耳納


 音楽がないと生きていけないなんてそんなのまやかしです。全ての出会いも偶然です。何も信じない。

 というわけで今年も年の瀬ということで(公開は2023年の年明けになっているかもしれませんね、残念)、恒例の音楽備忘録の時期です。今年一年振り返ってみて、「個人的に印象の強かった曲」、「今後も聴き続けるだろうなといった曲」、「今を示す上で今後も語られるだろうなという曲」を紹介していきたいと思います。今年は特に前半は不調で新譜が聴けず、もうこれもやめようかなと思った次第ですが、なんとか書けるくらいには母数の確保もできました(これは義務感ではなく、書くくらいならある程度聴かなきゃなという感覚によるものです、皆も義務感で音楽聴いちゃダメだよ)。物珍しいミュージシャンとか、洋楽をもっと聴いてる人とかは他にいるから、そういう曲とかのまともなレビューを読みたかったらそっちをあたってください。あと2022年の出来事の振り返りは多分1個前の記事でしてあると思います。そっちも読みたかったら是非。
 条件は引き続き、①Spotifyにあるもの、②2022年にリリースされたものとします(そのせいであまり12月の曲が毎年拾えていないのはご愛嬌)。10数曲を予定しています。

ということでスタートです。張り切ってどうぞ〜。(番号は順位とは関係ありません)

①STRANGER / Mondo Grosso, 齋藤飛鳥

乃木坂46を卒業なさった方をボーカルに迎えた、結構なシューゲイザー。やっぱり私は鬱屈としたギターロックが好き。特に坂道系のアイドルの方って、なかなかソロで歌声を聞くことがないから(歌番組とかで聞く曲はほとんどユニゾンだし)、想像以上に透き通る声をしていて、わーこれシューゲイザー向き、って思ったり。というか私の構築したTwitterのTLは乃木坂ファンと音楽好き界隈の二刀流みたいな方が多く、どうやら齋藤飛鳥さん自身もかなり音楽に詳しいらしいと言うことで盛り上がっている様子を観測おり、そしてその方達にとってはこの曲は結構待望の、という感じだったそう。
また2017年にも一回コラボしていたらしく、下の曲は相対性理論のやくしまるえつこの提供だそう。相対性理論からしか摂取できない音楽的快感があると常々思っているので、正直こっちの方が好き。


②POP SONG / 米津玄師


2023年ツアー「空想」に行けるので、今年前半まではなんとか生きなければならない。前回ツアータイトル「変身」のテーマ通り、MVで超イカした格好してる米津玄師が楽しい。タイトル見た時に「随分と大きく出たな」と思って、聴いてみたらサビがどこにあるかわからない、J-POPらしいんだけどそのフォーマットからは微妙にズレたこの感じに惹かれました。歌詞も、ここ数年のトレンドだった「不要不急」を笑い飛ばすメンタリティが見事。クオリティを考えればこのリリースペースは十分異常だと思う。常々普遍を目指していると言って憚らない米津玄師がどこに行くのか以前楽しみ。「君だけの歌歌ってくれ」いい言葉〜

とか言ってたらKICK BACK(まあこの曲もモー娘。のサンプリングとかいろいろ言いたいことがある、MV含めて考えるとこの曲のテーマはエスカレーションです、加速主義とかそこら辺のワードで調べてみよう!)のカップリングのこの曲がとんでもねえ批評性を持っててびっくり。弾き語ってみたいなーと思ってコード調べたら難しすぎた。

https://natalie.mu/music/pp/yonezukenshi21

やっぱり本人のインタビュー読むに限る(批評の意味とは)。カップリングこそちゃんと聴いてほしいものだったりするのかもしれない。


③トラボルタカスタム- from THE FIRST TAKE / 梅田サイファー, H. Teflon


THE FIRST TAKEで観てハマりました。TikTokでR-指定の動きを真似するブームがあったらしく、本当に寒いなと思ってたんだけど(本人がラジオで笑いに昇華していたのでOK)、実際に映像を見るとそんなことひとつも気にならない。とにかくかっこいい。

