公選法におけるSNSと選挙運動と報酬の問題とまとめ
(・∀・)これは、Xに投稿した記事に少し加筆して、まとめを追加したものです。
(・∀・)SNSにおける選挙運動と、営利企業の関与、報酬が話題ですので、解説します。 (^ω^)一応、この分野については、共著で書籍も2つほど、出しています。
(・∀・)まず、第1の原則(政党広告やウグイス嬢などの例外はあります。)は、選挙運動は無償でやらないといけないこと、お金を払ってはいけない、ということです。これは運動員買収といって犯罪になりますし、公民権停止(投票する権利や立候補する権利が制限され、当選は取り消される。)、連座制(候補者以外が実行しても、候補者が責任をとらされて、罰則や公民権停止、当選無効の適用がある。)の適用もあります。
(^ω^)疑問なのですが、「お金あげるから投票して」がダメなのはわかるのですが、選挙運動を、お金を払って頼むことが、なぜ禁じられているのでしょうか。
(・∀・)その理由は、全く「お金をあげるから投票して」がダメな理由と同じです。票をお金で買うことを許すと、かけたお金で選挙の勝敗が決まってしまいます。同様に、お金で選挙運動を頼める、つまり、お金で支持の声、支持を呼びかける声が買えるとなると、お金をかければ、「みんなこの人を支持している」「この人の支持がどんどん増えている」みたいなことが実現できてしまうからです。ある人を支持する選挙運動を熱心にしている人がいれば、普通は、「(お金を払っているからではなくて)すばらしいから、こんなに支持される人なのか」と誤解します。一種の選挙版ステルス・マーケティングですね。もっといえば、お金を貰って選挙運動をした人は、その人に投票するでしょうから、選挙運動にお金を払うのは投票にお金を払うのと同じか、それ以上に選挙の公正を害するのです。
(^ω^)この規制は、いわゆるネット選挙、つまりインターネットを利用した選挙運動にも適用があるのでしょうか。
(・∀・)あります。
(^ω^)そうすると、選挙運動用のレンタルサーバーを借りるとかで、ホスティング会社にお金を払うことも禁じられていることですか?それはおかしくないですか?
(・∀・)いいえ、それは禁じられていません。レンタルサーバーの提供そのものは、選挙運動ではないからです。サーバーを100台借りても、1票にもならないので、投票を得させるための活動ではないからです。ただし、選挙運動は、全体を通じて、会計関係の規制がありますので、それは別論です。
(^ω^)それでは、報酬を払えない選挙運動というのは、どういうものですか? (・∀・)一般的な解釈、最高裁など裁判例をみると、「特定の選挙につき特定の人に当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的を以つて、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘若しくは誘導その他諸般の行為」をいいます。また、裁量の有無も考慮要素だと思われます。裁量があると、選挙運動と評価されやすいです。裁判例上、電話をして原稿を読み上げる行為であっても、いつ電話を切るとか、タイミングについて裁量があることを強調して、選挙運動であるとした事例があります。なので、誰がやっても結果は基本的に同じな機械的な労務の他は、得票に役に立つなら、選挙運動になる可能性が高いでしょう。
(^ω^)運動員買収の認定はなかなか難しそうなのですが、どうやって認定をするのでしょうか。
(・∀・)状況証拠を総合的に評価することになると思います。たとえば、依頼先が、依頼者に、コンサルティングとか、企画の立案とか、作戦とか、そういう提案をした、主導的なものであれば、それは選挙運動である、といえる可能性が高まるでしょう。また、人数や関係性も重要な要素です。無報酬で候補者本人ではなくて、運動員のために大勢が集まることは通常考えにくいでしょう。あと、費用についても、機械的労務の提供といえる水準かどうか、ということも重要です。書類だけではなくて、当事者の言動も重要です。当事者が、そのような行為をしたと述べたことが立証できれば、かなり選挙運動や運動員買収を認定しやすいでしょう。というのも、これは、あらゆる事件においていえることですが、当事者が自分にとって不利になる(この場合、運動員買収に当たる、企画立案とか、戦略を練るとか、報酬を受けて行ったと、そういう標榜をすること)言動をしていた場合は、基本的に、それは信用できる、ということがあります。刑事裁判でもこういう証拠は特別に強力な効果が与えられています。あえて自分に不利な嘘はつかない、有利な嘘はつくことがあっても、ということです。この話は、拙著、「弁護士が教える「ウソ」を見抜く方法」でも触れています。
(・∀・)以上は、現行の裁判所や総務省の考え方、そして、一般的な事実認定について、法曹一般が考える基本を冒頭のテーマに沿って解説したものです。具体的事件への適用については、法曹等専門家に相談するなど、ご検討ください。
まとめ
選挙運動は、無償(選挙運動無償の原則)でなければなりません。
1は、つまり、投票だけではなくて選挙運動もお金で買えない、ということを意味します。
選挙運動は、投票を得させるために有利になる行為をいいます。その判断は難しいです。
3について、裁判例上、裁量があれば、これに該当するとするものがあります。電話かけも、いつ電話を切るかの判断があるから、裁量あり、とされています。
選挙運動にお金を払ったかは、名目ではなくて、実質的に判断されます。お金の動きであるとか、どこまで主体的に関与しているとか、そのあたりが問題になるでしょう。
違反の制裁は、懲役刑などの刑罰、公民権停止や当選無効といった重いものです。最近、運動員買収は、おそらく最も多い選挙違反の類型です。