エーラス・ダンロス症候群(指定難病168)

エーラス・ダンロス症候群」とは皮膚、関節の過伸展性、各種組織の脆弱性(もろさ)を特徴とする遺伝性疾患である。1901年にエーラス先生が、1908年にダンロス先生が報告したのが始まり。1998年に発表された国際分類では6つの大病型(古典型、関節型、血管型、後側彎型、多発関節弛緩型、皮膚弛緩型)とその他の病型に整理された。その後、D4ST1欠損に基づく病型(DDEDS;古庄型)など新たな病型が次々に見つかっている。すべての病型を合わせると1/5,000人はいるだろうと考えられている。どの国のどの家族にも発生する可能性がある。特定のコラーゲン分子をコードする遺伝子またはコラーゲン分子の成熟に必要な酵素の遺伝子の変異が見つかっている。古典型の原因遺伝子はⅤ型プロコラーゲン遺伝子(COL5A1、COL5A2)、血管型の原因遺伝子はⅢ型プロコラーゲン遺伝子(COL3A1)である。D4ST1欠損に基づく病型(DDEDS;古庄型)の原因遺伝子はCHST14。関節型の原因遺伝子は見つかっていない(ごく一部の患者でテネイシン遺伝子[TNXB]の変異が見つかっているだけである)。古典型、関節型、血管型、多発関節弛緩型は常染色体優性遺伝(患者の次世代は1/2の確率で疾患を受け継ぐ)である。後側彎型、皮膚弛緩型、DDEDSは常染色体劣性遺伝(患者の次子は1/4の確率で発症する)である。古典型では、皮膚の過伸展性(伸びやすい)・脆弱性(容易に裂ける、薄い瘢痕、内出血しやすい)、関節の過伸展性(柔軟、脱臼しやすい)などの症状が見られる。関節型においては、関節の過伸展性が中心(脱臼・亜脱臼)。慢性難治性疼痛、機能性腸疾患(便秘や下痢を繰り返す)、自律神経異常(立ちくらみ、動悸など)など多彩な症状が見られることもある。血管型においては、動脈病変(動脈解離・瘤・破裂、頸動脈海綿静脈洞ろう)、臓器破裂(腸管、子宮破裂)、気胸といった重篤な合併症を生じる。また、内出血しやすい、皮膚が薄い(皮下静脈のが透けて見える)などの特徴がある。D4ST1欠損に基づく病型(DDEDS;古庄型)においては、出生直後にわかる多発関節拘縮やお顔の特徴に加えて、進行性の結合組織脆弱性に伴う症状(皮膚の過伸展性・脆弱性、関節過伸展性・脱臼のしやすさ、足や脊椎の変形、巨大皮下血腫)を示す。古典型における皮膚、関節のトラブルに対しては、激しい運動を控えることやサポーターを装着するなどの予防が有用である。皮膚裂傷に対しては、慎重な縫合を必要とする。関節型においては、関節を保護するリハビリテーションや補装具の使用、また疼痛緩和のための鎮痛薬の投与を行う。血管型においては、初診時および定期的な動脈病変のスクリーニング、β遮断薬(セリプロロール)による予防、そして、トラブル発症時には慎重な治療(できる限り保存的に、進行性の場合には血管内治療、外科的治療が考慮される)を行う。腸管破裂を発症した時には緊急手術を行う。D4ST1欠損に基づく病型(DDEDS;古庄型)においては、定期的な骨格系(足・脊椎の変形、脱臼)の評価・予防・治療・リハビリテーション、眼科・耳鼻科・循環器科・泌尿器科の定期検診、便秘対策(整腸剤・緩下剤内服)、巨大皮下血腫に対する止血剤投与などが考慮される。患者の健康状態(重症度、経過)は合併症と治療の状況により、幅がある。本人、家族がどのような疾患であるかをよく理解し、医療関係者(主治医、リハビリ担当者など)、教育関係者(保育園や幼稚園、学校)と共有することが大切。安定したよい靴を履くなどして外傷に気をつけること、緊急時の受診体制をあらかじめ相談しておくこと(救急病院、かかりつけ医の利用、健康状態を記したカードの携帯など)も大事。

疾患の詳細はリンク先をご覧ください。

引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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