こういうパス回しをするようなラップ曲好きなんですよね、ちょっと違うかもだけどジャニーズの自己紹介曲とか。

突然誰かに喧嘩を売るようですが、私はCreepy NutsはJ-popだと思ってて(ファンモンとかその系譜)、ヒップホップをやってくとしたらこっちなんだろうな、と邪推というか門外漢の憶測というか。とか言ってたらなんかメンバーの脱退とかあったらしい。かっこいいままでいてくれ。


④旅立ち / adieu


今年前半はこの曲を聴きまくっていた。歌詞のナンセンスさと、儚さと、それへの諦観が声質からも感じられて好き。上白石萌歌さんの歌手名義での一曲。とにかくドラムがカッコよくて、私が多分まともに叩けるギリギリのBPM。久しぶりに叩きたいなと思った曲でした。でもこれ以外の曲は全く響いてこなかったのは不思議。あとこの曲を提供したbetcover!!もあまり好みじゃなかった。この「あまり好みではなかった」をちゃんと言語化したいよね。


⑤愛してるって言ってみな / 森山直太朗


ラーメンYouTuberのMAD動画にされ、年末には漫才のネタにされるなど(両方とも本人認知済みだというから尚更面白い)、微妙にオモチャ化されちゃってる森山直太朗ですが、2022年はアルバムも出すなど結構精力的でした。この曲はそのアルバムからリードトラック的立ち位置。歌詞がもう書写したくなるくらいに良い。愛って単に恋愛的なもんでもなくって、それはまた示していかなきゃいけないものであって…。ダンスミュージック的なビート感から展開がガラッと変わる後半への形も好み。


⑥Damn / 藤井風


いろいろ話題の藤井風。2枚目のアルバムにしてもう完璧なものを作った感じがしてしまい、今後どうなっていくんだろうと思ってます(2023年は海外のフェスとかにも出るのだろうか)。この曲はそのアルバムから。正直MVまで出してくれるほど優先順位の高い曲とは思っていなかったので、少し驚きつつも感謝。MV見て貰えばわかると思うんですが、単に悲恋の曲というわけではなさそうで、過去(自分から離れていった物事など)と現在との葛藤を乗り越え、次のステージに行くよ、ちゃんとユーモアも忘れずにね、って感じの曲なんだなと思いました。映像にすると音楽も聴こえ方が変わるもんですね。



⑦舞台の上で / 松木美定、浦上想起

綺麗さ、という観点で言えばこの曲が2022年一番かもしれない。ジャズの影響を受けたミュージシャンとは今まであまり出会ってなかったからかなり新鮮で。寒い夜にとても合う。と思ったらこれピアノとか打ち込みなのか、見分けつかないな。この曲でゲストボーカルを務める浦上宗喜さんは最近米津玄師の楽曲でもピアノを弾いていたりします。②の曲がそうです。


⑧だいしきゅーだいしゅき / femme fatale


ここ数年アイドルとか聴くようになってきたけど、言い方こそ悪いけどこの辺りのアイドルは聴かないだろうなと思っていたところにこの曲です。全体的にピコピコ音の暴力だし、いわゆる電波系みたいな感じになるのだろうか、歌詞も可愛い声して結構オラついている様子なのもいい。最近の「可愛くてごめん」とか、「わたしの一番かわいいところ」とか、ああいう曲が生まれる(生まれてしまう)環境ってどういうことなんだろうとか思ったりしますね。いや自分としては自分のことをかっこいい・美しいなど思っている人のことが好きだし、自分もそうなりたいし憧れているのだけども、その一方でそういうのって他人から与えられるものでもあるはずじゃないですか。それを自分で言わなくちゃいけない、なんならたまに虚勢まで張っているような感じで歌うのって、なんだかなーとは思うんです。



⑨Attention / New Jeans


韓国で2022年夏にデビューした5人組。ガールクラッシュとか、キメになるポイントをゴリゴリに詰めまくっててカオスな状況になっているイメージの現在のK-pop(結構聴きました教えてくれた方ありがとう)の中で、こんなに清涼感があるダンスミュージックが出てきたのは意外だなと勝手に思いました。またY2K的なものにも惹かれます。こういうのって多分シティポップとかと一緒で、「ない過去・ないノスタルジー」をいかに体現するかの話だと思ってます。特にわたしなんか別に世代じゃないので、むしろそれが新しくなるというか。
とかいうてましたら2022年も終わろうって時に出た「Ditto」。これは問答無用で引っ掛かってしまった。というかビート感も自分が聞いたことのないタイプで、こんなにダンサブルなのに物悲しくできるんだと思いました(ボルチモアクラブ、というジャンルらしい、あとドラムンベース)。自分の通っていた高校は、って書こうと思ったけどやめた。無理だ。こんなにMVの世界観とか、設定とかしっかりとできるんだ、と思いました。So Say it Ditto…


