ハクソー・リッジ
まとめないで、長めに書いておく。
#ハクソーリッジ
6月23日、76年目の慰霊の日。
戦争ものがやっと見れるようになった今でも、太平洋戦争の映画はどうしても怖い。
バンド・オブ・ブラザースはとても好きで、もう何度も見ているが、同じ制作のザ・パシフィックは、怖くていまだに見れていない。
バンド・オブ・ブラザースの視聴回数から、ずっと沖縄(前田高地)戦を描いたハクソー・リッジがアマプラからおすすめされていたが、これも敬遠していた。
しかし、クリント・イーストウッド監督の硫黄島からの手紙と父親たちの星条旗を見ることができたので、ちょっと勇気が出て見ることにした。
(それでも怖かったので、映画評論家の町山さんのコメントを読んで、事前に心の準備をしたが。)
結果、見て良かった。
メル・ギブソン監督なので、プライベート・ライアンと同様、またはそれ以上の凄惨な戦場描写があるが、実際はもっと凄まじかったのだろう。
良心的兵役拒否で不殺の精神から一切の武器を拒絶し戦場に赴いた1人の衛生兵の実話を映画化。
彼の行動は、信仰がなせる技なのか、もともと勇敢(狂人)だったのか、とにかくすごい。
殺さなければいけない戦場、しかも圧倒的な白兵戦のなか、武器を持たない兵士の無力感は絶望的である。
無惨なまでに瞬く間にどんどん散っていく命と、泣き叫び呼ばれて駆けつけ必死に手当てを施していく間にも腕の中で消えていく命、それを繰り返し続けていると、努力も信念も存在も命も全て無意味に感じたのではないかと思う。バンド・オブ・ブラザースの衛生兵の回でもそうだった。
それゆえに、尊敬すべき主人公の行為は狂気にしか見えないし、自己犠牲の精神すら信仰による自己陶酔にさえ見えてしまうほどである。
衛生兵という存在を知ったのがバンド・オブ・ブラザースだった。
後衛や駐屯地にいる軍医や従軍看護婦は知っていたが、最前線にいる衛生兵というのは知らなかった。
それにキリスト教圏だと従軍司祭がいることも「神の棘」で詳しく知った。
戦場でもっとも不条理な存在が衛生兵であると思う。
衛生兵は、白地に赤い十字の腕章、そしてヘルメットにもその印つけていた、とにかく目立つようにしている(ドイツでは白地に赤十字のゼッケンまで着用していた)。
これはジュネーブ条約で交戦中にも保護される(衛生兵を狙ってはいけない)という取り決めがあるからだという。
しかし、衛生兵がいなくなることで、その部隊の生存率は格段に下がり、敵に大打撃を与えることになるのだから、常に最前線にいるのだし恰好の標的になる。それに戦時なのだから条約もへったくれもないと思ってしまう。
現に硫黄島からの手紙でもハクソー・リッジでも衛生兵から狙っていく日本兵が描かれていた。玉砕覚悟の鬼気迫る総攻撃をしているのに、敵を削れずにこちらが不利になる衛生兵なんか見つけようものなら生かしておくわけがないだろう。
また当時の日本の独特な死生観もあるのかもしれない。
どこかの記事で読んだのだが、
傷病兵のケアや後送など不十分で、医療や衛生に力を注がずに、ものすごく多くの命が奪われたことは、西南太平洋諸島などの僻地戦での日本の敗北の大きな要因の一つとされている。
「死ぬまで戦え」という軍の教えを自ら実行した死者には実に「丁重」だが、生きて苦しんでいる傷病者への待遇は劣悪で、撤退時には敵の捕虜にならないよう自決を強要している。
もはや「戦果」よりも「戦死」それ自体が目的化しているかのようである。
(一ノ瀬俊也=著『日本軍と日本兵』3 より抜粋)
生き抜いて家族の元に帰ることを口にするアメリカ兵と、
「生きて虜囚の辱を受けず(戦陣訓)」と自決する日本兵。
不思議に思ったことがあるのだが、映画(硫黄島からの手紙)にも出てくるが、
日本兵が自決する時に口にする「靖国で会おう」という言葉がある
ヨーロッパだと、「ヴァルハラで会おう」となったりするのだが、
アメリカだと、こういう時に何と言うのだろうか。
映画の話に戻すと、
怪我しても全力で助けに来てくれる仲間がいるということは、前線で戦う兵士にとって、どれほどの支えになることだろうか。
最後まで見て、腑に落ちたのだが、
あぁ、そうか、これは宗教映画なのか、と。
キューブリックのフルメタル・ジャケットも視聴したのだが、後半の戦場パートは従軍カメラマンのような映し方で、英雄や感動を作らない淡々とした場面展開をしていて、これは戦争映画だなと思ったりもする。
私が見たものだと、ドイツのジェネレーション・ウォーも同じように戦争をただひたすら映していると感じた。
ハクソー・リッジを見たことで、より一層アマプラからおすすめされている映画が「野火」なのだが、これは何があろうと絶対見れない(勇気が出ない)と確信している。
#フルメタルジャケット
前半部分は下品なセリフ以外出てこない。後半は戦争を淡々と映している。
そして、ミッキーマウスマーチ。