ネパールのお正月はいくつもある?

ほとんどの日本人は1/1が新しい年の始まりであり、世界中が等しくそのようになっていると思い込んでいる。テレビを見ていれば、どこでもカウントダウンをして、新しい年を迎えるや否やみんながあいさつをしている光景が流されているからだ。

ネパールにいるとそれはグレゴリオ暦にしたがって生活している地域や人たちに当てはまる時期であって、大方のネパール人にとってはあまり関係のない話であるということを実感する。

もちろんネパールにも外国とのビジネスがあるし、観光立国でもあるから、観光地に行けばカウントダウンらしきものはあるし、新年のあいさつをされることもある。しかし、政府はビクラム暦を公式に採用しているし、多くの人々もその暦にしたがって生活しているため、グレゴリオ暦の2020/4/13が彼らにしてみれば2077/1/1である。では、ビクラム暦の1/1前後は盛大に祝ったり、長期間休んだりするのかというとそういうこともない。ネパールのカレンダーにはふつう両方の暦が併記されていて、ビクラム暦の1/1は休日だが、それ以外は休日ではない。グレゴリオ暦の1/1にいたっては休日でもない。つまりふつうに仕事をしている日なのである。

しかも多民族からなるネパールでは、民族、宗教ごとに習慣が異なるし、独自の暦を持つ民族もいるため、新年の開始日もそれぞれ異なる。例えば、チベット族ならグレゴリオ暦の2020/12/30が1/1、ネワール族ならまた別の日だ。だからネパールのカレンダーを見ていると、たしかにお正月がいくつもある!

では彼らはいつ休むのか。ネパールではヒンズー教徒が最も多いため、その祝祭が続く秋に長い休暇を取る。ダサイン、ティハールというふたつの大きなお祭りだが、だいたいグレゴリオ暦の10月ころになる。だいたいというのは毎年ビクラム暦の祝祭日はグレゴリオ暦に直すとずれが生じるためで、ある年は9月下旬から始まったかと思えば、別の年では10月中旬からになったりする。いずれにしても、その時期は学校も官公庁も長い休みになるため、宗教・民族に関係なく、帰省したり家族・親族・友人たちとごちそうを食べたりする。

ネパールでは長いこと多くの民族が折り合いをつけながら、暮らしてきたため、他の人の習慣や信仰をお互いに尊重する。お正月がいくつもあるからといって決して困ったことにはならない。

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