『小説賞に応募するなら…』的な記事を書いたらスキが伸びているので「もし受賞したとき」のお話を追記っす。
何かしらの小説賞やら脚本賞に受賞したあとに気をつけるお話。
例えば
小説賞に応募し、最終選考に残っているとする。
最終結果がHPに出る半月ほど前に、まずは電話かメールで、「事務局に来てください」と言われる。
(最終選考に残っていても、最終結果がHPに出るまで連絡がないということは、落ちているということでもある)
大抵の場合、このときにはまだ、大賞なのか優秀賞なのか佳作なのか、もしくは別件で呼ばれたのか、教えてくれない。
ボクの受賞した出版社は全部、なぜかもったいぶる。
結局は何かしらの賞を獲っているのだが。
そして対面当日。
事務局という名の出版社に到着し、受付で担当の人と繋いでもらう。
のだが!!
もうここから、始まっている。
とにかく、通常の5倍ぐらい低姿勢で行くこと。
受付の人と担当の人が知り合いの場合、告げ口されることもある。
あ、当然、受付の人に悪気はない。
そしていざ、担当の人に会う時は「私なんかが受賞させてもらってすいませぇ~ん。ありがとうございまずぅ~」的な雰囲気を前面に出す。
会話のバランスが良ければ言葉に出しても良い。
この時にちょっとでも調子に乗っていると、トガっていたり、声が小さかったり、応接間のソファーに座るときに足を広げすぎたり、脱いだ上着や鞄をバサッと雑に置いたり、「ありがとうございます」を「あざっす」とか言っちゃう系の、「私、受賞者ですけど何か?」的な雰囲気を出した瞬間、驚くほど一気に嫌われる。
特に出版業界は、古い体質が残っている会社もちらほらちらほらぐらいある。
「アイツ、トガってるけど元気があっていいな」とか
「若いうちはあれぐらい元気がないとな」とか
清掃員に化けている社長が「君の裏表のない人間性に惚れた」なんてことは
100%ない。言い切る。
とにかく、出版社の方々からすれば、受賞者といえど、あなたはただの1作品を出版する可能性のあるド素人の1人でしかない。
しかも、よっぽど大きい賞でない限り、受賞作を出版したとしてもほぼ売れない確定を想定した上だ。
宝くじを買った感じに似ている。
ほぼ当たらないだろうが、万が一当たるかもしれない、のレベル。
受賞した本人からすれば、何年もかかって何作も書き続けて、いくつもの賞に応募してきて、ようやく日の目を見た瞬間だが、出版社からすればただのド素人新人以外の何者でもないことを忘れないように。
どの状況にも言いえることだが、自分を過信してもいいが表に出さない、ということ。
出版社の人間はプライドが高い人が多い。
「あの作家は自分が育てた」的な、1冊しか担当編集をしていないのに大物作家をわかったふりをしたい人だったり、受賞者などの新人には「俺が出版業界のイロハを教えてやるからな」と構えている人が圧倒的に多い。
これは不思議なことに、本人に悪気は全くない。
だから余計にややこしい。
業界を知っている俺が教えないと、という使命感さえあったりする。
偉そうにする気はないが、その使命感が偉そうにさせてしまう。
なので、担当編集さんには「イロハ、教えていただきまずぅ~。お願いしまずぅ~」との空気を出し続けながら対応すること。
編集さんの中には、出版社の俺らがいないと大物小説家でも小説を販売できない、と、イニシアチブを握っていると思っている人もいるし。
それを自信や誇りと勘違いしている人さえいる。
とはいえ、低姿勢に対応するのは初対面社会人の基本でもあるし、そう難しいことではないと思う。
それらの対応が、2作目、3作目の布石にもなる。
どの仕事もそうだが、あの人と仕事したいな、また会いたいな、と思わせるのが、小説家を専業にするための秘訣。
畑でどんな美味しい野菜を育てようと、販売するお店がないとお客さんに売れないのは確かで。
出版社あっての小説家。
小説家あっての出版社。
どちらが上というものでもない。
あ、受賞原稿の直し奮闘記などはまたいずれ書こうっす。
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