【イベントレポート①】私たちがやっていくこと
去る9月1日、FUKKO DESIGNのキックオフイベントを行いました。
当日は、120人を超える方々にご来場いただきました。
新たな復興の形を考えていく仲間たちに来ていただけたこと、本当に感謝しています。
イベントでは、私たちがやっていこうとしていることや、様々な立場から見た”復興”を考えるトークセッション、糸井重里さんによる特別講演、さらには来場者同士の交流会を行いました。
当日の様子を、活動に賛同してくださっているFASHION HEADLINEの編集部の方々と、ボラ写PROJECTの方々に記録していただきました。
少しずつですがご紹介していきます。
まずは、
「“FUKKO DESIGN”を目指して
~復興支援のためのアーカイブ、ネットワーク、コミュニケーション~」
と題して、FUKKO DESIGNの発起人の河瀬大作(NHK エンタープライズ)と
木村充慶(TBWA HAKUHODO)が皆さんにお伝えした内容をご紹介します。
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河瀨
今日はお集りいただきまして、ありがとうございます。NHKエンタープライズでプロデューサーを務め、番組制作をしている河瀨大作と申します。NHKエンタープライズは番組作り以外にもいろいろなことができる場所で、その中でご縁があって木村さんと知り合い、このような活動をすることになりました。
木村
TBWA HAKUHODOの木村と申します。東日本大震災以降、自分に何ができるんだろうと考えつつ、もやもやしている中で河瀨さんと一緒になって何かできないかなということでいろいろ考えて今日に至っています。今日はそのあたりをお話しできればと思っています。
河瀨
いまからは、いままで僕らがどんな風にここまで来て今日に至り、今後こんなことをやっていきたいということをみなさんと共有し、僕らがこんなことをやっているんだというのを知っていただくのは大前提ですが、今後、復興という形でみなさんとご一緒できる手掛かりが掴めればと思っています。
河瀬大作(NHKエンタープライズ・FUKKO DESIGN発起人)
僕らが目指しているのは、「災害が起きた時にすぐに動ける有志のチームを作る」ということなんですが、僕がいまいるNHKエンタープライズでは、仕事の内容が番組を作る、という枠組みでは収まらなくなってきて、SNSを使ったりイベントをやったりとプロジェクトで動くことが増えています。すると、ひとつの会社の中で収まらない、ある課題を解決するのに、いろいろなところから人が出てきて、みんなの持っているノウハウを集めていくのがいまの社会の働き方のような気がしています。こと災害に関してもそうなのではないかと思っていて、復興支援、防災に関してもいろいろな人々の知見、アイデアを集めてアーカイブする場所を作り、強化して復興に生かしていくことはできないかと。普段からそういうことをしていないと何かが起きた時に突然動けません。日々いろいろな形でつながっておいて、有事の時にすぐに対応できるチームを作りたいなと思って運動を始めています。
木村
なぜそう思うようになったかについて、いままでやってきた活動を振り返りながらお話しします。スーパーボランティアの尾畠春夫さん、行方不明となっていた子どもを発見して一躍有名になった方ですが、西日本豪雨の復興現場で彼と出会ったことがきっかけです。彼と一緒に現場で復興活動をする中で、彼はボランティアとしてメディアに出る以上に、すごい技術と経験を持っていて。それを何とかできないかなと思いました。まずは、彼のスコップの使い方や土のう袋の入れ方を現場でiPhoneで撮影し、「はじめてのボランティア講座」という動画チャンネルを作り、公開して具体的なノウハウを紹介しました。
一方で、人気者の影響でボランティアの人が各地に偏在していることを目の当たりにして、何かできないかなということでやったのが、ボランティアできる人をTwitterを使って可視化させた「#雨あがれPROJECT」です。雨マークは復旧支援が必要な、ボランティアが必要なエリアで、晴れマークは復旧が進み観光が可能になったエリア、というものです。
これは自戒を込めてなんですが、現場でしかわからないニーズというのがすごくあって、自分でいいと思ってやっていたことが現場に行ったら何の役にも立たない、何にも知らないという経験があったんです。会社をずる休みしてずっとボランティアをしていたんですが、やっぱり現地に行くことがすごく大事で、それまでは僕もメディアや行政から上がってきた情報を元に考えていたのですが、現地へ行き、そこで埋もれている情報を見つけながらニーズを汲み取ることが大事なのかなということでした。
その後、すぐ北海道胆振東部地震がありました。地震のあと、北海道の人たちに節電を呼びかける必要があり、経産省と連携して取り組みをしました。
デマがすごく多かったのでデマを作らないように、シンプルな情報を作ってSNS上で拡散させようということで、とにかくわかりやすくアクションを見せて数字を使ってわかりやすくする、さらに肝なのが経産省のロゴを入れた点です。
バラバラと情報が行かないように「#北海道みんなで節電」のハッシュタグを付け一斉に拡散する、ということを行いました。有志の方にたくさん投稿、拡散をしていただき、結果、ブラックアウトは回避されましたが、この時も「何かあった時にすぐに動ける思いのある人」はかなりたくさんいるんだ、と思いました。もっとネットワークを作れば、もっとやれることはあるのではないか、そういうことをするには「思いのある人を事前に集めておく」ことがすごく大事だと思ったのです。
この北海道地震は局所的なものだったのですが、地震の情報が広がったせいで北海道全体の観光客が風評被害で一気に減ってしまったんです。そこで、もっと簡単に、もっと楽しくできるボランティアもあるんじゃないかな、ということで、新しい復興支援の形として「FUKKOツイート旅」というのを考えました。著名人やインフルエンサーの方に協力していただき、「#北海道のここがえーぞ」のハッシュタグと位置情報を付けると、ここにマッピングされる、というものなんですが、情報をとにかく広げるという目的で始めました。そのうち、投稿の輪が広がっていって、旅行会社による北海道ツアーの企画が増えたり、個人から企業へと思いが広がっていくという事態が起きたんです。
