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2010年のラオス ③ チャンパーサック

サワンナケートからバスで目指すはチャンパーサック。
その最寄りの街であるラオス南部の大きな街、パクセーに向かいました。


バスでパクセーへ

サワンナケートのバスターミナルから、かなり古びたバスに乗った私は、煤けた窓ガラスごしに流れる景色を追いかけ、時々停車する田舎町の様子を眺めていました。

バスには外国人の姿も
路端のお店

通り過ぎる路端に出ているお店と行き交う人々。
私には縁もゆかりも無い人たちの、それぞれの日常風景はなぜか切ない気分になってしまいました。

途中の市場で
市場はどこも活気がある

パクセーで出会ったラオス人

やがてバスはパクセーのバスターミナルへ到着しました。
バスターミナルはパクセー市街地から離れているらしく、私は他の乗客たちの流れに連れられて、2トントラックの荷台に電車のロングシートのように向かい合わせに座席をくっつけた乗り合いのソンテウに乗り換えました。

私と向かい合う正面の座席にラオス人のカップルが乗り込んできました。
そのカップルは、バックパックを担いで乗り込んだ私を見て何やら話し込んでいます。

「ねぇ、眼の前の人、日本人かな?韓国人かしら」
「わからないけど、こんなとこまで一人で来て何してるんだろね(笑)」

そんな会話が聞き取れた私は、
「私は日本人ですよ。タイで働いていて休みを取って旅行してます」

私が突然タイ語で話しかけたので、二人ともとても驚いたようです。

そこから会話が始まって、お互いに自己紹介。
彼女の名前はMoey そして彼の名前がNoy
二人はサワンナケートで働いているらしく、パクセーにいる友だちに会いに来たとのこと。

せっかくなので、パクセーのことを聞いてみようと思った私は彼らに色々質問をしました。
すると、今から友達の家に行くけど、一緒に行かないか?
という話になり、その後の予定がなかった私は二つ返事で了承しました。

なんとなく旅の予定が見えてきた

パクセーの市街地まで向かう途中、彼らの友人宅近くで我々三人はソンテウを降りました。
小さな集落を歩いて進み、たどり着いたのが彼らの友人宅でした。
ついさっき知り合ったばかりの私を特に気にすることなく、久しぶりの再会を喜び合う彼らの楽しそうな様子を眺めていましたが、やはり本気のラオ語は全くもって聞き取れません。

時々、Moeyが私に気を使ってタイ語で説明をしてくれたのでわかったのですが、これから知り合いの車を呼んで一緒に少数民族の集落と滝を見に行こう、という話で盛り上がっていたようでした。

知り合いの車。
と聞いて、私はこの旅の最終目的地であるチャンパーサックまで行く方法を尋ねてみました。

するとMoeyとNoyだけでなく、パクセーの友人家族も総出になって何やら議論が始まります。
どうやら、チャンパーサックまで行くには公共のバスよりも車を貸し切ったほうが便利だとのこと。

「じゃぁ、今からやってくる知り合いの車を明日一日チャーターしてチャンパーサックまで行くことはできないかな?」

「多分大丈夫だと思うけど・・・」

やがて、かなりくたびれたトヨタのセダンがやってきました。
この車でチャンパーサックまで大丈夫かな?
私が不安に思う様子を察したのか、Meoyがその車の知人にあれこれ尋ねていました。
すると、この車ではなく、バンを一台呼びましょう、と言う話になりました。
私一人のために大勢乗れるバンって大げさだな、と思っていると、いつのまにかMoeyとNoyも明日は同行することになっていました。
せっかくなので私一人で行くよりも彼らも一緒のほうが楽しそうだ。
もちろんチャーター代金は私が払うのですが、これもなにかの縁なので、明日一日を楽しむために了承したのでした。

大きな滝と少数民族

明日の話がまとまったところで、くたびれたトヨタで向かったのが少数民族の集落でした。

昔ながらの家
この村に暮らす夫婦
気持ちよさそうにお昼寝タイム

午後の日差しの元で静かな暮らしをのぞかせてもらいました。
藁葺き屋根の昔ながらの家々。
それでも何故か豊かさを感じるその風情に私はすっかり魅入られてしまいました。

ゆらゆら揺れる吊り橋

そんな集落を抜けて、山道に入り、ゆらゆら揺れる吊り橋を渡ると、大きな滝がありました。

自然のままの滝

余談ですが、タイ人に「あなたの出身地には何があるのか?」という質問をすると、ほぼ間違いなく出てくるのが「お寺」と「滝」
どんな田舎出身の人でもかならず立派なお寺と、美しい滝があると言い切りますが、たいてい期待したほど立派なものでない場合が多いのですが、今回の滝は期待以上に迫力があってなかなかのものでした。

かなりの水量です

滝を見学したあと、私はパクセー市内まで送ってもらい、Moeyに紹介してもらったホテルにチェックインしたのでした。

いよいよチャンパーサックへ

パクセーの朝

そして迎えた翌日の朝。
今日一日送迎をしてくれるバンに乗ってMoeyたちがやってきました。

車も乗せる渡し船

バンはパクセー市内を抜けてメコン川沿いを下ります。
そして渡し船でメコン川を渡るらしく、小さな船着き場に到着しました。

船着き場の売店
独自の網で魚を獲る
メコン川の対岸へ

やってきた筏のような渡し船にバンごと乗り込んで、メコン川の対岸へ渡りました。
メコン川もこのあたりになると川幅が広く、橋がないこのあたりでは渡し船が重要な役割を担っているようでした。

そしてようやくたどり着きました。
チャンパーサックのワット・プー遺跡です。

長い回廊の跡の先に本堂が

もともとはヒンドゥー教寺院として建てられたらしいですが、クメール時代に改宗されて仏教の仏像が祀られているそうです。
装飾やレリーフにはヒンドゥー教の影響とクメール文化が混じり合ったような印象です。
入口から続く長い回廊跡を歩いて本堂へ向かいます。

修復作業中

まさにこの場所、私はずっと思い描いていたその場所に立つことができました。
当時はそれほど訪れる観光客もなく、私達三人はその景色をほぼ独占。

丘の上から回廊を見下ろす
丘の上の本堂跡
クメール時代のレリーフ

自然に朽ち果てて崩れている場所も多く、立入禁止になってもおかしくないのですが、その中まで入ることができて、美しく刻まれたレリーフを間近で見ることができました。

崩壊寸前
丘の頂上からの眺め
二人のお陰で楽しい旅になりました

あれから14年の月日が流れました。
今のチャンパーサックはどうなっているのでしょうか。
私はもう一度あの場所に立ってみたいと思う反面、あの日の思いは二度と感じることが出来ない気がして、なかなか再訪しようという気持ちになれません。

MoeyとNoyとはその後、SNSでつながることが出来て、今現在も彼らの様子を伺うことが出来ています。
二人は付き合っていたわけではなかったようで、それぞれ別々の人生を歩んでいます。
二人とは今日まで再会することは出来ていませんが、SNSでいつでも連絡が取れるという「つながり」は大切にしていこう思っています。


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