SFらしいSF「フォマルハウトの三つの燭台 倭編」を読んだ。
第1章の出だし。
「きょうトースターが死んだ。名前はミウラという。毎日ぼくのために二枚の食パンを焼いてくれていた」
ぼくは知能家電管理士だ。家中の家電が人工知能をもち、うるさく喋りまくる世界。ちょっと近未来な雰囲気。
ぼくが語り手かと思ったら、途中からあやしくなってくる。大家の息子、太田林林蔵が前面に出て来る。世を拗ねてこたつで本ばかり読んでいる人物だ。
フォマルハウトの燭台がこの世界の真実の姿を見せてくれる、というのが物語の大枠である。フォマルハウトの燭台は世界に三つしかないのに、それがなぜか日本の山梨県に集まってくる。
第3章で「話している相手の意識がいまその相手なのか、それともそれに似た別の意識人格なのか、そんな、相手の意識の意識の主体なんてのは、どこまでも正体不明だ。」という文章が出てくる。意識と意識の交換が今回のメインテーマだ。機械も猫も意識を持っているのがじつに神林長平的。
最終局面のクライマックス、空間も時間も自由自在に移動する文章のドライブ感がすごい。お薦め。
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