トランプ銃撃事件容疑者とは
20歳容疑者がホームグロウンのローンオフェンダーであることは間違いなさそうだ。これは現代のテロリズムの特徴であり、共通点として見い出されている。そしてホームグロウンでローンオフェンダーによるテロは成功しやすい。
トランプ前大統領銃撃事件のトーマス・マシュー・クルックス容疑者は20歳の白人男性、ペンシルバニア州の事件現場バトラーから約40マイル離れたべセルパークに住む。高校を卒業して、ライフルの許可証を持ち、銃を保持していた。共和党員に登録した経歴がある。
なぜ事前に警察の監視対象となったり、事前に確保されないのかというと、ごく普通にその地元または国内で生活しているホームグロウンだからであり、また事件の事前に誰とも計画の相談や議論をすることもなく、会合や連絡、通信をしなくてよいため記録が残らないローンオフェンダーだからである。それは、安倍晋三元首相銃撃事件や、岸田文雄首相銃撃事件の容疑者も同じである。
その他の現代のテロ事件の要因、背景にある共通点は、銃や爆弾に興味を持ち、手作りをしていたり合法的に入手している点、また、何らかの理由により、社会的に孤立しており、社会から阻害されている男性であるという点である。その社会から孤立している理由は多様であり、それが直接的な動機と繋がりやすい。
それにより、ごく普通の個人が「過激化」(ラディカリゼーション)してテロを実行するというメカニズムが、これまでのテロリズム研究で研究されてきた。この「過激化」の理由は、これまでそれなりに社会的に大きく根深いものだとされてきたが、現在続いている要人暗殺テロ(未遂も含めて)では、その「過激化」の理由、原因がどうもよくわからない、不可解なものになりつつあるという現象が起きつつある。今回の20歳容疑者の場合もそうである可能性がある。
現代人の「過激化」、テロリズムに何が起きているのか、さらに研究と探究が必要である。
(※この記事は朝日新聞デジタルのコメント・プラスに日本大学危機管理学部・福田充研究室がコメントした記事を一部加筆修正して転載したものです。)