第16回Book Fair読書会~リーディングイレブン~

今回は史上最多、11名での会になりました。

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16回目にして、ついにサッカーチームも作れるメンバーが揃いました!

次は、W杯で盛り上がるラグビー(15人)できる規模を目指したいですね!みんなで読書のスクラムを組みましょう!(熱)

ちなみに今回の自己紹介テーマは「ブックカバーかける派?かけない派?」でした。

皆さんの意外なこだわりが見えた上に、

「(カバーをせず)本に、俺を読んでくれ!と訴えかけさせる」「タイトルがドロッとしてても、エグくても付けない」「カバーは心の戸締まり」...

といった名言も飛び出しました。

まさか、こんなに盛り上がるとは(笑)。

それでは、多彩な本の紹介をご覧ください!

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ヒロさん(9)→中野京子『欲望の名画』文春新書

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美術の時間は落書きばかりしていた自分でも楽しめる、読みやすいアートの本です。

なぜ読みやすいかと言えば、名画に関する背景知識がコンパクトにまとまっているからですね。

名画を観る機会があっても、画家と生きている時代が違うので、「よくわからない」という感想で終わってしまいます。

例えば、ドラクロワの『怒れるメディア』。女性がナイフを持ち、子どもを抱きかかえているような構図です。一見すると「暴漢から子どもを守る母親」という印象を持ちます。

しかし、実は「浮気した夫に罰を与えて苦しめるべく、子どもの首を絞めている」画なんです。それを聞けば、女性はどんな表情をしているだろう?など、見方が全く変わってきますよね。

著者は「絵は己の感性だけで味わえばよし、という鑑賞法が、いかに誤解を生みやすいかを示す好例であろう」と強調しています。

他にも、レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』やイリヤ・レービン『ヴォルカの船曳き』といった作品でも、その背景にある工夫や主張を知ると、描かれた人物ひとりひとりをもっと見てみようと思えます。

このように、「言ってくれればもっと楽しめたのに!」と思える情報が載っているので、おすすめです。

タカさん(10)→葉室麟『秋月記』角川文庫

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福岡を舞台にした、江戸時代小説です。葉室麟さんの小説は、分かりやすい「勧善懲悪」「ハッピーエンド」にとどまらず、考えさせられる所が特徴です。

主人公は、秋月藩の間小四郎といいます。彼は子どもの頃、自らの臆病が原因で妹を死なせてしまったと自分を責め、強い人間になろうと決意します。

成長した小四郎は、本藩(福岡藩)と協力し、当時評判の悪かった家老を追い出すことに成功します。しかし、むしろ暴走していたのは本藩の大名の方で、秋月藩の家老は泥をかぶっていた、という状況に気付きます。

結局は、本藩に操られて家老を追い出し、分家である秋月藩の建て直しも押し付けられた、ということです。

10年、20年と時が経つにつれ、若き日の小四郎の仲間たちにも「単独では立ち行かないから本藩に吸収してもらおう」と懐柔される者が現れ、(団結に)亀裂が入っていきます。

最終的には、小四郎自身が自ら「悪者」として島流しの刑に処され、藩の平和の為に捨て石となります。

自己犠牲によって、藩に静謐をもたらすという苦しい展開ではありますが、ラストの穏やかな描写が印象的です。

主人公が自分にできることを積み上げていた結果、辿り着いた答え。それを受け入れたからこそ、最後に爽やかな風が吹いていたのだと思います。

あかえんぴつさん(初)→山田悠介『スイッチを押すとき』角川文庫

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これは、泣けますね。

中学生の時に読んだのですが、まだ感動が心に残っています。未だに、ふと思い出すことのある小説です。

設定としては、青少年の自殺を抑制するために、ある実験をしています。

施設に子どもたちを集めて、押すと死んでしまう赤いスイッチを持たせる。主人公はそこに勤務している大人の科学者です。

どんどん子どもたちがスイッチを押してしまう中、4人の少年少女は7年間押さずにいます。

ある日主人公は、その4人を連れて施設を脱走します。彼は何故そんな行動をとったのか、そして4人はなぜスイッチを押さなかったのか。段々とその理由が明らかになります。

実は主人公も、かつて実験台にされていた子どもの1人だったんですね。そして、今度はスイッチを持つ子どもを監視する側になった。しかし、そんな彼もまた監視される側で、スイッチもまだ持っていました。

