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漫画家のエム先生は週刊誌連載を抱えている。 マンションの部屋にこもり、昼夜兼行の生活…
「私は孤独である」 と言ったら、施設の職員に笑われた。 「そりゃ、九十七歳にもなれば、知…
「よおし、二次会はカラオケだあ」 苦手なヨシオカ先輩が叫んだ。 女性ふたり、男性三人。…
「仏師になりたい」 と息子は言った。 父親は茫然としたが、先生は冷静だった。 「誰かの…
目の前でトラックが止まっていている。トラックだけでなく、広い環状道路上のクルマがすべて…
隣近所にだんだん廃屋が増えていく。 「高齢者が亡くなるのは仕方ないよな」 とおもう。 …
バスはみるみる高度を増していく。 私は左側の前から三列目の席に座っていた。 雲海がすぐ近くに見えるような景色である。遠くにも近くにも山の連なりがあるだけ。 このバスが走っている道もまた山の中。 道路は一車線で、それもごく細い。運転手は超絶的な技巧で、道からはみ出ることなくカーブを曲がっていく。 間もなく、バスは山の襞に穿たれたバス停に到着したこの先は歩いて行くしかない。 乗客たちはぞろぞろと移動を始めた。 土と岩の道。足を滑らせたら垂直落下するしかないだろう。
雨が降ってきた。まだ霧のような小雨だが、徐々に強くなっていくという予報が出ている。 …
三年生のクラスは校舎の三階にある。 ぼくは窓際の席からぼーっと空を眺めていた。 「あれ…
彼女は無臭の民である。 臭いがない。どこにもだ。 洗いたての髪に鼻をつければ、シャン…