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柳沢きみおという迷路 その3
ゼロマガの脅威により存亡の危機に立つ福マガ。その興亡をかけた大型企画が、3回におよぶ柳沢きみおレビューである。
うう、むしろ俺自身がzeRoさんの回し者なんじゃねーか?(;^ω^)
いやいや、「月刊柳沢きみおマガジン」という個人雑誌が出るほどの漫画家なので、その読者の一部でも定着したら・・・するわけねーよな。
というわけで、柳沢きみお作品紹介の第3弾です。今回で終了となります。
書いてて思ったんですけど、柳沢作品のキモはウダウダ感ですね。ウダウダ感が濃ければ濃いほど作品の評価が高くなります。一般的に面白いストーリーというのは、まったくプラスになってません。面白い必要ないんですよ。柳沢先生はウダウダしてればいいんです。
あと、
・男の生きがいは女である
・家族団らんは滅べ
・子どもはかわいいけど、妻は滅べ
・愛人ばんざい
という価値観もいいですね。
今回扱うジャンルは、
◆ハードボイルド
◆芸能界もの
◆スポーツもの
◆女が主人公
◆特命係長シリーズ
◆大市民シリーズ
の6分野となります。
◆ハードボイルド
DINO(ディーノ) 全12巻
主人公は東大を首席で卒業してデパートに入社します。そのデパートは、かつては父が社長として君臨してたのに、クーデターを起こされて失脚しました。その復讐を果たすため、上層部全員に大きな罰を与えることを目指して入社したのですね。そんな復讐の物語です。
主人公は空手を使い、ボディガード集団とのアクションシーンもあります。そういう場面では絵の下手さが目立ちます。そういう欠点を除くと、かなり面白いですね。柳沢先生の代表作の1つと言っていいんじゃないでしょうか。
現社長の息子が主人公を親友扱いするのがちょっとキモイです。柳沢先生は、親友とか青春とか、そういう言葉使いや概念がキモイんですよね。孤高の生活を送っている仙人が、週刊誌の情報だけで世の中を把握して描いてる感じでしょうか。
東京BJ 全6巻
ひょんなことで会社を辞めてしまった30代の元リーマンが主人公。彼が総会屋にスカウトされるところから話はスタートします。
最初はドン引きしてたのに、だんだんその世界に引き込まれていきます。裏社会の金とバトルの話が多いですね。こんな状況からどうするんだろう?という場面が多くて、それを裏社会的なテクで乗り切ってゆく展開が面白いんですよ。
これはかなり面白いです。名作です。オッサンになると、「DINO」よりこっちを好むようになります。恋愛とかセックスが少ないから、全体に暗く重々しい話である印象を与え、そういう部分が柳沢ファンのニーズと違うんでしょうか。まるで人気ないけど面白いという柳沢先生特有のパターンです。
夜に蠢く(うごめく) 全12巻
続・夜に蠢く 全6巻
冴えない人生を送る30代の男性が、ある日突然、私たちについてきて生まれ変われとオファーされます。金を渡すから自分たちに身柄を預けろと。会社が潰れたのをきっかけに、そのオファーに乗ったら、とある出版社(文藝春秋か新潮がモデル)の急逝した社長の身代わりにさせられます。
そこから身代わり人生がスタートします。お飾り社長でよいので、最初は食ったり飲んだりだけでしたが、そのうち女関係に走り出します。愛人を何人も作ったり、変な風俗に行ったり、お盛んになります。
それだけの話なので、ハードボイルドというジャンルにふさわしいか疑問がわきそうですけど、流れてる空気がすげーハードボイルドなんですよ。たいしてストーリーはないのに、ハードボイルドな空気に満ちた不思議な名作だと思います。柳沢先生特有のうだうだ感が好きな人にとっては名作です。
ぼくは古本で買って読んだとき、買ったセットに最終巻だけ入ってなくて、最終巻だけ買おうとしたらなんと1冊4000円。コンビニ版1冊が4000円ですよ。ふざけんな!と思いつつも読みたくてたまらず、4000円のやつを買いました。信者にとっては、それくらい力を発揮する作であると。
うだうだした空気感がすごくて、柳沢エキスが煮詰まってます。「続」があるのはいったん連載が終わってるんでしょう。話はそのまま続いてます。お約束として、ラストは投げ出すように終わります。
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