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【オメガバース小説】犬のさんぽのお兄さん【第140話】
【地方都市×オメガバース】オメガでニートの園瀬梓は、T中央公園を散歩中に謎の長髪イケメンアルファ(ダサい臙脂のジャージ姿)に出会う。その瞬間、ヒートが起きて運命の番だと分かり——!?
そうしてシャーリー文具館のロゴが入った袋を提げて、俺達は来た道を戻った。途中コンビニに寄りたいと言うと、「おやつはパントリーに沢山あるから駄目だ」と言って止められたから残念だった。
「やれやれ、どうして文房具屋に行っただけでこんなに疲れるんだ……」
「体力不足じゃない? いや、えっち不足、欲求不満かも!」
「それは確かにあるな」
「認めるんかい!」
家に着き重厚な木製のドアを開けて中に入ると、大きなため息を吐いた京一郎がぼやいた。それに傘立てに傘を差しながら応えたら、意外な答えがあったので俺は素っ頓狂な声を上げた。
「しかし、臨月の妊夫に手を出せないからな……」
「絶倫えっち我慢出来ないマンの京一郎きゅんが、えっちするのを我慢している! これはビデオに撮って保存しとかないと……」
「保存しなくて良い!」
京一郎は俺の冗談に眉を寄せて応え、フンと言うと洗面所へ手を洗いに行った。俺はそんな彼を追い掛けながら、はたと気付いて足を止める。
「そういや、りょーちゃんを産んだ後は一年位えっち出来ないけど、京一郎きゅんはどうなるんだ……!? 浮気はしないって信じてるけど、そのせいでえっちしたい欲が溜まり過ぎて脳味噌が爆発するんじゃ……」
「あずさー? 何を言ってるんだー?」
悲惨な想像をして真っ青になっていると、奥の洗面所から京一郎が聞き返した。どうやら、手を洗う水音で何を言ったか聞こえなかったらしい——だから俺は大声で「京一郎きゅんの脳味噌がボーンッ! ってなるかも知れないんだ!」と叫んだ。
「脳味噌がボーン? どういうことだ」
やや立ち直って洗面所に行ったら、既にキッチンに移動していた京一郎が顔を出して尋ねた。だから俺はきちんと手を洗った後、彼の方へ行き大慌てで説明する。
「京一郎きゅんは絶倫えっち我慢出来ないマンの癖に、俺がりょーちゃんを産んだ後は一年はえっち出来ないだろ!? そうしたら性欲が溜まり過ぎて脳味噌が爆発するんだ!」
「何を言っているか分からないが、性欲のせいで脳味噌は爆発しないから安心しろ」
「そりゃ、物理的にはそうかも知れないけど、中でシナプスが減り捲って若年性認知症になるかも知れない」
「何でそこだけ医学的なんだ……」
真剣な顔でぶつぶつ言っていたら、京一郎が不気味そうな表情で突っ込んだ。しかし結構深刻な問題なので、珍しく俺は真面目に相談を始めた。
「京一郎きゅん、最初の数ヶ月はそれどころじゃないかも知れないけど、我慢出来なくなったら言ってくれよな。手で手伝ったり、おっぱいを揉ませてあげたりすることは出来るから……」
「お気遣いありがとう。しかし俺は、運命の番であるお前と出会うまで自己処理だけで生き抜いて来たからな。一年位余裕で我慢出来る」
「す、凄い……流石、プロフェッショナルだ。流儀とかありそう」
誇らしげにそう言った京一郎を、俺は尊敬の眼差しで見つめた……。
そんなこんなで一悶着? あったが、夕食を作るまでの間に先程購入したペンでおっぱいにメッセージの試し書きをすることになった。
「でも良く考えると、変な落書きをした後にりょーちゃんが生まれそうになったら困るよな。せっかくのお写真が台無しになってしまう……」
「おお、良く気が付いたな。あずさにしては上出来だ」
「だろ! だからう◯このイラストを描くのはやめるわ……」
「それは本当に良かった」
ソファに腰を下ろした俺はTシャツを脱ぎながら、はたと気付いてそう言った。すると、そのことには初めから気付いていたらしい京一郎がホッとした様子で応えた。
「じゃあ、もう普通にメッセージを書くか! そんで、周りにキラキラマークとか、スマイリーの絵文字とか描いて……」
「それでもスマイリーの絵文字とか描くのか。まあ、あずさらしいとも言えるか……」
京一郎はそう言うと、上半身裸になった俺の隣に座りボディペインティング用のペンを手に取った。勿論、俺は自分のおっぱいに綺麗にメッセージを書くことが出来ないから彼が書くのだ——ワクワクしながら待っていたら、俺のことをジッと見た京一郎が真面目な顔で言った。
「矢張り俺は欲求不満だな。上半身裸で居られると理性が崩壊しそうだ」
「ちょ、崩壊させちゃダメだぞ! りょーちゃんに何かあったら……」
「勿論我慢するが、後でおっぱいを吸わせてくれ」
「ええ、吸う!?」
とんでもない要求に俺は赤くなったが、京一郎は気にしないで黒のペンのキャップを取った。
「それで、メッセージは何と書くんだ。『りょーちゃん 生まれて来てくれてありがとう』か?」
「うん! それと京一郎からも何か書いてくれ!」
「分かった……ちょっと悩むな」
京一郎は少し考える素振りを見せると、いよいよ俺のおっぱい(と言っても乳首の周りではなく、膨らみの上の方だ)にメッセージを書き始めた。
「おほっ! やっぱり擽ったいぞ!」
「動くんじゃない! それにしても俺の字は綺麗だな……」
「自画自賛してんじゃねえよ!」
そんな阿呆な会話をしている間にも、京一郎はさらさらとメッセージを書き込んで行く。初めに書いたのは前から決めていたメッセージで、その下に書いたのは『世界で一番愛しています りょーちゃん』だった。
「おお、素敵な愛の言葉だな……京一郎きゅん」
メッセージを読んだ俺はちょっと感動してそう言った。すると、フン、と言って誇らしげになった京一郎が応える。
「当然だが、お前のことも同着一位で愛しているぞ、あずさ……」
「ブッ」
いきなり愛を囁かれて俺は噴いたが、直ぐに京一郎の顔が近付いて来て優しいキスをした……。
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