下垂体性ADH分泌異常症(指定難病72)


ADHは尿量を少なくする作用を有するホルモンで、抗利尿ホルモンあるいはバソプレシンとも呼ばれる。血液中のADHが少なくなると尿量が増加し、逆にADHが増加すると尿量が減少する。こうした尿量の調整は体にとって大変重要で、例えばのどが渇くような脱水状態では血液中のADHは増加して体に水分を保持する機構が働き、水分を必要以上に摂取した際にはADHが低下して余分な水分を尿として排泄する。下垂体性ADH分泌異常症には血液中のADHが低下する中枢性尿崩症と、ADHが増加するSIADHがある。中枢性尿崩症では尿量が増加するとともに、のどが渇き大量の水分を摂取するようになる。一方、SIADHでは体内に水分が貯留するため血液中のナトリウムが薄まり、低ナトリウム血症を呈する。本邦における中枢性尿崩症の患者数は5000-10000人程度と考えられる。一方、SIADHの患者数は不明であるが、軽度の低ナトリウム血症を呈する患者も含めると特に高齢者ではかなりの患者数になると思われる。中枢性尿崩症はどの年代でも発症するが、小児にやや多いことが報告されている。一方、SIADHは高齢者に多く発症する。中枢性尿崩症は脳腫瘍や外傷などにより発症する場合(続発性)、家族性に発症する場合(家族性)、および原因が不明な場合(特発性)に分類される。原因不明の特発性中枢性尿崩症は10-20%程度、家族性中枢性尿崩症は1%程度、残りの80-90%が続発性中枢性尿崩症である。SIADHは脳腫瘍や脳梗塞などの脳の病気、あるいは肺炎や気管支喘息、肺癌などの肺の病気に伴って発症する。また、一部の薬の副作用でSIADHが発症することもある。家族性中枢性尿崩症は50%の確率で遺伝するが、その他の中枢性尿崩症やSIADHは遺伝することはない。中枢性尿崩症では尿量が増え、のどが渇き、たくさんの水分を摂取するようになる。多い場合は一日10Lの水分を摂取して10Lの尿を排泄することもある。尿意のため、夜間に何度も目が覚める。また、大量に水分を摂取するために食欲が低下したり、体重が減少することもある。SIADHでは低ナトリウム血症の程度によっては倦怠感、脱力などの症状を呈しますが、症状が軽くて患者さんが体調の変化に気づかないこともあります。中枢性尿崩症ではADHと同じように尿量を減少させる作用がある薬(デスモプレシン)を投与する。デスモプレシンにはこれまで経鼻製剤しかなかったが、最近では経口製剤も使用できるようになった。SIADHでは水分摂取を制限するのが治療の第一となる。また、低ナトリウム血症の程度によっては食塩を投与することもある。ADHの作用をブロックして尿量を増やす薬もあるが、日本では癌によるSIADHのみが保険適応となっている。中枢性尿崩症は一旦発症すると治癒することはまれである。したがって、デスモプレシンによる治療を継続することになる。SIADHの経過はその原因となる疾患の経過にも左右されるが、水分制限などにより低ナトリウム血症が改善することもまれではない。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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