6/13,14 幌延深地層研究センター 社会科見学レポート


幌延深地層研究センター 見学に行って来ました。
原子力発電所で出る高レベル放射性廃棄物を地層処分するための実験施設の一つである。
もう一つは岐阜県の瑞浪市にあり、瑞浪の方は、地質が花崗岩でマグマが冷え固まった固い地層、幌延の方は、珪藻土などからできた泥岩で、日本は大きく分けるとこの2パターンの地質ということで2箇所の実験施設が設けられている。
高レベル放射性廃棄物は、ウランや、プルトニウムなどの使用済核燃料を最処理した際に、使えなくなった廃液だけを抽出したもので。計算上は、人一人が一生のうちに出す廃棄物は200gほどとのこと。
廃液はそのままではとても高温で放射能が高いので、ガラスと混ぜて固化体にする。色ガラスと同じ原理で、5パーセントほどならば、ガラス結晶は安定するとのことで500グラムの高レベル放射性廃棄物を500キログラムのガラスと混ぜて閉じ込める。それをオーバーパックという金属で覆う加工を行い、30年から50年ほど、温度が100度に下がるまで、冷却管理をする。その役目を担っているのが、青森県六ヶ所村の再処理工場である。現在住民の9割は工場に賛成で、工場が継続稼働するためにも原子力発電には肯定的であるとのこと。
100度まで下がったガラス固化体の高レベル放射性廃棄物はベントナイトという水分を吸収すると膨張する性質をもつ粘土の緩衝材でさらに覆い、地下300mよりも深い岩盤の中に埋めるとのこと。これが地層処分のおおまかな流れである。ちなみにベントナイトは猫のトイレの砂と同じものである。
500gの廃液は最終的に30tの廃棄物へと加工され、地化に埋められる。2017年現在で日本国内には、ガラス固化体にして約25000本の高レベル放射性廃棄物が存在するそうだ。
処分方法は長年国際的に検討され、宇宙へ投棄する、海へ投棄する、地上で保管するなど様々な案が出されたが、火山や断層などは数万数十万年単位では変化しないこと、地震が起きても地下ではそれほど揺れないことから地層処分が採用された。
幌延はあくまで実験場で、条例により、実験が終わったら、500m掘られた坑道は埋めること、実験中も高レベル放射性廃棄物は持ち込まないことが決まっているのであと数年し、500mまで掘られ、様々な実験が完了したら埋め戻される。実際に地層処分する場所はまだ決まっていない。
今回のツアーは、大浦さんと成田さんが企画し、札幌オオドオリ大学主催の事業として行われたものに参加させていただいた。東北大学名誉教授で、長年、原発の研究に携わり、2000年代から賛成派、反対派の立場を留保した市民対話の場を、根気よく続けてこられた北村正晴さんの講演を含めた、振り返りワークショップも行われた。北村先生は、賛成反対を掲げるのは分裂を産むだけなのでそれはやめましょうとのことなので、どこか心の片隅にはいつもモヤモヤが張り付きつつもツアー中は、僕も賛成反対については意見は述べず、参加した方々全員そのような態度を貫いていた。北村先生の講演は経験と先人達の知識とに裏付けされ整理されたものでとても勉強になった。趣旨としては、専門家や政府だけでは原子力発電などに代表される科学技術の運用は決められない時代になっているので、これからは市民参加がとても重要になるというものと。原発に限らず、科学技術に関わる不祥事や問題は増える一方なので、技術全般の問題として捉えるべきである。の二点だったと思う。
その中で物理学者の寺田寅彦の言葉を引用した箇所が印象的で、要約すると、技術が進歩すればするほど、逆に自然災害から人間が受けるダメージは大きくなっていく、というものだ。
今回の坑道見学の感想としては、とにかく大きな墓のようだと感じました。古墳、古くないからニュー墳だ。ガラス固化体になり緩衝材に覆われた高レベル放射性廃棄物も石碑や墓跡のようだとしか言いようがなかった。人類の歴史が猿人から含めると30万年で、この先10万年埋めていかなければならない。完全に現人類の尺度を越えています。
北村先生の講演で市民参加が重要であるという話が出たが、もちろんとても重要であることは同意するのだが、そこでの議論はどうあがいても、今生きている人の都合でしか考え及ばないことだよなと僕は思ってしまう。市民という枠組みで思考できる範囲ではそもそもないんじゃないかという疑問ばかりが浮かんできました。
原発推進するには、理屈としては「市民反対」の立場をとるしかないんじゃないか笑
市民参加の議論では、現在進行形の経済上の都合でしか答えを出すことができない点に限界があり、まさに、埋葬や信仰の領域で向き合っていかないと受け止められないんじゃないかと感じました。
今回の事業のスポンサーは一般社団法人日本原子力文化財団で、そもそも原子力発電や、その処理の現状をなかなか国民に知られていないということで、こうした知ってもらったり、議論したりする活動に対して助成を行っているそうです。大変貴重な機会を与えていただきとても感謝です。ありがとうございました!
しかし、こうした対話の活動を行ないながら、結局経産省や政府は原発を今もどんどん推進している変わらない現状は果たして対等なのか?とモヤモヤは消えないままではあるのです。

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