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2023年11月 活動報告

福島です。ようやく過ごしやすくなったと思ったらもう冬がきてしまいました。
11月の活動報告です。最後までお読み頂けますと幸いです。
(写真は大槌町内の居酒屋ゑびすさん)


ヒトとクマとカキと(時々クルミ)

毎月報告している気がしますが、皆さんご存知の通り今年はクマが異常に出没しています。そして例によってカキに出没しています。「クマが出たぞ」と駆けつければそこにカキあり、「カキがあるぞ」と調べるとそこにクマの痕跡あり。例年なら秋になれば出没は収まるようですが、今年はいまだに住宅の庭にも連日出没するほどの異常事態(町外は12月なのに人身被害が出ています)。クマは相当空腹なのか、出没現場に罠を設置すると翌日には捕まることも多々あります。
捕まりたくないクマと出会いたくない人間、両者を引き合わせてしまうカキを何とかしようと今月は特に動いておりました。

カキノキに残されたクマの爪痕(添えている野帳の短辺は9cm)

クマが連日出没する住宅地を歩いてみると、立派に育ったカキが各地に生えていることに気が付きます。クマは山際のカキに出没していたのですが、そのカキが食べ尽くされた後は恐らく住宅地のカキにも来るだろうと予想され、地域住民の方も口を揃えて怖いと仰っておりました。そしてカキの所有者の方に話を聞くと「収穫してないから切っても良いよ」とのこと。これはもう切るしかないということで、地域の専門業者にお願いして切ってもらうことにしました。
取り急ぎ町内を見回り、切る必要が高そうなカキをピックアップ。そして必要書類を作成し、どこの木を切るかを業者の方と打ち合わせしました。しかしどんなに早く準備しても、今晩にもカキにクマが来るかもしれないという懸念は払拭できません。

ということで、早速自分でカキを撤去しました。善は急げ、そしてまたあの作業をやりたい(10月報告を参照)という気持ちもあり現場に急行、先月買ったばかりの高枝切鋏でチョッキンチョッキンと撤去を進めました。ご近所さんから応援を頂きながら小一時間作業し、届く範囲のカキをすべて回収することができました。逆に言えば高すぎるカキには手出しできなかったので、ディアライン(シカが森を食べ尽くすと首が届かない範囲だけ葉が残る現象)の如くカキが残ってしまいました。

作業前。ヒヨドリがヒーヨヒーヨとカキ食べ放題を楽しんでいる
作業後。届かない範囲が一目瞭然。
40kg穫れました

所有者の方の意向は「来年は収穫したいので伐採はしないでほしい。剪定は良いよ」とのことだったので、業者の方には「高枝切鋏で全部回収できるように上の方を切ってほしい」とお願いしました。樹高が低くなるよう剪定して頂いたので、来年以降は利用も撤去もしやすくなったのではないでしょうか。後日、作業が終わった現場を確認しますとスッキリさっぱりしておりました。

ここで別件。
クマのエサはカキに限りません。クマが来ているクルミがあったため、吉里吉里国さん(大槌町内の林業系NPO)に伐採をお願いしました。作業を見学させて頂いたのですが、その業前はお見事の一言。
素人の私には「根本にチェーンソー入れてバッターンと派手に倒す」くらいのイメージしかなかったのですが、吉里吉里国さんは木に登り枝を小分けにして切り落としていく丁寧なお仕事でした。また、「ここをこのように切ると良い」ということを常に意識した非常に論理的な工程であり、伐採の奥深さを垣間見ました。

所作に迷いが無く、素人の私にも技術が高いことがわかる

クマを寄せ付けない町作りのために切るべき木は町内各地に無数にあります。来年はもっと広く実施できることを一つの目標として励みます。

釈迦に説法、プロにハクビシン講演

『今度、ハクビシンの生態と被害対策についてお話して頂けませんか?』というお話を夏頃に頂いておりまして、その会が遂に開催されました。『沿岸圏域野生鳥獣被害防止対策連絡会』という会で、行政の方だけでなく猟友会やJAなど、野生鳥獣対策の関係者が集まり、最新の動向や知識を共有するという会議です。
………そうです。聞き手の皆さんが野生動物の専門家なんです。私が会場でも屈指の若輩者(年齢的にも経験的にも)という状況ではありましたが、『"ハクビシン"の一点だけなら負けないぞ』という気概で発表して参りました。

学会発表で求められるような『学術的な新規性』ではなく『被害対策に繋がる知見』を発表するということで、写真や動画を多く使ったわかり易さ重視を意識しました。ネットや本で調べても出てこないような情報を色々発表できたので、好評を頂けた(……のではないか……)と思っております。鋭い質疑応答も頂き、私自身も非常に勉強になりました。
シカとクマが優先される都合上いまいち影が薄いハクビシンですが、このような機会を通して被害対策を盛り上げることができれば専門員冥利に尽きます。

『基礎情報って要るのかな……?』と思いながら話し始めた私

余談。
大学の先生がツキノワグマについて講演されたのですが、なんとその先生は私が春までお世話になっていた隣の研究室の先生。数ヶ月前までは「先生と学生」だったのに、こうして2人で前に座っているということに、なんとも不思議な、そしてレベルは断然違えど「同じ土俵に立てている」ということに嬉しく感じました。

電気を使わずシカを防ぐ夢の柵(は効果があるのか?)

11月17日、盛岡市で開催された「ワイヤーメッシュ立体柵実証現地見学会」に参加してきました。これは何かと言いますと、大学が実施した実験結果を踏まえて生まれた「柵に奥行きをもたせれば電気流さなくてもシカ防げるんじゃない?」というアイデアから生まれた柵です。奥行きがあることで、「脚が引っかからずちゃんと跳べるのだろうか」とシカに侵入を躊躇させることができるそうです。
「ワイヤーメッシュ立体柵実証現地見学会」「できるそうです」という表現からお分かりのとおり、ちゃんと効果があるのかは現時点では断言できない、だけども結構効果があるみたいだぞということで速報的に今回開催されたという事情があります。実物を見ると「こんな1m立方くらいの低い柵で防げるのか?」というのが率直な感想だったのですが、「絶対に脚を怪我したくない」という解説を受け、シカの気持ちに立って見てみると、確かに結構なプレッシャーを受けます(実際、動画を見ると躊躇って帰るシカが写っておりました)。

メッシュということもあり、そこまで存在感は無いように感じる

そしてこの柵を語る上で重要な特徴が、「ワイヤーメッシュが壊れなければほぼメンテナンスフリー」であることです。なので、電気柵のように草刈をする必要もなく、「ただ置いておくだけでOK」という非常に便利な代物です。作成も2人で量産できるそうで、作成の方法もご紹介頂きました。

シンプルな構造故に誰でも作成できるというのも魅力

「幅を1メートルほど取る」というのは牧草地ではあまり気になりませんが、田畑に置くとなると「その分収量が減る」「そもそも畦にそんな幅は無い」といった弱点を無視できなくなります。
「大槌の電気柵を全部これに変える」みたいな単純な話ではないのですが、場所を選べば非常に心強い柵になるのではないかと勉強させて頂きました。

以上で11月の報告を終わります。
最後までお読み頂きありがとうございました。

出張リスト

11月1日(水):銃砲所持許可手続きに係る書類提出@釜石警察署生活安全課。業務で使用する予定の猟銃を所持する許可手続き。
11月17日(金):ワイヤーメッシュ立体柵実証現地見学会@盛岡市薮川大の平。岩手県農林水産部主催。シカ侵入防止の立体柵の見学会。


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