今年どんなの聴いていたかというと
興味ないか別にでも書くよ。昨年の年間ベスト、どんな文章から始めていたっけ、と思って前回の読み返したら、「音楽がないと生きていけないなんてそんなのまやかしです。全ての出会いも偶然です。何も信じない」とかから始まってて笑った。何があったんだろう。今も決していいとはいえないけど今より酷いじゃん自分。とはいえ考えていることはそこまで変わりません。別に音楽聴きたくない時は聴かなくてもいい。ということで年の瀬なのでいつもの、個人的ベスト楽曲の発表といきましょう。
毎年2段落目で言い訳をしているような気がするけど、今年も大声で言い訳する!言い訳というより「注釈」とさせてもらおうか。いつも通り「2023年にリリースされた曲」(そしてSpotifyに音源がある曲)で「個人的に印象が強く残った曲」「今後も聴き続けるだろうな」と思った曲をピックアップして、乏しい語彙でごちゃごちゃ抜かしてやろうかというものです。これまた昨年も同じようなことを言っていて成長のなさに情けなくなるけど、今年は、修論のテーマを音楽にしてしまったせいでいよいよ「結局これは何な訳?」と醒めた感じになり、その感覚を引きずったまま10月以降全く新曲を聴く気になれず、繰り返し繰り返し同じ曲を聴き続け自分の脳が一昔前のiPodみたいになってしまっていたタイミングがありまして。別に今までも広がりはなかったように思うけど、今年は特になんらかの偏りを自覚しながらの選定になりました。
それでも聴き続けられたのは、ポッドキャストの収録と、これを書くことと、結局長くてストレスフルな通学時間があったから。無駄なことってないと思う、ことにする。でも義務感で聴いてしまっているような気もするし、TLの音楽好きの騒いでいる感じに乗れていない自分がしんどいとか、なら距離置きなよって他ならぬ自分に対し思うことも多々。いずれにせよ、まともなレビューが読みたかったら他所行ってください。そして出来事の振り返りもここの最後でやっちゃいます(と思っていたんですけど5曲+番外編一つのところで4500字近いのでやっぱり別にします)。
書く前にこれの元になっているポッドキャストと、年間ベスト候補の長いプレイリストを貼ります……
(ここから5エピソード)
それでは張り切ってどうぞ(例によって番号は順位とは関係ないです)。
①夢はさめても/TOMOO
勢いつけるためにこの曲からいきましょう。なんでもっと早く教えてくれなかったの!と誰でもない人に恨み節の一つでも言いたくなるような、そんなシンガーソングライター。調べたら2016年デビューだけど、フルアルバムは今年が1枚目。
選んだこの曲は初聴きの時から一発で持ってかれました。サビの「あてにしちゃだめよ」の部分に、本質的な人間関係への諦念が見えて、安易な形でなく、自省を迫られる形で共感した。そこで、そのままならなさを受け入れた先に本当に人と上手くやっていけるのかなと思うし、その希望まで説得力のある歌声でしっかりと歌っている様はもうひとことに最高。一回乗り越えなければいけない場所があるのが、難しさでもあり尊さでもあるはず。
この一曲だけで、なかなかアルバム聴く気になれない私(現代人っぽいけどなんのことはなく飽きが来ちゃう自分を自覚したくないから手を出さないだけ)をアルバム「TWO MOON」に向かわせてくれた。アルバムも見事でした〜少しメランコリーだけど音楽と歌声がいい感じに全体をポップに仕上げていて、今年聴くことができてよかったなと思うばかり。
②とある夏/乃紫
「のあ」って呼ぶみたい。夏が終わったのに今かなり聴いているのがこれ。昨年デビューで、TikTok出身らしい。暑すぎる夏を思い出し、平熱に少しずつ戻してくれる、しかし10代の焦燥感をくっきりと思い出させてくれるこの曲、なんで非ターゲットな私がはまったかと言うと、音が2010年代邦ロックだ!と思ったから。イントロのリフとかは虹色の戦争を思い出すし、Bメロの数え歌テイストなんかもあの文化圏独特の遊びが見られたりする、だけどその一方でボーカルの声質がyamaとかの感じ(私は勝手に「炭酸声」と呼んでいる」で、そこは2020年代だ、とも思う。歌詞については、4年間は長いね、ということ。
