モワット・ウィルソン症候群

1998年に初めてモワットとウイルソンらにより、1)重度知的障害、2)特徴的顔貌、3)小頭症と4)ヒルシュスプルング病(巨大結腸症)が共通に見られる症候群として学術誌(J Med Genet)に報告された。その後、本症候群は報告者の名前から「モワット・ウイルソン症候群」と呼ばれるようになった。本症候群の「難治性疾患克服研究事業」の疫学調査から全国に1000~1500人ほどの患者がいると推測されている。男女ともほぼ同数だが、やや男性に多い傾向がある。ほとんどは出生時より症状が見られる。2番染色体の長腕にあるZEB2(別名、SIP1、ZFHX1B)遺伝子の片側(両親から伝わった2つのZEB2遺伝子の中のどちらか1つ)から、正常の機能をもつZEB2タンパク質が作られなくなる遺伝子変異(機能喪失性変異:ナンセンス変異、フレームシフト変異や遺伝子欠失)が病因である。本症候群は常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式を示す疾患であり、対になっている二つの遺伝子の片方の変異が原因。通常は患者の両親のZEB2遺伝子には変異はなく、両親の配偶子(精子あるいは卵子)のどちらかのZEB2遺伝子に突然変異が起こり、患者が本症候群になったと考えられる。そのために患者の兄弟姉妹が同じ遺伝子の変異を持ち本症候群になる可能性は生殖腺モザイクと言われる極めて例外的な場合を除いてない。全ての患者に中等度から重度の知的障害と特徴的顔貌が見られ、後者は出生時から見られる。眼と眼の間が広い(眼間開離)、眉毛の内側が濃い、下顎の突出と前向きのぶ厚い耳朶などが特徴。半数以上の患者にてんかん、小頭症、先天性心疾患が、約1/3の患者に脳梁の形成異常、ヒルシュスプルング病、頑固な便秘と尿道下裂などの腎泌尿器系の異常が見られる。成長障害のために身長や頭囲が対象年齢のそれらと比較して小さくなる場合がある。先天性心疾患、ヒルシュスプルング病、尿道下裂などの合併症は外科的に治療を行う。てんかんには抗てんかん剤、バルプロ酸ナトリウム(VPA)が有効で、約半数はてんかんのコントロールが良好である。現在、知的障害を改善する治療法は見つかっていない。発達遅滞はあるが、大部分の患者は1人で歩くことができる。先天性心疾患、ヒルシュスプルング病、尿道下裂などの合併症の治療後は急に寝たきりになるなど、症状が変化することはほとんどない。現在40歳代の患者がいるが、1人で歩行が可能。すなわち、合併症に対して定期的な検診を受けていれば、成人になって急に悪化することはない。ZEB2遺伝子の機能喪失型変異が見られる患者の精神運動発達やコミュニケーション能力には幅がある。子どもの発達に応じて理学療法、作業療法、言語療法などのハビリテーションを開始すること。独り歩きは平均すると4歳ごろに開始する。また、簡単な単語を話し、両親の会話をある程度理解できる患者がいる。自己表出を促しコミュニケーションの成功体験を重ねるなどは、患者のQOL(生活の質)向上のため重要である。医師等と相談して、個々の発達に合わせ根気よく行うことが大切。また、学齢期になると健康状態も比較的安定してくる患者でも、乳幼児期は病弱で、また合併症の検査や治療なども集中するため、医療機関、療育機関としっかり連携していくこと。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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