見出し画像

ノルマンディ上陸作戦80年

【D-Day】
 1944年6月6日、米英連合軍によるノルマンディ上陸作戦の決行から今日で80年。第二次世界大戦、ナチスドイツに占領されたフランスを解放するため、米英加連合軍がノルマンディで決行した史上最大の上陸作戦。80周年を記念してマクロン大統領はフランスで盛大な式典を開催し、バイデン大統領ら各国首脳が参列した。
 フランスを解放するため、なぜアメリカやイギリス、カナダ、オーストラリアの若者たちは命を懸けたのか? それに答えられる論理や言葉を現代の私たちは持っているだろうか。
 ノルマンディ上陸作戦についてコロンビア大学戦争と平和研究所所長のリチャード・ベッツ教授の「戦略論(ストラテジー)」の大学院演習、学部の講義に、留学していた当時の僕も何度も参加して学び議論した。当時ベッツ教授は受講生に映画『プライベート・ライアン』視聴の予習課題を出した。上陸作戦がリアルに描かれていて教材として成立するからだ。アメリカ人はハーバードやコロンビアなど大学や大学院で学生たちが毎日戦争について学び議論している。そんなアメリカに日本が戦争で勝てるはずはない。戦争について、安全保障についての知識や学びに圧倒的な差がある。だから僕は日本大学に危機管理学部を作ったのだ。
 ノルマンディ上陸作戦について僕が初めて知ったのは中学1年生で映画『史上最大の作戦』をテレビで観たときだった。当時は白黒映画で古臭い映画だと思って観ていたが、その後繰り返し観るうちに、とてつもなくよく出来た映画だと驚いた。それを戦後間も無くアメリカは映画化した。それだけの歴史性、物語性を持った事件だ。
 僕がノルマンディ上陸作戦のリアル戦場写真で一番好きなのはロバート・キャパのこの一枚だ。キャパ展でも観た。バリケードだらけの浜辺に上陸する兵士の前に入り、背中からドイツ軍兵士の銃弾が降る中で撮影したもの。至近距離のピンボケがリアルさを増す。文春文庫版『ちょっとピンぼけ』表紙にもなっている。
 ナチスドイツに占領されたフランスを解放するためにどれだけの連合軍兵士の命が失われただろう。独立戦争でフランスから支援を受け「自由の女神」を譲り受けたアメリカは命懸けでフランスを解放した。ロバート・キャパはパリ解放も撮影した。自由と人権と民主主義はそうした命懸けの戦いで守られた。
 ロシア・ウクライナ戦争から2年、今年のノルマンディ上陸作戦80年の式典はまた新しい政治性を帯びる。

いいなと思ったら応援しよう!