新型コロナシリーズ㉑「コロナ罹患後、タイムラグでやってくる免疫性肺炎」
初発時のウイルス性肺炎
COVID-19は、SARS-CoV-2に
よる急性ウイルス感染症として
始まる。
体内のACE2受容体がコロナ
ウイルスの標的受容体で、
ここから侵入して細胞内で
増殖する。
ACE2受容体は、
鼻腔、
咽頭、
喉頭
の上気道粘膜に多く存在する
ため、初発時の感染経路は
上気道から始まり、やがて
下気道へと広がり、
呼吸器感染症となる。
そのため、気道の炎症浮腫
となり、上気道の激しい
疼痛、
咳嗽、
嗄声、
などの症状を
引き起こす。
肺において、ACE2受容体
は、肺胞Ⅱ型上皮細胞に
発現しているので、この
細胞が攻撃を受けると
サーファクタントの産生
に影響を及ぼし、その結果
肺嚢胞が虚脱し、間質性肺炎
を引き起こす。
では、どのような診断方法が
あるのか?
➀「PCR検査陽性」
➁「SPO₂の低下」
③「胸部CT所見でのすり
ガラス状陰影」
の3徴候が揃えば、
「ウイルス性肺炎
(SARS-CoV-2
間質性肺炎)」
の確定診断となる。
とは言え、早期に適切な
ステロイド投与をすれば、
速やかに改善する、
と考えられている。
タイムラグでやってくる免疫性肺炎
一般に、再発例ではSARS -CoV-2
検査では陰性となる。
これは、患者の体内からウイルスが
消失している状態である。
上気道の疼痛はなく、
気道閉塞も伴わず、突然、
咳嗽、
息切れ、
で発症する。
さらに、肺病変が急速に広がり、
O₂とCO₂のガス交換ができなく
なり、呼吸困難となる。
初発時の間質性肺炎よりも重症度
が急速に進行するので注意が必要
である。
肺胞における病巣の拡大は、免疫
の二次応答であるため、加速度的に
進行する。
このようなサイトカイン・ストーム
が発生するような免疫介在性炎症性
反応は、初発からかなり時間が経過
しているので、組織に湿潤している
細胞は、未熟なTリンパ球から成熟
リンパ球に置き換わっている。
さらにBリンパ球も加わって、ステ
ロイドに抵抗性を示すため、高用量
のステロイド・パルス療法が必要と
なる。
本来、人間が保持する免疫システム
は、感染症を治すことを目的に機能
するが、重症例では、それを通り越
して自己の組織に障害を与える自己
免疫疾患に変貌する。
即ち、サイトカイン・ストームの
発生は「諸刃の剣」で、一方では
ウイルスの増殖を抑制・消滅させ
るが、他方では患者自身の組織に
障害を与える自傷行為となる。
しかし、考え方を変えてみれば、
免疫応答があるということは宿主
にとって回復できるチャンスで
あり、このサイトカインストーム
という嵐を制御できれば、病状は
速やかに回復するのである。