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凪良ゆう『流浪の月』 #いい推し小説推薦文
「正しさに縛られない」と言った瞬間、別の正しさに縛られる。
「個性を大切に」と枠で守れば、自分らしさは消えていく。
<わたしは、あなたたちから自由になりたい。中途半端な理解と優しさで、わたしをがんじがらめにする、あなたたちから自由になりたいのだ。>(P.266)
私たちは、言葉で人に自由を与えようとする。名前を付ければ、世界の全てはわかりやすくなると信じている。
しかし、それは永遠に叶わないだろう。なぜなら、言葉よりも、心の数の方が多いからだ。
さらに、心と心の間に生まれる「関係」の数は、時と場合で変化する以上、ずっと多い。
だから、雑な理解が傷になる。おざなりな優しさが、身を貫く。
<どんな痛みも誰かと分けあえるなんて嘘だと思う>(P.200)
その通りだと思う。
たとえ名付けえぬ関係でも、そばにいられて、なおかつ自由である。それが許される時代は、来るのだろうか。
"本の話ができる"上野のBarで、エメラルドクーラーを飲みながら、そんなことを思った。