魂
自動改札機の列に並んでいると、なんの前触れもなく背広姿の男性がぶっ倒れた。
「どうしました? 大丈夫ですか」
返事なし。
駅員もやってきて、みんなで駅長室に運んだが、ぴくりともしない。
「この人、倒れる前になにかやっていませんでしたか」
「そういえば、ポケットをごそごそしていたような」
「あっ」
と叫んで、駅員があわただしく、衣類や鞄を調べ始めた。
「やっぱりだ。スマホがない」
「それがどうしました?」
「最近ね、スマホを落とすとこうなる人が多いんですよ」
「こうって?」
「魂を抜かれるというか、魂をなくすというか」
「抜け殻ってやつですか」
「なーんだ」
集まった人々が三々五々散っていく。スマホの画面を覗き込みながら。
(了)
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