コケイン症候群(指定難病192)

コケイン症候群とは1936年にイギリスの小児科医、コケイン博士により最初に報告された稀な遺伝病である。この病名(英語で Cockayne syndrome)を略して、CS(シーエス)ともいわれる。患者の多くは子どもで老化が進みやすく、日焼けしやすい体質をもつ。体は非常に小さく、徐々に目が見えにくくなり、耳が聞こえにくくなり、脳や神経にも異常が出てくる。50万人に1人という非常に稀な病気で、現在日本では約50名の患者がいる。地域差はなく、生活習慣との関連もない。ただ両親が血族結婚の場合、子どもが発症する可能性が高くなる。私たちの細胞の中にあり、生きていくために重要な物質「DNA」に紫外線が当たると傷が生じるが、この傷は通常は自然に治っていく。ところがCS患者はこの傷が治らないことで様々な症状が起こる。CS患者にはこの傷を治すために必要なたんぱく質が生まれつきない。ただ、このような異常でなぜCS患者に様々な症状が起きるのかは医学的にまだ全くわかっていない。遺伝病でるが、患者の親は通常は同じ病気ではない。また患者に子どもが生まれた場合でも同じ病気になる可能性は非常に少ない。生まれた時から日に当たると赤くなりやすく、1歳を過ぎると健常児に比べて身長、体重、頭囲が小さく、発達の遅れもみられる。3歳で成長が止まり、5歳を過ぎる頃には、目がくぼみ、皮下脂肪が少なくなり子どもでありながら老人に似た特有の顔貌が見られる。また少しずつ目が悪くなり、耳が聞こえにくくなってくる。やがて手足の関節が硬くなり、歩行や日常生活が難しくなる。残念ながら、CSは遺伝病であるため完全に治す方法はない。またCS患者にみられる様々な症状がなぜ発症するかの理由はまだ不明なので、栄養の補給や対症療法が主体となる。白内障の出現でますます目が見えにくくなり、聴力も低下するため、眼鏡、補聴器が必要になる。次第に言葉を話すことができなくなり、人とのコミュニケーションや自分自身の意志の主張はほとんど困難になる。運動能力も低下し関節が硬くなっていくために転倒しやすくなり、10歳までには車椅子の生活となる。さらに物が飲み込めなくなり、口からの食事が困難になってくる。15歳前後になると腎臓や肝臓の機能が衰え、高血圧、糖尿病、肺炎、外傷など合併しやすくなり、家族には細心の注意が必要になってくる。これらの合併症の悪化により、ほとんどの患者は20歳前後で短い命を終える。日常生活においては過度の紫外線曝露を避ける必要がある。直接皮膚に紫外線が当たらないようにサンスクリーンを正しく使用すること。帽子や長そでの衣服も有用。また年齢ともに視力が落ちる、耳が聞こえにくくなる、関節が固くなる、足が変形する、歩けなくなるなどの症状が進行してくる。そのためメガネの着用、補聴器の携帯、関節に対する理学療法や特別な装具の使用、車椅子の使用などが必須になってくる。これらの障害に加え、多動傾向があり精神的な発達も遅いため通常の学校生活は不可能で、養護学校に入学することが多い。体のバランスが不安定で転びやすくなるため外傷、骨折にも注意しなければならない。さらに進行すれば物を飲み込む機能が悪くなるので誤嚥するリスクが高まり、肺炎が起こりやすくなる。腎機能の低下、肝機能の障害、血圧の上昇、糖尿病、外傷、その後の脳内出血などの合併にも気をつける必要がある。

疾患の詳細はリンク先をご覧ください。

引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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