印象に残っているのは、最後には結局、残った4人もスイッチを押して終わることですね。「あ、押すんだ...」と、衝撃を覚えました。

少年少女には、外の世界で待っている人たちもいたのに、それでも死を選んでしまったシーンが忘れられないですね。

一蔵とけいさん(初)→原田マハ『たゆたえども、沈まず』幻冬舎

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美術館で学芸員をしていた作者が、フィンセント・ファン・ゴッホの壮絶な人生を題材に、アート小説の最高峰とも言える作品を書きました。

フィンセントが画家になろうと決めたのは27歳のとき。それまで精神衰弱などもあって職を転々としていました。そんな彼を経済的に支えたのは、弟のテオでした。

フィンセントは10年後、ピストル自殺でこの世を去ります。実は弟のテオも、その半年後に精神を病んで亡くなっています。

しかもフィンセントの画は生前、1枚くらいしか売れなかったと言われています。本人が亡くなってから、ようやく「印象派」として評価され始めたと。

この小説は、日本の浮世絵に影響を受けていたとされるフィンセントと、ヨーロッパで浮世絵を売った実在の日本人画商・林忠正の接点を描いた、「史実に基づいたフィクション」です。

読むと、浮世絵に込められた日本人的な感覚が分かりますし、またフィンセント・ファン・ゴッホの生涯が本当にドラマチックで、怖さすら感じますね。

最後は悲しい終わり方だったけれど、彼らの理想は今、叶っているんだなと思います。

11月には上野で『ゴッホ展』があります。是非「画を観て→小説を読んで→画を観て」のサンドウィッチで楽しむといいんじゃないでしょうか!

★一蔵とけいさんの読書ブログはこちら!


Moecoさん(2)→トム・ラス&バリー・コンチー(訳:田口俊樹、加藤万里子)『ストレングス・リーダーシップ』日本経済新聞出版社

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この本は、34種類から自分の強みを見つける本『ストレングス・ファインダー』の続編です。今度はその強みを、いかに人に還元していくか?について書かれています。

タイトルには「リーダー」とあるけれど、最初はリーダーになるつもりがなくても、結果を残すことで人がついてくるというのは最高に楽しそうだなと思いました。

面白いのは、自分の才能を活かすことがいかに幸せか、逆に合わないことを画一的に訓練するのがいかに無駄で不幸か、について書かれている点ですね。

例えば、私は子どもの頃クラスで隣の席だったヤンキーに勉強を教えていて、無意識の内に用心棒みたいにしてたんですよね(笑)。勉強と腕っぷし、強みの等価交換で、お互い補え合えた原体験がある。だからこの本の内容も納得です。

リーダーの類型は大きく分けて4つあります。特に面白いなと思ったのは、私も当てはまっていた「戦略的思考力」。中でも「学習意欲」です。

これはつまり「読書好き」ってことなんです。でも、ここにいる皆さんなら、週に何回か本屋に行く、何冊も本を読むって当たり前ですよね。でも、そんなことが強みになるんだな、と気付かせてくれます。

また、学習意欲が高い人は、何か課題を感じると「思索の旅」に出てしまう。

1週間くらいいなくなって、役に立ちそうな本を片っ端から読んで、インプットしまくって帰ってくる。その間に成長するタイプのリーダーもいるんです。そんな風に、「自分らしく突き抜ける」ことが、やっぱり大事だと思いました。

あとは、主観的に見た強みと外から見た評価のズレや、「いかに自分のトリセツは作られるのか?」を知れる辺りが面白かったですね(笑)。

★Moecoさんの偏愛が炸裂した「ミスチル×読書」記事はこちら!


