた。オタクのエンジニアたちに「日本ではみんなすっぽんぽんで温泉に入るぜ」という話をしたらきゃーきゃー言われたという話を書いたわけだ。おかげさまで反応はいまいちだったわけど (笑)、気を取り直してまた今回もアリゾナに出張にやってきた。

どうせならということで、週末の土日からアリゾナに乗り込むことに。夏のアリゾナはとにかく暑い。シアトルとは打って変わって雲一つない空からは燦々と日差しが降り注ぐ。サングラスをしていてもそれでもまぶたを閉じたくなるような強烈な日差しだ。どこまでも続く砂漠、ぼてっとしたサボテン、赤茶けた岩山と迎えてくれたのはイメージ通りのアリゾナだ。

炎天下の週末にぼくは山に行くわけでも海に行くわけでもなく (砂漠だからそもそも海はないわけだけれど)、ダウンタウンの韓国料理屋さんへと向かった。Facebook経由で知り合った日本人の方と共にランチを食べに行くためだ。焼肉をハムハムとほう張りながら、MBAに通いながらアメリカのテック企業でインターンをされているというそのかたのお話を聞く。こちらの記事にも書いたけれど、ぼくはMBAは検討したもののその選択肢を選ばなかった人間なので、とても興味深く話を聞く。うーむ、そんな道もあったのだなと思いつつ、サムギョプサルをハムハムと食べる。(ハムハムってなんだ?)

自動運転車 waymoに乗ってみる!

そんな楽しいランチを終えたのち、さて帰ろうかとなったところで

waymo乗って帰ります?

とのお誘いが。平たく言えば、自動運転車乗って帰ろうぜということだ。waymoはAlphabet (Googleの親会社) 傘下の自動運転車を開発する子会社で、これを書いている時点ではサンフランシスコとフェニックス (アリゾナ)でサービスを提供している。おそらく法律や天気の問題をクリアできる地域で先行開始しているという状況なのだろう。

ぼくはそもそも自動運転車に乗れるなんて思ってもいなかったからテンションは爆上がりである!よっしゃぁぁ!

waymoのアプリをスマホにインストールしておく。そして現在地と行き先の住所を指定すれば自動運転車のご登場。こんな感じ。

ででーん!

まず目につくのは車の上部。丸い円盤がチャーミングなUFOが(そうあの古典的な形のやつである)たまたま車の上に着陸してしまったような格好になっている。このUFOのようなものはカメラのようで、360度を認識しながら周囲の地形や他の車などを識別していると思われる。それ以外にも追加のカメラが前方についていたりするが、大枠では普通の車のデザインと言っていいだろう。

ではいざ車内へ。当たり前だが運転手はいない。その点を除けば至って普通の車だ。ただ逆に言えば、その「運転手がいない」という一点に強烈な違和感を持つ。おいおい、これほんとに大丈夫なのか?

がらんとした運転席

ドキドキハラハラしているうちに、車はいよいよ出発。

のそのそと腰重い感じで走り出したと思ったら、ゆっくりと安定したスピードで道路を走るではないか。乗ってるぼくは気が気でないのに、車のほうはというと迷いもなくただただ着実にタイヤを回し続ける。

こんな感じである。

https://www.youtube.com/watch?v=U2BlBCIJsO

道路を曲がるときのドキドキ感といったら言葉に言い表せないものがある。その結果かは分からないけれど「うおー」とか「やばい」とかしか言えない (笑)。

なお、もちろん周りには他の車が走っているわけなので、それらをカメラで認識した上でスピードや車線を変えているようだ。お利口さんである。こんな感じ。

乗客は前方のタッチパネルでちょっとした操作ができる。今どこにいるかをマップで確認したり、音楽をかけたり。

後部座席の前に付いているタッチパネル
出発地点、現在地、行き先がマップで分かる

この音楽を自分で選べるのが地味にめちゃめちゃいい。Uberに乗ったりするときは、運転手のあんちゃんが爆音でヒップホップをかけていたり、爆音並みに大声で話しかけてきたりすることがある。自分が元気なときはいいのだけど、そうじゃないときはちょっとしたストレスになるので、この運転手がいなくて音楽を自分でかけられるという贅沢は決して小さくなかったりするのだ。

目的地まで着いたら、あとは降りるだけ。走行距離などによって事前に計算された金額が自動で請求される。ドアを閉めて3分もしないうちに、車はおもむろに走り出す。次のお客さんを目掛けて、もしくは次の依頼が来るまで道路を勤勉に走り続けるのだろう。

到着!

ジェフベゾスとあくびの話

人生初の自動運転車はハラハラドキドキで確かな感動がそこにはあった。ただ20分も車に乗っていると最後の方には「まあこんなものか」と思わないわけでもなかった。慣れてきた頃にはあくびも出てくる。外は暑いし焼肉も腹一杯食べたし、「さて昼寝でもするか」ぐらいのことを考えながら車を出たことを覚えている。

そう思ったのは、車の運転はアルゴリズムを作ることが決して難解ではないんじゃないかと思う節があるからだ。もちろん素人考えなのは重々承知しているけれど、「信号が赤だったら止まる」「前方に車があったらXX メールの間隔を置いて走る」また「最大速度がYY km/hならそれに合わせて速度を合わせる」といったルールは論理としてはとても明快だ。プロダクトマネージャーの仕事をしていると、自動運転車といった壮大なプロダクトもこういった小さい要件定義の積み重ねの先にあるように思えてくるのだ。当然今の段階では課題は山積みで、法律の問題だったり、天候 (雪や雨の多い地域で本当に走らせられる?) や道路 (クネクネの道まで対応できる?) の問題だったりをクリアしないといけない。ただ言えるのは、一筋どころではない希望の光がここには差し込んでいる。自動運転車がスイスイと道路を走っている未来がまだ小さいながらも、それでもはっきりと見える。実際に乗った人ならきっとみんなそう思うんじゃないだろうか。

ただここまで言っておいてなんだけれど、この小さな要件を一つ一つ満たすために血の滲むような開発者たちの努力があったのだろうと想像する。「人が横断歩道を渡っていたら走り出さない」だったり「信号が青だったら走り出す」という当たり前のような機能だって、PMとエンジニアとの間で喧喧ガクガクの議論が行われてきたのかもしれない。そしてなんなら繰り返されるテストでたくさんの人が犠牲となって轢かれていたりするのかもしれない‥ (Oh no… 合掌)。開発だけでなく自動運転車を走らせるための許可を得るために法律面でのハードルも決して低くなかったはずだ (それについてはwikipediaにも細かく記されている)。そしてこれからもたくさんのハードルがまだまだ待ち構えているということは想像に固くない。こういった苦労は決して今後も表には出てこないのだろうけれど。

そんなことを考えていたらAmazon創業者のジェフベゾスがCEOを退任するときに残した言葉を思い出した。彼は全社員向けに送ったメールでこんなことを書いていた。

If you get it right, a few years after a surprising invention, the new thing has become normal. People yawn. And that yawn is the greatest compliment an inventor can receive.

驚くべき発明はうまくいけば数年後にはあってあたり前のものとなります。人々はあくびをします。そのあくびこそが発明家が受け取れる最大の褒め言葉なのです。

発明というものは途方もなく地味な積み重ねの上にあるんだと思う。プロダクト開発するひとみんなが未来を作っているんですよね。

セドナの岩山、すごかったです。

今日はそんなところかな。出張中に訪れたセドナの岩山の写真で締めます。晴天の青空と赤い峡谷のコントラストがなんとも言えませんね。

それではどうも。お疲れたまねぎでした!

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福原たまねぎ
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