【レビュー】20年の時を越え新たな歴史が紡がれる ブリガンダイン ルーナジア戦記
※個人の見解です。ネタバレ無し。購入検討の参考になれば幸いです。
本作は1998年に発売された「ブリガンダイン-幻想大陸戦記-」および同作のリメイク版にあたる「ブリガンダイン-グランドエディション-」以来20年振りのブリガンダインシリーズ最新作。
ファンタジーな世界観の中で、多様な騎士やモンスターを操り大陸統一を目指す国取り型SRPG。なお、世界観は過去作から一新されており、本作から始めても全く問題ありません。
ちなみに筆者も過去作をプレイしたことはありません。シリーズ初体験のプレイヤー目線でのレビューとなります。
シミュレーションゲーム初心者にもオススメしやすいシンプルで奥深いシステム
国取り型SRPGというとなんとなく複雑そうなイメージを持つ方もいるでしょうが、本作は限りなくシンプルなシステムとなっています。
やることと言えば各キャラクターにモンスターを配属して、移動させ、戦闘して勝利を目指す、出番の無いキャラクターは新人採用やアイテム集めをさせる、これだけ。
内政や外交などの概念は存在しない為、常に戦闘のことのみを考えていれば良く、気楽に遊べるし、長時間プレイしてても疲れにくいのでまさに初心者にはうってつけなのです。
また把握しなければいけない情報が絞られてるので、プレイ期間が空いても再開しやすいのもプレイ時間が長くなりがちな本作には嬉しいところ。
では、こういったタイプのシミュレーションゲームに慣れている人は物足りなく感じるか、というとそんなことはありません。
私自身内政要素が好きで、当初は「信長の野望」的なものを期待していたため、政治要素が無いことに最初はやや物足りなさを覚えました。
しかし、だんだんと誰をクラスチェンジするか、限られた戦闘機会の中で誰にどれだけ経験値を与えるべきかといったことの面白さに気付くと、どちらかというと「ファイアーエムブレム」のような、中長期的な育成の面白さが本作の本質なのだとわかると思います。
育成システム自体も秀逸で、深く考えなくても攻略に支障はでないものの、こだわろうとするとどこまでもこだわれる作りになっており、初心者には遊びやすさで、上級者にはやり応えで応えてくれる懐の深さが魅力的でした。
ちなみにですが、ゲームバランスも良好でした。この手のゲームにありがちな、特定のキャラや職種が強すぎて偏った編成になるようなことはなく、多少の差こそあれどほとんどのモンスター・職種に一定の使い途があって良かったです。(男僧侶だけはちょっと厳しいけど・・・)
実績あるクリエイターによる迫力のグラフィックやサウンド
本作のアートおよびキャラクターデザインは風間雷太氏。サウンドは佐藤天平氏が担当。いずれも実績あるクリエイターで、ゲームファンにはおなじみの名前ではないでしょうか。
ご存じない方のために説明しますと、風間氏はSEGAの「戦国大戦」や「ボーダーブレイク」などで有名な方。ちなみにですが、前回取り扱った「ゼノブレイド」のキャラクターデザインにも携わっています。
繊細に書き込まれた美麗イラストで、多種多様な武器防具、ルーナジア大陸の雄大な自然など本作の世界観が表現されていますし、100人以上もいる騎士達一人ひとりのグラフィックは全て個性的かつ魅力的に描かれています。
佐藤天平氏は「魔界戦記ディスガイア」など多くの日本一ソフトウェア作品を担当されているほか、前述の「ブリガンダイン-グランドエディション-」でも音楽を担当されていました。
各国ごとに専用のBGMが用意されているのですが、それぞれの国の特色にマッチした楽曲となっており、大変クオリティが高いです。曲単体として強烈なインパクトを残すというよりも、長時間プレイすることを想定した、いい意味で邪魔にならない、没入感を高めるものであるという印象。
個人的にはミレルバ諸島連邦のテーマ「Mirelva」がお気に入りです。
ハピネット公式でyoutubeにアップされていますので、興味のある方はぜひ試聴してみてはいかがでしょうか。
シナリオ部分については物足りなさも
先に申し上げておきますが、世界観設定は細部まで充実しています。各国の歴史や文化、各騎士の細かなバックボーンなど、一つ一つ丁寧に描かれている印象を受けます。
ただ、量がとんでもないことになるので理解は出来るのですが、騎士が100人以上いるが故に埋没してしまっているキャラが何人もいます。一部の脇役騎士はちゃんとした設定をもらっているのにも関わらず、全くシナリオに関与しません。
せっかくこれだけのキャラ数がいて、しっかり設定まで作ってあるのですから、活かせていないのはもったいないように感じました。
