広範脊柱管狭窄症(指定難病70)

広範脊柱管狭窄症とは頚椎、胸椎、腰椎の広範囲にわたり脊柱管が狭くなり、脊髄神経の障害を引き起こす病気。頚椎部、胸椎部または腰椎部のうち、いずれか2カ所以上の脊柱管狭小化による神経症状により日常生活が大きく影響されることが診断の条件。頚椎と胸椎の移行部または胸椎と腰椎の移行部のいずれか一カ所のみの狭小化は除かれる。これまでに、「広範脊柱管狭窄症」の全国調査が行われたのは厚労省の班会議により平成2年度までさかのぼってしまうが、当時報告された患者の数は1,274人で年間で約2,300人と推計されていた。最近では、この病気で特定疾患と認定された患者の数は、平成23年度4,741人、平成24年度5,147人、平成25年度5,632人と年々増加してきている。なお、認定までに至らない患者を含めると全体ではさらに多くの患者がいると推定される。男女比は2:1で男性に多く、中年以降特に60歳代に多く認められている。2カ所以上の狭窄部位は頚椎部と腰椎部の合併が7割を占めている。病気の原因は現在のところ不明だが、加齢とともに椎間板や椎間関節の変性や黄色靭帯の肥厚などにより脊柱管狭窄を生じてくることが考えられている。これまでのところ、遺伝性の関与は明らかにはされていないが、脊柱管は生まれつき広い人と狭い人がいることが知られている。頚椎の病変からは、手のしびれ、使いにくさ、下肢のしびれやつっぱり、歩行障害、頻尿などがおこる。胸椎からはこのうち、手以外の部位の症状が出る。腰椎の病変からは、立ち上がった時や歩いた時の下肢の痛みやしびれが生じる。この病気ではこれらの組み合わせにより、手足にさまざまな神経症状がおきる。治療として局所の安静を必要とする。そのため固定装具等を用いる。消炎鎮痛剤やビタミンB12、血流を改善させるプロスタグランジン製剤、あるいは神経障害性疼痛に効くとされるプレガバリン等の薬も使われるが、痛みが強い場合には神経ブロックが行われることもある。保存的に治療しても効果がないときは入院して安静にしたり、前記薬剤の点滴、また神経ブロックも併用したりすることがある。
脊髄の麻痺症状が明らかな場合や、保存治療でも効果がみられない場合は手術療法を行います。頚椎部では狭窄部位に対しては後方から除圧する椎弓形成術が一般的ですが、まれに前方からの手術も行われます。胸椎部では後方から椎弓切除術が行われます。腰椎部では後方から椎弓切除術や拡大開窓術などが行われます。いずれの場所でも、背骨と背骨の間にある椎間関節まで除圧の範囲が拡がってしまう場合には、金属と骨移植を併用した固定術を行います。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之


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