巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(指定難病100)

腸管(消化管)の大事な働きは、口から食べたものを消化・吸収することである。そして消化・吸収するためには食べたものを口から胃、十二指腸、小腸や大腸まで運んでいかなければならない。腸には消化・吸収に加えて食べたものを運ぶ働きがある。そして最後は吸収しきれずに残ったものを便として体外に排出する。他にも食べ物と一緒に飲み込んだ空気やおなかの中で発生したガスも体外に運び出す。そのような自立的な腸管の動きのことを「蠕動(ぜんどう)」という。「巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症」とは、その蠕動が生まれつき障害されている(蠕動不全)病気。特にこの病気では腸管以外にも膀胱が大きくのびきっていること、大腸(結腸)が縮んでいることが特徴とされている。なぜこのような病気になるかについてはよくわかっていないが、この蠕動がうまく働かないといろいろな困ったことが起きる。まず食事や空気をうまく肛門側へ送ることができないので、腸閉塞のような症状を来す。おなかが張って(腹部膨満)、嘔吐を繰り返す。それだけではなく、排泄も障害されるので腸の中で細菌が繁殖し、感染症(腸炎)を起こすことがある。その結果、食事がとれない、感染を繰り返す、という非常に危険な状況に陥る。したがって、この病気の場合は中心静脈栄養(点滴)による栄養補充が必須となる。また、おなかに入ったものを外に逃がす経路として腸瘻(人工肛門)が必要となることが多い。平成25年に行われた集計(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:ヒルシュスプルング病類縁疾患の現状調査と診断基準に関するガイドライン作成:田口班)で全国調査を行った研究では2001-2010年の10年間でわが国における発症数は19人が登録され、非常にまれな病気といえる。どのような人に多いかは数がきわめて少ないためよくわかっていない。この病気になった赤ちゃんのなかでは、男の子より女の子に多い傾向がある。この病気の原因は現時点ではわかっていない。親子、同胞での発症の報告はなく、遺伝的な異常の報告もないことから、遺伝する病気ではないとされている。生まれてすぐに腸閉塞のような症状がでる。お腹は大きく張り便もほとんど出ない。ミルクを飲んでも吐いてしまう。放置すると消化管が破れたり腸炎を起こしショックになったりするので多くの場合は緊急で手術が必要となる。その後も腸閉塞症状と腸炎を繰り返す。また腸が拡張(太くなること)し捻れてしまい、緊急手術を必要とすることもある。多くの場合、中心静脈栄養と腸瘻(人工肛門)が必要となっているため、それらによる合併症、副作用にも注意が必要。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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