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日本酒ベンチャーが冷蔵倉庫で酒蔵を建てるわけ


こんにちは。「HINEMOS」という日本酒を展開している酒井です。

時間をコンセプトにした日本酒で、8銘柄を展開しています。

この度、クラウドファンディングのMakuakeにて、愛知県の森山酒造とタッグを組み、小田原に移転、そして酒蔵を新設するプロジェクトを発表しました。

プロジェクトの概要は長文となりますが、お読みいただけたらとても嬉しいです。7月末まで行っております。

こちらの記事では、プロジェクトの中でもベンチャーらしい取り組みだなと(個人的に)思っている、冷蔵倉庫の中でなぜ酒蔵を立ち上げるのか、という点について深堀りしてみたいと思います。

日本酒は歴史があるため木造建築の酒蔵が一般的です。1,200蔵ほどあるといわれる蔵も95%ほどが木造建築といわれています。

日本酒はおおよそ11月から4月までの冬の間にお酒づくりを行います(寒造りと呼ばれます)。酵母や麹といった微生物を扱うため、気温が低く雑菌が繁殖しづらい冬の間に集中してつくる必要があるためです。

残りの5%ほどが大手になるのですが、冷蔵建物の中で、冬の気温を再現して年間を通してお酒づくりをおこなっています(四季醸造と呼ばれます)。

今回、「冷蔵倉庫で酒蔵をたてるわけ」はこの四季醸造を実現するためです。

何気ないひと言でスタート

われわれが酒蔵を建てる小田原は首都圏へのアクセスや高速道路の立地がいいことから物流拠点が多く、Amazonの物流倉庫も小田原にあります。

冷蔵倉庫は近隣に多くあり、日頃からお酒の保管や配送作業を行う場所としてお世話になっていました。

移転後酒蔵・冷蔵倉庫外観

そんな中、お酒が保存されている冷蔵倉庫で、杜氏(醸造責任者)の湯浅さんが何気なくいった一言が、気づきになりました。

「この冷蔵倉庫の中で酒造りができたら、最高ですね。」

一瞬ときが止まりました。でも次に思ったのは「できるんじゃないか・・・?」と思ったのを覚えています。

そこから冷蔵倉庫の中で四季醸造を実現するプロジェクトがスタートしました。

四季醸造のメリットですが、大きく3つあると思っています。

1. 働く時間がコントロールできる

弊社は、2018年8月に創業してもうすぐ3年が経とうとしています。この間の3期、委託醸造(OEM)にてお酒をつくらせていただいていました。

初年度わたしも麹をつくる麹室(こうじむろ)を担当して、全ての工程に携わったことで、朧気ながら日本酒の全体像を把握してきました。

杜氏の湯浅さんと二人三脚で造りに入らせていただいたのですが、湯浅さんは半年間帰宅されていませんでした(奥さんは家にいらっしゃった)。

麹菌は繊細であり、緻密な温度管理が欠かせません。用いていたのは伝統的な木造建築の麹室であり、温度調整を自動で行う製麹機(せいきくき)などはないため、湯浅さんが人力で温度管理をする必要がありました。

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3時間おきに温度チェックをするため、深夜0時、3時、6時とその度に起きて温度管理を行います。温度が低ければヒーターを強めたりします。

その他にも気温が影響する工程は非常に多く、それが働き方にもかかわってきます。

微生物を扱う難しさ、伝統的な技術に対する畏敬、そういった感情もありながら、一方でこれでは持続性(サスティナビリティ)に懸念がある、と思ったのも事実です。全国の酒蔵が毎年30蔵、廃業されている理由も人手不足もさることながら、働く時間も関係していると思っています。

このときがきっかけで、違うモデルは作れないだろうかと思っていました。

もし冷蔵倉庫の中で、室内を一定に保つ温度管理ができたならば、温度変化によって、ヒーターを効かせたり、氷を用いて冷やしたりするこもなくなります(厳密には氷は使いますが、工程が削減できる場面は増えます)。

わたし自身、2年間、冷蔵倉庫の中で物流業務をはじめ、何かしら作業をしていたので、体感的にも12月くらいの温度かな、という印象で、冷蔵倉庫(5度です)の中に居続けることもさほど苦ではなかったため、実現は可能なのではないかという実感をもっていました。

冷蔵倉庫内・配送など作業風景

2. 需要予測の難易度が高い

日本酒の製造サイクルは冬(11-4月)に造って、夏から秋にかけて(5-11月)販売するのが一般的です(もちろん冬の間も販売しつづけます)。

毎年、ある程度決まった製造量をつくる、と決まっていれば問題ないのですが、日本酒スタートアップを謳っているわれわれは急成長を目指しています。なので、初年度7,000本、2年目30,000本といった形で毎年製造量を増やしてきました。

ここまでは翌年どれくらい製造しようか、というアスピレーション目標でよかったのですが、昨年末に製造した飲み比べセット約1万本が一瞬で売切れてしまったことで、この需要予測の難易度の高さを思い知りました。冬に造って、夏〜秋まで販売していく予定が、春の手前で在庫が切れてしまいました。これには頭を抱えました。

委託醸造(OEM)なので、ある程度、事前に原料であるお米を確保(半年前)をお願いしてますし、また製造スケジュールも、製造は委託先のブランドがメインとして、当然造られますので、急に製造量を増やすお願いするのも難しい面がありました。

需要に応じて、製造量をコントロールできることは(他の業界では当たり前かもですが)、さまざまなメリットを生みます。

お客さまの声を反映できる

弊社はオンラインの販売が9割を占めますが、お客さまと直接会話するために、今まで数十回試飲会などのポップアップを行ってきました。このときの会話から、ヒントを得て製造に活かすことが頻繁にあります。

例えば、1年目に製造したSHICHIJI(7時)が若干甘すぎるという声が多かったため、2年目の製造はガス圧を上げて、ドライ感を出すように都度調整を行ったりしています。

ただ、7月にお声をいただいても、次の製造は11月からなので、実際にお声を反映するのはかなり先になってしまいます。折角ならすぐに試して、またすぐ試飲いただきたい!という場面がよくありました。

これが毎週毎月お酒が造れるようになると、5%の低アルコールなら10日間ほどで味の改善に繋げていくことができます。

また、弊社はギフトの需要が多いのですが、昨年、クリスマスは限定ボトルを出しました。それが今回、毎月つくれることで、たとえば母の日、父の日など、そのときのイベントに応じて都度、オリジナルのお酒やボトルが製造できるようになります。つまり、商品開発力をより磨くことができるようになります。

労働時間のコントロール需要予測の精度を高める商品開発力を高める

この3つが改善できることは大きなメリットです。

今回、建物はまるだい運輸さまのご厚意が非常に大きくて、給排水などの水道工事、200Vを通すための電気工事など、自由に改築させていただきました。

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実際に造りをはじめると、また色んな課題がでてくると思いますが、ベンチャーらしくひとつひとつ解決していきたいとおもっています。まずは、冷蔵倉庫で四季醸造を実現していきます。

最後になりますが、今回の取り組みは大きな投資を伴っています。醸造設備、改築工事はもちろん原料や資材、新たな雇用を含めて、億を超える投資額になってきます・・・

6月11日にクーリングタンクが届くのですが、ご支援いただいた方のお名前をタンクに印字をするリターンも用意しております。クリエイティブディレクターが描きます。よかったらご支援いただけたら嬉しいです!

あと絶賛採用も行っておりますので、よろしければ。

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