また、国と国との戦争をしているというのに一部シナリオが明るすぎる、軽すぎると感じることがあり、具体的には初心者向けであろうノーザリオやシノビでそれが顕著でした。
ちょうど難易度の低い二国のシナリオがこういった仕上がりな一方で、グスタファやマナ・サリージアといった難易度が高めに設定されている国ではむしろ重苦しいシーンも多くあったので、もしかしたらライト層を狙って意図的にやっているのかなと推測していますが、だとしたら逆効果になったと思います。
一見明るいシナリオの国と暗いシナリオの国がバランス良くあるので悪くないように見えますが、大体30時間かかるシナリオを一つずつクリアしていくことになるので、明るい一辺倒のシナリオが30時間続くことになり、だんだん辛さを感じるようになりました。
要するに、明るいシナリオ、暗いシナリオをそれぞれ用意するのではなく、一つのシナリオ毎に展開に明暗や緩急をつけて欲しかったです。
最後によく言われている統一後の展開についてですが、確かに唐突さや蛇足感は否めないものの、勝てば勝つほど相手が弱くなり自分が強くなる国取型ゲームですので、育ち切ったキャラクター達をぶつける相手が用意されていること自体はとても良いことだと思います。
この辺りは本編でもう少しその後の展開に対するフォローを入れてあげるか、統一後のシナリオをもっと充実させるなどすればここまで言われることも無かったのではないかと。
チャレンジモードについて
最後にメインモードとは別に用意されているこちらのモードについて。
全ての国から好みの10名を初期メンバーとして自由に選び、統一を目指すのですが、所謂フリーモードではなく、いかに手際よく統一を進められるかで点数が付けられ、クリアまでに何点稼げるか、というスコアアタック要素も加えられています。
また、難易度がハード固定で攻略が進むごとに敵のレベルに補正がかかるので、本編よりはるかに厳しい戦いを強いられる慣れたプレイヤー向けのモードとなっています。
このモード、滅ぼしさえすれば敵国の君主も配下にできるので、国を越えて本編ではありえない組み合わせを楽しめる点はとても魅力的ですしこのモードのみ使用可能な隠しキャラも何名か用意されています。
問題はスコアアタックの要素、スコアが加算される条件がいまいちゲーム性に即していないように感じました。
具体例を挙げると、「複数拠点の同時制圧」「相手の〇〇%以下の戦力で勝利」「1部隊で勝利」あたりでしょうか。
わざわざ同時侵攻の為に待たなければいけないターンが発生したり、意図的に不利な状況で戦わなければいけなかったり、縛りプレイを強要されているような感覚でした。
どのように攻めるか、守るか、といった要素が全てプレイヤーにゆだねられているのが国取り型シミュレーションの大きな魅力だと思いますので、ここに制限をかけられるのは不快感を感じます。
無視すればいい、と思うかもしれませんが、スコアは隠しキャラやトロフィーの条件にもなっているので、最低一周はこのスコアを稼ぎながらプレイする必要に迫られます。そして繰り返しになりますが、一周30時間はかかるのです。
せっかく好きな騎士を自由に選べるのに、別の部分で自由度を失ってしまってもったいなさを感じました。
長所
・遊びやすさとやり応えが両立されたシステム
・グラフィックとサウンドは抜群
・世界観や人物の設定が良く練られている
短所
・キャラクター数を活かしきれていない
・シナリオのバランスが悪く退屈
・何度もプレイしたいとは思えないチャレンジモードのスコアアタック
総評
長年ゲーム業界の一線から退いていたハピネット復活の狼煙となる本作。シミュレーションに興味のある方であれば、初心者にも上級者にもおすすめできるゲームに仕上がっています。
主に長いプレイ時間との噛み合わせが悪いことが要因となった問題点はいくつかありますが、各要素の魅力はそれを補うに余りあるものです。
評価・・・8/10
※IGNのガイドラインを基準としています。
余談
ニンテンドーダイレクトで本作が発表された際、何よりハピネットからゲームが出る、ということ自体が驚きでした。
バンダイナムコ系列なのは知っていましたが、中間流通業のイメージが強く、まさかフルプライスの自社オリジナルタイトルを、ダイレクトの場で出してくるとは思ってもみなかったです。
調べてみるとかつてゲーム事業から撤退した後、2013年ごろから小規模タイトルを中心に事業を再開、コネクションやノウハウ作りをしてやっと開発開始・発売にこぎつけたとのこと。
しかもプロデューサーの五十嵐氏がハピネットに入社して以来、ブリガンダインの新作開発に携わるのは20年越しの悲願だそうで、その熱意には感じ入るものがありました。
一ゲーマーとして、是非今後も応援していきたいと思います。