くま子さん(5)→ヤマザキマリ『ヴィオラ母さん』文藝春秋

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漫画家のヤマザキマリさんが、自身のお母さん(リョウコさん)について書いたエッセイです。

神奈川県に住んでいたリョウコさんは昭和35年、27歳で仕事を辞め、親元も離れ、単身で北海道に向かいます。

それは、本当に自分のやりたいこと、札幌交響楽団のヴィオラ奏者を目指すためです。そこで指揮者の男性と恋に落ち、娘(ヤマザキマリ)が誕生します。しかし、夫はすぐに病気で他界...。

二人目の夫との間にも次女が産まれますが、その結婚生活もうまくはいかず、離婚してしまいます。リョウコさんは、幼い娘を2人抱えたシングルマザーになるんですね。

知らない土地、不安定な仕事、子育てもあって...と、これだけ聞くとかなり悲壮感のある状況です。

でも、やりたいことに邁進して、子どもたちも愛しているリョウコさんの生活は、本当に幸せそのものなんです。全ページから、家族3人の笑い声が聞こえてくるような気がします。

職業柄、食事や妹の世話をヤマザキさんに任せることが多いので「放任主義」と言われたりもしたそうです。しかし、ヤマザキさん自身は、人と比べず、自分の理想を押し付けないお母さんで「気楽だった」と振り返っています。子どもを全面的に信頼してくれる人だったんですね。

何よりも、子どもに「自分は強く生きていく人間である」という手本を見せること、1人でも育っていけると信じてあげることが大事であると書いています。

ちなみにリョウコさんは、今80代ですが、まだ20人くらいのお弟子さんを指導しているというから驚きです!そこに、物凄い尊敬と憧れを感じます。

3人の生活と、夢を追いかけ続けた人を描いた物語であり、とにかく笑える本でもあるので、あっという間に読めちゃいます。

こーせーさん(16)→野崎まど『[映]アムリタ』メディアワークス文庫

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今、『HELLO WORLD』が映画化された効果で、野崎まどさんに注目が集まっています。

僕は以前から彼の小説を読んでいたので、「有名になったなぁ...」と思い、今日はこの本を持ってきました。部類としては、SFやミステリーの要素を含んだライトノベルですね。

このシリーズは、6作目の『2』へと繋がっていくお話なのですが、まずは1作目のタイトルが『[映]アムリタ』...なんて読むのが正解なのか未だにわかりません。

また『2』にしても、二なの?ツーなの?セカンドなの?とあまり親切ではない謎のタイトルです。

しかし、この人を一言で表すと「天才」です。そこから連想して、自分が思う「天才」である宇多田ヒカルの楽曲や、紀里谷和明監督の映像に改めてハマッているくらいです。

このシリーズを薦めてくださった方も、「野崎まどは天才だ」と話していました。次回作があるかどうか、常に分からないラノベというジャンルで、伏線を多く張りなおかつ矛盾がないのは凄いです。

ストーリーは、学生の映画サークル内で展開します。「天才」の映画監督である女の子が持つ世界観に、主人公がなんとか近付いていこうとするお話です。

だんだんとSF的なお話にはなるのですが、宇宙に行ったりはしません。「天才」には、吉祥寺でじゅうぶんなんです。

KENさん(2)→朝井リョウ『ままならないから私とあなた』文春文庫

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中学から大人になってもずっと友達なのに、お互いを認め合えない2人の女性を描いた小説です。

音楽家の雪子と、それをサポートしようとする薫。私は彼女たちのタイプを、ドラマ『白い巨塔』の財前医師と里見医師に喩えました。

財前系の薫は、システムの確立を重要視して、プログラムで音楽を作りたい人。一方、里見系の雪子は、自分で演奏し、模索しながら成長していきたい人です。本当に対照的ですね。

これを読みながら、堀江貴文さんの発言で議論になった「寿司職人に修行は必要か?」という話題を思い出しました。

2人はなかなか分かりあえず、最終的には大喧嘩になります。

ある日、雪子が苦労して新しい曲を完成させたと思ったら、薫の家に呼ばれます。すると、そこでは自分が作ったはずの音楽が流れていた...。薫が今までの雪子の傾向や性格をプログラミングして、同じような作曲をしていたんですね。

薫としては「あなたのためを思って」という行動だったのですが、(自分で作ることへのこだわりがある)雪子は激しく怒ります。ちなみに、薫は結婚相手もマッチングアプリで選んでいて、合理主義は徹底していますね。

