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神林長平の「いま集合的無意識を、」を読んだ。
知人が本書をコンピュータに打ち込んだという。写経のようなものだ。よほどの内容がないと打ち込み続けることはできない。
冒頭の「ぼくの、マシン」は戦闘妖精雪風シリーズのスピンオフだ。深井零大尉の子供時代の話であり、日本で最後のパーソナルコンピュータの話でもある。
タイトル作の「いま集合的無意識を、」は、意外なことに神林長平らしきSF作家が登場してくる。さえずりというツイッターのようなサービスを舞台に、亡くなった伊藤計劃と対話をするという不思議な短篇で、一番印象に残る。
「伊藤くんへの個人的なリアルなメッセージを不特定多数に向けて発信するつもりはぼくにはない。ぼくはいつだってそうなのだ、見も知らない相手に自分の生の声を発信することには興味がない。(中略)しかしフィクションなら、小説という<虚構>にすれば、それができる。意識的に嘘を語るというのではない。どのように読まれようがかまわないという覚悟で書かれるのがフィクションであり、小説というものだと、ぼくが言いたいのはそういうことだ。」
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