2018年の主要な訪日インバウンドデータをグラフにまとめてみた(前編)
結.JAPAN(ユウドットジャパン)の府川です。突然ですが、2020年の東京オリンピック開催まであと1年ほどになりました。徐々に盛り上がりを見せるオリンピックですが、その話題に紐付いて必ず語られる話題があります。
それが「インバウンド(訪日観光客)」です。
正確なデータが知りたければ、日本政府観光局(JNTO)や観光庁が統計データを丁寧にまとめているため、下記のURLをクリックすれば大体の訪日インバウンドに関するデータについて把握することが可能です。
▼訪日外客統計|統計・データ|日本政府観光局(JNTO)
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/index.html
▼訪日外国人消費動向調査 | 統計情報 | 統計情報・白書 | 観光庁
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html
・・・ですが、実際にクリックしてみると、「どこの何を見ればいいかわからない!」という事態に陥りがちです。(そもそも訪日インバウンドのデータなのに、なんで1つの資料にまとまってないの!と思う人も多いはず。)
今回は、訪日インバウンドのデータについて知りたいけど、全体を把握するにはハードルが高いと悩んでいる方へ、2018年の訪日インバウンド状況が一発でわかるよう、訪日インバウンドの主要なデータをまとめてみました。
前編では、訪日インバウンド市場の全体感を把握できる4つのデータについて解説していきます。
後編では、訪日インバウンド対策をするにあたって必要な5つのデータをご紹介します。
◆データその1:年間の訪日外国人数
年間の訪日外国人数は、国際観光の盛り上がりを示すもっとも分かりやすい数値であり、当然重要なデータです。(呼び方は「訪日外客数」「訪日旅行者数」や「外国人旅行者数」など多数あります。)
その目標は日本政府によって設定されており、現時点で2020年に4000万人、2030年に6000万人とされています。
では、目標に対する実数の達成状況がどうなっているかと言うと、2018年の1年間でおよそ3100万人が日本を訪れています。2013年におよそ1000万人程度だった訪日外国人数が、この5年間でおよそ3倍に成長しているのは国として大きな成果ではないでしょうか。
とはいえ、2020年に4000万人に達成するのはあと2年で900万人増加が必要という状況であり、2030年の6000万人という目標達成のためにもさらなる訪日外国人数増加が求められています。
訪日外国人数は増加傾向であり順調なように見えますが、残念ながら2018年の増加数は低く推移しています。2015年に600万人以上増加した訪日外客数ですが、2018年はおよそ250万人程度の微増でした。この結果を踏まえて、日本政府観光局(JNTO)からも2020年の4000万人達成は難しいという見解が出ています。
誤解しないでほしいのですが、これらの結果や見解は決してインバウンドの衰退を表しているわけではないと私は考えています。
では、どう考えているのかというと、
これまでは訪日外国人が少なすぎたために、深い戦略がなくとも簡単に増加させることが出来たということの表れだと思っています。
◆データその2:世界の海外旅行者数
インバウンドが衰退していない裏付けとして、国際観光客到着数(=全世界の海外旅行者数)はこの20年間で大きく増加しています。
国連世界観光機関(UNWTO)が毎年発表している「Tourism Highlights」によると、2017年の国際観光客到着数は13.3億人とのことです。
将来性についても2030年に全世界の海外旅行者が18億人まで増加するという予測を同じくUNWTOが出しています。このような中で、もはや海外旅行そのものが一時的なブームではないことは明らかです。
全世界で見ると、これほどまでに海外旅行者が増えているにもかかわらず日本へ訪れる人があまり増加していないのはなぜか?それは常に増加し続ける海外旅行者のシェアをどう獲得するかの議論の不足によって、戦略的なコンテンツ開発やプロモーションが取り組まれていないことではないでしょうか。
世界的に海外旅行の可能性がこれだけ示されてるにもかかわらず、訪日インバウンドの可能性を信じないのは非常にもったいないです。
◆データその3:年間のインバウンド消費額
訪日外国人旅行消費額は、その言葉の通りインバウンド観光客による消費額の合計です。そもそも、訪日インバウンドが注目されている最大の理由は、少子高齢化の影響による国内経済の縮小を国際観光の外需でのカバーが期待されているためです。日本経済へのインパクトを直接示すのは消費額であり、訪日インバウンドの目的と言える非常に重要なデータとなります。
訪日外国人旅行消費額も、日本政府によって目標が設定されており、現時点で2020年に8兆円、2030年に15兆円とされています。8兆円は2015年時点から2倍超、15兆円は2015年時点から4倍超の数値であり、挑戦的な目標設定です。日本政府が訪日インバウンドの経済的インパクトに非常に期待をしていることが推察できます。
ですが、目標に対する実数の達成具合は、かなり難航していると言っていいでしょう。2018年の年間消費額は4兆5000億円程度でした。これまでの成長具合を踏まえると、目標の8兆円を達成するにはかなりの挑戦が必要です。
ちなみに、2018年の集計から集計方法が変わっており、観光庁によると従来ベースの推計方法で推計すると4兆8000億円となり、新旧の集計方法でおよそ3000億円程度の乖離が存在するので要注意です。
◆データその4:1人あたりの旅行支出
消費額の計算式は「人数」×「1人あたりの支出額」です。そのため消費額を増加させるためには、人数と並行して1人あたりの支出額の増加にも注目して集中的に取り組んでいかなければなりません。
ぜひ成長させたい1人あたりの支出額ですが、残念ながら近年は横ばいに推移しています。2018年の訪日外国人(一般客)の1人あたり旅行支出は15万程度であり、この3年間は15万円の壁を脱せていません。
日本政府が掲げる2020年に訪日外客数4000万人で消費額8兆円という目標を達成するためには、1人あたりの旅行支出が20万円を達成していることが必要です。そのため、旅行中に現状からプラス5万円使ってもらうにはどうすればいいか?を考えて、15万円の壁を乗り越えることが日本経済へのインパクトを大きくするために重要となります。
◆まとめ
・訪日外国人は年々増えており、2018年は3000万人を超えた
・戦略的に取り組めばインバウンドは間違いなく成長する。
・現状から、プラス5万円を消費してもらうことが必要。
◆書いた経緯と後編について
今回なぜnoteを書こうと思ったかというと、もっとインバウンドのことを深く理解する人が増えてほしいという思いがあったからです。
私は仕事では、結.JAPAN(ユウドットジャパン)というスタートアップにてインバウンド向けの戦略設計に取り組んでいます。
▼インバウンド向けの戦略設計サービス「インバウンドフォース」
https://you-japan.co.jp/ibf/
インバウンド担当者の方が共通して抱えているのが、「そもそもインバウンド対策になにから取り組めばいいかわからない」という悩みでした。
そこで、このnoteを読んだあなたにお願いです。あなたの周りで観光領域に従事している方がいましたら、ぜひこの記事をシェアしてください!
後編はこちらです。訪日インバウンド対策をするにあたって必要な5つのデータをご紹介します。前編と後編を合わせて読めば、インバウンドについて基礎的なデータが身につくと思います。