ただお互いに、相手のブレない姿勢には尊敬を感じているのでは。だからこそ、ずっと離れずにいるのかもしれません。

KITAJIさん(8)→アダム・グラント(訳:楠木健)『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』三笠書房

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このビジネス書は「自分だけのアイディアを実行に移し、成功している人は何が違うのか?」という研究をした本です。つまり「オリジナリティ」の再定義ですね。

リスクを考えず、勇猛果敢に新しいことをやる人と、ある程度慎重に行動する人とでは、どちらが成功の確率が高いか。実は、後者なんですね。

例えばマイクロソフトを作ったビル・ゲイツも、元々いた会社で仕事を続けながら、休日を使って事業を準備していました。ビジネスがうまくいく人は、リスクヘッジを考えながら、ギリギリのところで勝負する傾向にあります。

また、「全く新しいことをする」よりも、「市場に出ているものを改善する」方が成功しやすいです。例えば任天堂は、元々コンピューターゲームを売る企業ではありませんでした。しかし、苦戦するアメリカのゲーム会社のやり方を参考にしながら、ヒット商品を生み出していったんです。

また、「アウトプットの数」も成功には必要です。アイディアには「偽陰性(成功するように見えて失敗する)」と「偽陽性(失敗するように見えて成功する)」があり、これは誰が出したとしても変わらないと著者は言います。

例えば、スティーブ・ジョブズは、街がセグウェイに乗った人で溢れる未来を予想しましたが、結局実現していません。しかし、その他に実現させたアイディアが沢山あります。大事なのは、バッターボックスに立つことなんだと分かります。

★マイクを手に、歌唱界の「バッターボックス」に立ったKITAJIさんのブログはこちら!


なかしーさん(初)→リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット(訳:池村千秋)『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』東洋経済新報社

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著者はロンドンビジネススクールで教授を務めるなど、人材論・組織論の世界的権威です。「人生100年時代」にどう対応すべきか?というテーマについて書かれています。

これまでの生き方は「3ステージ(学習→労働→老後)」でしたが、今後は勉強し直すことが求められます。仕事とプライベートが曖昧な部分でお金を稼いだり、自分が「教育する側」に回ることで、将来への種を蒔いていくのが良いのではと感じました。

著者が強調するのは「見えない資産」の重要性ですね。知識やスキル、そして人脈が挙げられます。一方、車や家など物的資産は、積極的にシェアしていく流れになりそうです。他には、健康に気を遣うこと、あるいは時間とお金の使い方についても解説されています。

この本を読んで、(100年時代を楽しむためには)どこかで小休止を入れたり、若いうちからセカンドキャリアを考えておかないとまずいなあと思いました。

休日に関しても、今までは「体を休める日」という意識でしたが、その時間をスキルアップやコミュニティ作りに使っていきたいです。

ふっかー(16)→山田宗樹『百年法』(上下巻)角川文庫

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まさか、本家『LIFE SHIFT』の直後にこの帯を出すことになるとは…奇跡が起きました。これは『百年法』という架空の法律を巡るフィクションです。

未来の日本に、アメリカから「不老化処置」の技術が渡ってきます。これにより、手術を受けた人間は老けない・死なないという世の中が実現します。

しかし、世代交代の起きない社会ではイノベーションも生まれません。国家自体が老化していく事態に、処置から100年経った人間は強制的に安楽死させるという「百年法」が提案されます。政府はこれを導入するか否かを、国民投票にかけますが…。

私たちは、終わりがあるからこそ人生を楽しんだり、自然と「逆算」して生きているんだと思います。しかし、そのひとつの前提が崩れただけで、社会は大きく変わってしまう。また、不老によって家族の在り方も違うものになっていきます。この辺りが見どころですね。

新法に関しては「政府の陰謀」的な側面はそれほどなくて、官僚や政治家も現実的に困っているんですよね。「なんでアメリカは、こんな技術を発明しちゃったんだよ」っていうぼやきが聞こえてきそうです(笑)。でも他国が導入したら、やっぱり自分たちも…となってしまう、人の悲しい性みたいなものも感じます。

★参加者の皆さん、本当にありがとうございました!!

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