レジで出会う印象深い人びと
わたしの仕事はホームセンターのレジです。
日々いろんな方がお買い物をしていかれます。
そのうちにお馴染みさんが増えていき、わたしが勝手に心の中でニックネームをつけて他のお客さまと別に覚えている方もいらっしゃいます。
そんな方々のおはなしです。
コーヒーお兄さん
2日に一度来店される20代くらいの男性の方で、いつも38円の缶コーヒーをたくさん買って行かれる方がいました。
小銭袋にたくさん細かいお金を入れてレジに並ぶお馴染みさんで、ご想像のとおり、かなり時間がかかります。
レジ担当の仲間内では彼が来店されると
「あっ!今日もいらした。」
と一斉に注目するくらいでした。
そんな彼が、わたしのレジにもいらっしゃいました。
その日は缶コーヒーが30円にお値打ち品になっていて、いつもの金額を出そうといつものようにまごついて、やっといつもの金額を取り出しました。
こちらも足りない金額ではないので、お預かりした金額をそのままレジ打ちしました。
もちろんお釣りがあるわけです。
「???」
彼はしばらく頭をひねってお釣りを受け取りませんでしたが、わたしが念を押してお釣りを渡すと腑に落ちない顔で出口へ歩いて行きました。
その経験から、コーヒーお兄さんは買い物のリハビリをしているんだ、とわかりました。
近所に養護施設があるのですが、そちらの卒業生なのではないのかな?
これも勝手な想像なので、お兄さんの正しい情報ではありません。
そんな新しい情報を勝手に付け加えて次の来店をむかえました。
その日は缶コーヒーが元の値段に戻っていた日でした。
いつものようにお兄さんは缶コーヒーをもって………来ませんでした。
なんと1本余計に缶コーヒーをもって来たのです。
ここからはご想像のとおりです。
お金が足りなくなって、1本やめればいいだけなのに、お買い物をあきらめてお店を出ていってしまいました。
この日、お兄さんはすごく傷ついたんだと思います。
次の来店では小銭袋ではなく、千円札を握りしめていらっしゃいました。