⑩瞳惚れ / Vaundy

テレビ朝日系列で放送されていたドラマ「ジャパニーズスタイル」ご覧になりましたでしょうか。舞台上で一発撮りした演技の模様がそのままドラマになる、という俳優さんの実力がふんだんに味わえるドラマだったわけですが、何回もその演技でもらい泣きしたことのある仲野太賀さんがこのドラマでも輝いておりました。この曲はその主題歌です。ネットの音楽オタクに嫌われすぎなような気がするのですが、わたしは好きです(全曲走らないしあんまり聴こうとは思わないけど)。カッティングと絶妙なリズム感と、Bメロの下降していく感じのコード感がいいなと思いました。あと、瞳惚れという言葉、多分造語だと思うんですが、綺麗な言葉だなと思います。

踊り子もいい曲ですね。確かに元ネタ(何だったかは忘れた)とそっくりでしたけど、まあいいじゃんポップスってそういうものだし。小松菜奈さんが素晴らしいのでMVで見てください。

⑪THE LONELIEST / Måneskin

イタリア出身のバンドです。コンテストでヨーロッパチャンピオンになりまして、そこから大躍進。音楽性は詳しい人がちゃんと書いてくれてると思うので門外漢がどうこう言いませんが、古臭いゴリゴリのギターロックとレッチリあたりのラップとの融合(ミクスチャー、ってやつ?)の融合って感じで、ロックの復活というか完全に新しいバンドだと思います。
サマソニ2022で早速見ることができまして、まーかっこいいこと。語弊を恐れずいうならエロかったです。演奏のパワフルさもさることながらダミアーノの声と茶目っ気たっぷりに客を煽る様子が素晴らしかったですし、King Gnu待ちの客を完全に掴んでました。多分次は昼間に見ることはできないと思う。
この曲はその後にリリースされた一曲。ブレイクの時の曲調とは違い今回は完全にバラードです。死とか別れを描いた、ありがちといえばありがちな感じではありますが、演奏や声質がそのありがちさをしっかりと取り払っているため、めちゃくちゃに上質なものとなっています。

「カラオケに行ったら、この曲が機械に入ってたんだ」って言って、この曲のイントロが始まったのが個人的なサマソニのステージのハイライト。

⑫夏枯れ / ずっと真夜中でいいのに。

ZUTOMAYOに関してはほとんど2022年にはじめましてという感じでした(本当に食指が動かないものにはとことん興味を示す気がない)。この曲イントロから最後まで、雑な言い方をすれば完璧な気がします。なんとなく歌謡曲なテイストを感じる(とても広義な、シティポップ感と言ってもいいかもしれない。感と言ったのは微妙に定義を避けているからです)。サビがあまりにも簡単なメロディーで、歌いやすいというか。心地良い、タイトル通り夏の終わり際に毎年聴くような、そんな普遍性を持った曲になるかも。

この曲が挿入歌となっている映画、まだ観られていない。

⑬手紙 / JUBEE, (sic)boy

この曲を最初聴いた時、あれ00年代っぽいなと思いました。イントロのスクラッチ音とか、ちょっとだけ暗い感じとかの全体的な雰囲気で。この2組のラッパーは全く知らなくて、知ることができたのは全くの偶然でした(JUBEEの方はDragon Ashなど2000年代ミクスチャーの影響を公言しているらしい、ビンゴ)。