このことから、組織と組織の連携ということもありますが、「思いのある人」が組織を横断するともっと大きなことができるんじゃないかなということを感じました。思いを共にする人たちがつながる箱ができれば、大きなことができると思いました。
木村充慶(TBWA HAKUHODO・FUKKO DESIGN発起人)
最近起きた山形県沖地震、こちらも北海道胆振東部地震と同じく、被害自体は少ないと思われているのですが、観光業が大きな打撃を受けていて、地震発生後3週間後くらい経ったタイミングで現地に行きました。
鶴岡の日本酒の酒蔵に行くと、地震で1/3くらいの日本酒が倒れて割れてしまった、ラベルのない瓶が散乱してしまったという状況で。日本酒は同じ瓶に出荷ぎりぎりまでラベルを貼らないそうなのですが、瓶が倒れてしまって何の種類のお酒かがわからなくなってしまった、という相談を旅館組合の方から受けたんです。どうしたものかとネガティブにお話しをされていたのですが、ポジティブティブにできるんじゃないかと。王冠が潰れたり、倒れたくらいは消費者も気にしないし、何が当たるかわからないラッキーボトルとして販売できるんじゃないかなということで、「#もっけだの鶴岡」プロジェクトとしてビジュアルやデザインを考え、いろいろな人にSNSで拡散してもらう企画を行いました。キャンペーンの効果でラベルなしの日本酒は完売、王冠潰れの方も売上はかなり好調でした。
この時わかったのは、酒蔵に古い建物が多いというのは全国共通のことで、他でも展開できるということです。災害が起きるたびに、毎回一生懸命に考えて試行錯誤しているわけですが、取り組んだ施策をアーカイブしておけば、何かあった時に活用していけるのではないかと思いました。
河瀨
いまお話しした「#もっけだの鶴岡」の日本酒は、会場にもあるので、ぜひ飲んでみてください(笑)。FUKKO DESIGNのロゴや瓶のデザインをしてくれた博報堂のスーパーデザイナーの榮良太さんも会場にいます。
僕らのミッションとしては、経産省の『元気です北海道応援プロジェクト』という事業として、政府の支援を受けて復興支援を行っていたわけですが、1月からスタートしても3月で事業が終わってしまう。そうではなく民間の力を使ってサステナブルな復興支援を行える団体を作れないか、というのが僕らの考えていることです。
その活動の柱として3つのミッションを掲げました。
1、すぐに動けるチーム作り。2、アーカイブを作る。3、アイデアを売っていく、というものです。
1つ目について、これまでは企業と企業という形で事業が始まるのが昭和、平成時代だったと思うのですが、いまは個人に声をかけて、心ある人、あなた達と一緒にやっていきたいという方、自分たちのことを理解できるであろう人々と、日々組織の壁を越えていろいろなことを話し合って、何か起きた時はすぐに動ける有志のチームを作っておく。普段から何をするかを考えておくことが大事だと思っています。
2つ目は、復興支援のアーカイブを作ったらどうだろう、というものです。災害の度にいろいろな支援が行われてきましたが、その度ごとに人が入れ替わってまたゼロからスタートして悩んで、ということが割と多くあるのです。それをなるべくアーカイブして知見として集めておくことを僕らができたらいいんじゃないかと思っています。
3つ目。現地へ行っていろいろな人の話を聞いて、どんなニーズがあるのかを掴み、伝えることが僕らの得意なことなので、それをやって行こうと思います。山形県沖地震の日本酒のケースもそうだと思いますが、地元の人の話を伺って、アイデアを出すことで支援を行っていきます。
この3つのことをやっていく中で、FUKKO DESIGNという言葉を掲げて、本格的に始動していけたらと思っています。これまでも有志で、いろいろなことをいろいろな形でやってきましたが、今日をもって団体という形で活動をしていきます。
これからは、「復興スタディー」として、どんなことを僕らがやってきたのかをアーカイブ、ライブラリー化すること、そして「防災豆知識」としてSNSで発信して面白く伝えること、また伊勢丹の皆さんも参加してくださっているので、復興市場という形で物産展ができたら面白いのではないかというアイデアもあります。FUKKO DESIGNには、さまざまな企業の人たちが企業を超えて入ってきてくれているので、その人たちが企業を動かしていろいろなことができていくのではないかと思っています。
発災前、発災直後は多くの人やお金が動きますが、そこで終わるのではなくて、その後こそ大切にしたいと思っていて。せっかくいろいろな人が集まってきて繋がっていけるので、ビジネスチャンスというとすごく嫌らしいですが、お金を儲けるという意味ではなく、復興はどうしても税金に頼りがちになるものですが、それはサステナブルではないと思うのです。企業としてお金を回せる状況が続くことによって、結果的に被災地にもちゃんと還元できていくというやり方をしていかないと続かないのだと思っています。地方の人たちが何かできるように支援していく、ということができれば、地方創生というもう一歩大きなテーマにもつなげていけるのではないかと考えています。
文: Aiko TSUJI
写真:ボラ写PROJECT(宿野部隆之)
編集協力: FASHION HEADLINE
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今回はまずは、私たちがやってきたこと、これからやっていきたいことをご紹介しました。
今後、トークセッションや特別講演の内容もお伝えしていきますね!
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