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懲りない酒吞みたち
「僕たちみたいに酒が強いとなかなか酔えなくて困るよね」
「カシオレとか何杯飲んだら酔えるの(あんなの一生酔えないよね)?」
0次会と称した立ち飲みバー。すでにほろ酔いなのでは?という様子でこう豪語していた男は今、私の前で吐き気を催している。
――いい加減にしてくれ。
心の底からそう思いながら、全力で彼を店のトイレに押し込んだ。
***
「日本酒の会」という名称で、職場の若手の日本酒好きが集まったこの会は今回で3回目。私も含めた女性3名と男性が1名の計4名で構成されている。
1回目は女性のAさんと男性Hさんが酔いつぶれて2軒目で爆睡。2回目はAさんが泥酔して道路で寝たり吐いたりで朝まで外で介抱。そうして迎えた3回目がこれである。
しかも今回はHさんを介抱しながら女性のOさんも飲み続け、結局爆睡する酔っ払いと化した。元気にしているのは前回の反省を生かしたAさんと私だけだ。
――職場の関係じゃなければこんな会には二度と参加しないのに。
毎回必ず介抱役になる私は嫌気がさすばかりだ。
酒吞みには数種類のパターンが存在すると思う。お酒自体が好きな人、食事との組み合わせを楽しむ人、ストレス発散の場とする人。
でもこの歳になって初めて、「酔いつぶれるまで飲まないと飲んだと思えない人」という、迷惑千万なパターンを知った。
しかも、悪いことに、本人たちは酒に強いことを自負していて、後先考えずがぶがぶと酒を飲むのだ。酒好きと自称していてうんちくを垂れているが、どこまでしっかり酒を味わっているのか聞いてみたいものである。
毎回飲み会後に職場で会うたびに、謝られ、反省の念を聞かされる。それに対して私は「大丈夫ですけど、今度からは気を付けてくださいね。」と苦笑いで答える。
――30歳近い(超えている人もいる)のだから、いい加減学習してくれ
と、思いながら。
私にとっての吉報は、今後一時この会が開催されないであろうことだ。
男性Hさんが晴れて父親になり、女性Oさんは転職をすることになった。本来であればさみしく思うところだが、正直ほっとしている自分がいる。私は冷たい人間だろうか?
もちろん私も酒を飲むことが好きな身として、少々の粗相は経験している。羽目を外したくなる気持ちも分からなくはない。しかし、物事には限度がある。仏の顔も三度までとはよく言ったものだと思う。
最近では学生の酒離れが進んでいると聞く。これまではもったいないことだと感じていた。しかし、今回このような経験をして、それも仕方がないような気がした。きっと酒の飲み方も知らない大人や先輩たちの様子を見て、「あんな面倒くさい人間にはなりたくない」と思うのだろう。
酒は飲んでも吞まれるな。彼らにアドバイスするつもりはない。どんどん人が離れていくことで、いずれ気付くのだろう。それとも、類は友を呼び続け、いくつになってもあの醜態を世にさらし続けるのだろうか。
どちらにせよ、私はこれ以上関わりたくない。
今後は、落ち着いた空間でゆっくりとおいしい食事と酒をたしなみながら、日頃出来ないような深い話をする飲み会に参加したいものだ。