落下傘部隊
時間潰しに入った丸善で、新刊のチェックをしていた時、平積みで目に付いたのが、深緑野分著”ベルリンは晴れているか”
知らない作家だった。
変わった名前だなと思いながら、自分の中で第二次世界大戦ブームだったので記憶に残していた。
この間、何を読もうかなぁと図書館で考えて、急に思い出して探すとリクエスト待ちだったので、本棚にあった同作家の作品で”戦場のコックたち”を借りることにした。
少しタイトルで損している気もするが…
とても面白かった。
刻一刻と悲惨さを増す過酷な戦場をベースに、戦いの最中に所属する部隊などで起こる不可解な事件を解決して行くミステリー仕立てになっている。
つい最近(数年前)まで、本当に恐怖でしかなく戦争物は徹底的に避けてきていて、映画も本もドキュメンタリーも関連するものは一切見ていなかった。
だから、興味が出てからは、なんでも目新しく、解禁した途端に、途方も無い刺激物が体内に流れ込んでくる感覚になった。
歴史的背景を知ると戦争物というジャンルの劇薬は、かなりの依存性を増すのだと感じる。
で、作家が大好きで参考にしたと豪語していたスピルバーグとトム・ハンクス総指揮のドラマ”バンド・オブ・ブラザース”がどうしても見たくなって、見始た。
あーたしかに、完全に”戦場のコックたち”はこのドラマの影響を受けたスピンオフって感じだ!と、なんか全てが納得。
スピンオフって、文章がうまくないと興醒めするから、その点は全く問題ない、良い作家を見つけた。
というか、ドラマ見てからだと、戦況や状況とかが、つぶさにわかる。
本当にセットで見る(読む)のがお勧めです。
というか、そもそも”Band of Brothers(バンド・オブ・ブラザース)”がお勧めである。
詳しい取材を元にしたノンフィクションが原作で、ドラマだとおじいちゃんになった戦友たちのインタビューも各話の冒頭に入っている。
初見だと2話あたりまで名前と顔がなかなか一致しなくてストーリーを追う感じだが、1周目見終わってキャラクター性に愛着が湧いてから2周目に再度見だすと、俄然面白さが増す。
で、この流れで、”プライベート・ライアン”も見たが…
これは、冒頭の20分間をひたすら耐える映画にしか思えない…。
ちなみに、”プライベート・ライアン”も”バンド・オブ・ブラザース”も”戦場のコックたち”も激戦のノルマンディー上陸作戦から始まる。
“プライベート・ライアン”のトム・ハンクスが演じたミラー大尉は、アメリカ陸軍第2レンジャー大隊C中隊隊長で、海上(オマハビーチ)から上陸。
で、タイトルにもなっているマット・デイモンが演じるライアン上等兵は、アメリカ陸軍第101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊第1大隊B中隊所属。
“バンド・オブ・ブラザース”は、同じく第506パラシュート歩兵連隊第2大隊E中隊の面々の話。
“戦場のコックたち”も、同じく第506パラシュート歩兵連隊第3大隊G中隊の特技兵が主人公の話。
この小説だけは、一人称の”僕(キッド)”ことティモシー・コール五等特技兵(調理兵)の語りで最後まで描かれている。だから、戦争の悲哀も不安も不条理も、そして仲間への想いも”キッド”だけの視点で彼の感情が主軸に流れ、同調してくる。他の作品もすべて同じ部隊の話だからこそ、一人称の視点は、興味深く面白かった。
ちなみに歴史上最大の上陸作戦であるノルマンディー上陸作戦の開始は、夜間にパラシュート部隊の空からの降下による上陸から口火が切られた。
陸自の駐屯地が近いので、落下傘部隊は子供の頃からよく目にしていた。
日常の風景となっているが、落ちていく落下傘の一群が目に入ると、つい見上げてしばし見入ってしまう。
しかし、これらの作品を観た後では、なんだか違うものに見えてしまう。
しかも、ついこの間、落下傘に関しての裏話も聞いたばかりで、なんとも複雑な思いで空に漂うクラゲの一群を見入ってしまう。
願わくば、こんな悲しく虚しい戦いが世界中からすべて消えてくださいと、心から思う。
にしても、”ベルリンは晴れているか”もだけど、”Band of Brothers ”の原作は読みたいな…