雰囲気が似ているなと思ったのはこの曲。当時かなり売れたらしい。

⑭Happiness / The 1975

うわー最後。2022年はわたしの願いが叶った年でした。The 1975のライブを見ることができた!そしてその後リリースされたアルバムが見事!(というか特になんのことかわからないので手放しでいいというしかない)。今まで、というか前作のごった煮感から脱却し、バンド、4人で鳴らすという原点に回帰した今作(モノクロだし、サマソニでびっくりしたのはいつもステージ中央にあった四角い枠がなかったところ。あとシニカルにすぎるStatementもライブ中に出てこなかった。ああ純粋に音楽をやっている、と感動した)。雨の日に自室で揺れる椅子に座りながら本を読んでいるような感じの、まとまった、アルバムとして完成された最高。この曲は第2弾先行配信された曲で、いい!1975節だ!と思いました。少しディスコっぽさも出ていたりするなど、ライブ向けだし、何より歌詞が愛!なので最高です。

1曲目の1音目から一人で号泣していた私の話はこちらのポッドキャストからどうぞ〜。


番外編① 嵐のその後


◯HONEY BEAT / 二宮和也

昨年に引き続き嵐の話。あらかじめ断っておくと、嵐はほぼ間違いなく復活しません、間違っていたらすみません、その前提で話をします。
やっぱり歌のうまさという点で言えば、どうしても序列をつけるとしたら(5人は声が全員見事に特徴的で、ジャニー喜多川の慧眼というか、それがあんなに素晴らしいユニゾンを生み出しているので序列とかあんまり関係ないけども)、大野くんと二宮くんだと思います。大野くんはともかくもう一方はどういうふうに音楽やっていくんだろうな(作詞作曲もしているくらいだし)、俳優だけじゃもったいないなと思っていたところにこのアルバム。ジャニーズに限らずいろいろなミュージシャンのカバーアルバムなのですが、アレンジとかしっかりしていて、単にコピーみたいなカバーでは決してないのが好感。というかカバーってする人の解釈が反映されてないと意味がない。全曲原曲と聴き比べて面白がれるので良いです(特にPretenderは爆笑した。全然辛そうじゃない)。最後の曲となるV6カバーのこの曲では、声質の良さ、バラードに合う感じの歌い上げるボーカルが最低限の伴奏の中で絶妙でした。このアルバムは是非聴いてほしい。


番外編② 早くサブスク解禁して


◯オンリーロンリー / BEYOOOOONDS

いい曲なので聴いてください!
ハロプロのグループです。ついに2022年は後輩もできまして、ここ数年のうちにいずれ来るだろうオリジナルメンバーの欠員のことも考えるようになりましたが、2022年リリースのアルバムの最後を飾るこの曲を聴いて、まあなんとなくそれも仕方ないと思うようになりました(それどころじゃなくなった、というのもあります)。リズムはQUEENオマージュ、最後はビートルズとあまりに大味な意匠の持ってき方で笑いましたが、メンバーのスキルの高さが完全に自分達の曲にしています。歌詞もここ数年のご時世(もう3年だぞどうするんだ一体)の人々の距離感を反映した見事なものとなっています。作詞作曲者の星部ショウさんが公園で一人でボーーとしていた時保護猫を見つけたという経験に着想を得たという、おじさんの(割と)限界エピソードからこんな名曲が生まれたのは面白い。


ライブ映像(当該曲は4:02〜)

終わり〜!

2022年もいい音楽にたくさん出会えた気がします。卒論の内容が、「音楽について語ること」について書いたような気がするので、そんな自分がまたこうやって書いているのがどう読まれるのか楽しみなところがあります。人の褌で相撲を取っている、と言われればそれまでのような気もしますし。あと音楽のちからというものについて改めてしっかり考えなければならないなと感じた年でもあったと思います。私は全く信じない側ですが、久々に行ったライブで号泣(なんの誇張もしていないです)させられてしまうくらいには食らってしまったので、こんなに人の心を動かすというはどういうことなんだろうと思いました。2023年はもう少し海外のシーンに詳しくなりたい。

最後にここには書かなかった他の曲も含めた2022年個人的プレイリストを貼ります。多分2023年になっても追加する予定です。いやーいい曲めっちゃあるな。自分の審美眼(耳?)信用できる。The Weekndとか宇多田ヒカルとか、いいリリースがたくさんあった年でした。本当は全曲話したいけど、この辺で。

2022年プレイリスト(随時追加)興味あるけど時間ない人はこっち!