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季節と共に暮らす - 元都会人が見つけた田舎暮らしの流儀①

シリーズ1:「移住前の心構えと準備」


5年前の私。
「田舎暮らしっていいな」

不動産サイトを眺める日々が続きました。

「家賃3万円台で一戸建て!」
「築30年だけど庭付き!」

物件を見るたび、東京のボロアパート暮らしが虚しくなる。


満員電車に揺られながらスマホで物件検索。

「子どもものびのび育てられそう」
「家庭菜園もできるかも」

夢は膨らむばかり。


今から思えば無謀な決断でした。
失敗も含めて今の暮らしがある。


移住を考えている皆さんに、
あの時知りたかったことを包み隠さず伝えたい。


「自然の中でスローライフ」
そんなキャッチコピー。


週末の田舎暮らし体験は確かに素敵でした。
小鳥のさえずり、川のせせらぎ、夜には満天の星空。

「毎日これなら最高じゃん!」


しかし…。
現実は厳しかった。


最初の冬は地獄
朝4時、マイナス10度。
真っ暗闇の中での雪かき。


「これ、毎日やるの?」
スコップが重すぎて腕が上がらない。


車を出すためには避けられない作業。
国道までの2キロ。

重労働の後には、まだ通勤が待っている。


「不動産屋さん、これ聞いてないよ...」
呟きは空しく響く…。


「若い人が頑張ってるねぇ」
振り向くと近所の高橋さん。


「こうやると腰に負担がかからないよ」

スコップの使い方を教えてくれました。
その日から雪かきが少し楽になりました。


そのときに気づいたんです。

この時間は、
地域の人たちの大切な交流の場なんだって。


一番寒い朝。

向かいの山本ばあちゃんが声をかけてくれました。

「若いのに大変だねぇ。これ飲んで」
と、温かい甘酒の入った水筒をくれました。

都会じゃ味わえない自然な気遣い。


その甘酒は
代々伝わる製法で作られていたんです。

「私の母さんからの受け継ぎものでね」
雪かきの手を休めながら、昔話に耳を傾けました。



春の訪れは感動的。

一面の雪が消えると山菜の季節の到来。


「わらび採りに行くけど、来る?」
と、山本ばあちゃんの誘い。


「山なんて入ったことない...」


戸惑う私の背中を夫が押してくれました。
「こんなチャンスめったにないよ!」


長靴と軍手を借りて朝8時集合。


近所の方々と山に入った瞬間、
別世界が広がっていました。

「これがわらびの芽」
「ここにぜんまいが生えるのよ」
「山ふきは、こうやって見分けるの」

教科書にない知恵が次々と飛び出してくる。


3時間かけて採った山菜は
みんなで分け合いました。

「これ、天ぷらにすると最高よ」

教わった通りに作ったら、
家族から歓声が上がる美味しさ。



田舎暮らしの難しさは人間関係にも。

・おすそ分けのお礼
・草刈り当番
・神社の掃除
・朝の挨拶運動
・地域の寄り合い
・消防団活動

都会なら
「今日は用事が...」
で済んだこと。

でも、ここじゃ通用しない…。


子育て世代は特に大変。

学校行事もこなし地域行事もして、
仕事も当たり前にする。

心が折れそうになった日々が
何回もありました。


「必須」の付き合い。

最初は重荷に感じた地域の祭り

準備や飾り付けを手伝ううちに、
伝統的な技術や地域の歴史が見えてきました。

「この縄の結び方は江戸時代からの伝統なんだよ」

知らず知らずのうち、
誇らしい気持ちが芽生えていました。


移住で一番気を付けたいのは
家族の気持ち。

「みんな同じように望んでるはず」
そんな思い込みは禁物。


友人は奥さんの

「買い物が不便」
「友達ができない」

という理由で1年で挫折。


配偶者が都会育ちなら、
文化の違いは想像以上のストレスに。

「買い物は週末まとめて」
「外食は月1回」


生活の変化を家族全員で
受け入れる覚悟が必要です。



医療の問題も深刻。

病院まで「車で1時間」という距離は、
体調を崩すと死ぬほど遠く感じます。

インフルエンザにかかった時は
本当に困りました。


近所のおばあちゃんが

「うちの孫が看護師やってるから」

と、病院を紹介してくれて助かりました。


人のつながりの大切さを
身に染みて感じた瞬間でした。



仕事の問題も現実的に。

最近は「リモートワークOK!」
という物件広告を目にします。

実際の通信環境は要チェックです。

オンライン会議中の回線切れ。
なんてことも…。

予備の通信手段の準備も必須です。

自治体のコワーキングスペースなど、
使える施設は前もって確認しておきましょう。



冬の準備も侮れない。

・灯油の備蓄
・雪かき道具
・車のスタッドレスタイヤ

生活を守るための重要なインフラ。

都会育ちの私は、
この「冬の備え」の重要性
理解するまで時間がかかりました。


と、ここまで
苦労話ばかり並びましたが、
今の暮らしは充実しています。


朝の澄んだ空気と鳥のさえずり。
休日の畑仕事。
夜は星空を眺めながら縁側で一杯。

都会じゃ味わえない贅沢な時間。


先日、都会に住む友人が訪ねてきました。

「空気が違うね」
その一言で気づいたんです。

私たち家族の日常が、
誰かにとっては特別な体験なんだって。


この環境を選べたことを誇りに思います。



移住は覚悟のいる選択。

課題を理解した上で飛び込むからこそ、
本当の魅力が見えてくる。

次回は具体的な準備の進め方について。

例えば方言の話。

「お茶っこ」が「お茶請け」じゃなくて
「お茶飲み会」だと知らなくて大恥をかいた話とか。

今は笑い話ですが、
当時は本当に焦りました。

移住について疑問があれば何でも聞いてください。

「こんなこと聞いていいのかな」
という些細な疑問。

実は重要なヒントが隠れているかもしれません。
経験者だからこそ分かること。

皆さんの新生活が充実したものになりますように。


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