夏の曲といえば今年はこんな曲も。依然として「エモ」として夏の夜は格好の場面だなと思う。上に打ち上がるものと、下に落ちる儚さを見るもの。佐藤千亜妃さんも2010年代の空気感と2020年以降のそれを上手く跨いだなという感じ。
改めて聴くとそこまで……という感じかもしれない。なんか全体的にシャカシャカしてる。
似ているといえばこの曲も。Vaundy提供なので確信犯だと思う。Bメロの移行とかコードこそ多分違うけど雰囲気そっくり。いい曲なので良い。Vaundyのことは別の節で。
③美しい鰭/スピッツ
結局コナン見なかったな。灰原回なので楽しみにしてたけどいざとなると食指が動かなかった。こうやって感性が鈍っていくのかな〜悲しいな〜
それはそうといつもスピッツは良い。どんな曲でもスピッツだ、良い、となるのは必ずしも草野さんの一向に透き通ったままの声だけじゃないはず。音の方も確実に進化しているのだと思う。スピッツについては伏見瞬『スピッツ論』を読むと格段に理解が進んだ。あとこの曲のイントロのドラムがとても印象的で、もしかしたら私は結構ドラムの音作りみたいなものに敏感なのかもしれないと思った。こういうのも全部高橋幸宏のドラムが本当に好きだったからかな。寂しい年だったな今年は、後で。
あと今年出たアルバム「ひみつスタジオ」もとてもよかった。メンバー全員がボーカルをする曲があったり、相変わらずの優しい歌の集まりで、こんな歳の取り方をしたいと思う。
④Hold On Tight /aespa
最近脚を抜かなきゃならんと思っているK-POP。とは別の文脈で「何これ」と思ったので挙げます。
Apple TV+で配信されていた映画のサウンドトラックの中の一曲。ロシアで考案されたゲームの権利獲得に西側諸国が奔走する話、という結構面白そうだけどまだ観られていない。最近こういう、誕生秘話系の映画多い気がする(AIRとか。これも観てない……)
「何これ」と思ったのは、テトリスといえばすぐ浮かぶメロディー、なんならダサいとすら感じちゃうメロディーをここまで堂々とサビに使って、むしろかっこいいという、真っ向勝負の潔さを感じたから。
この曲なんかも往年の任天堂ゲームの音を入れるなどしていたけど、やっぱりどこにでも元ネタになり得るものはありそうだし、それをいかに見つけ、いかに自分のものに落とし込むかみたいなところで良し悪しが出てくるのだと思う。神は細部に宿るじゃないけども。
そういえばNiziUの韓国デビュー曲もテトリスモチーフだった。ハングル表記を図形に例えて「私たちよく合うねっ✨」みたいな歌詞で幸せそうで良いと思ったけど、よく考えるとテトリスって揃った瞬間、消えるなって……。なんでこの曲紅白でやってくれないの。
⑤日常/Official髭男dism
ポップソングって、例えばイントロのフレーズまで歌える(歌いやすい)曲かも、と思った。ヒゲダンもKing Gnuも今ひとつ乗り切れていない(タイアップか意味のわからん曲の両極端にどうしても感じてしまい、今年の聴くモードには合わなかった)けど、この曲は絶妙で、心にも響いた。
タイトルにドンとあるように、日常の歌。続いている毎日、しかも特に何もドラマチックなこともないところや、その中の人間のどっちつかず感を歌詞の中で描けるのはやっぱりすごいなと思う(もちろん、たかだか4分の尺でドラマを描けるのもすごい)。サビの「〜みたいだ」という、どこか他人事か気づきかわからないニュアンスを含む語尾とかも、「いや実際ほんとそう」と思わせてくれる。安易な共感でもなく、「ほんとそう」な感じがとても心地いい。なんで紅白でこの曲やってくれないの。
星野源「折り合い」の話はいつもしているような気がするけど、これとかも生活感がすごい。また「日常」というまんまな曲も以前に出しているし。また米津玄師「LADY」も、単調なリズムと雰囲気が生活感なのだけど、そのまま居ようとしているのか、あるいは日常を破壊したいのか譬え話を持ち出したりして、そういう部分に切実さみたいなのも感じられる。なんにせよこういういわゆるトップにいるような人たちがちゃんと日常を歌っているのがとても私にとっては救いなわけで。今日も生きようとなる。
⑥鯨の子/Tele
今年初めて知ったけど、来年武道館公演まで控えているらしい。こういう時、私はいつの時代ならリアルタイムの音楽にしっかりとついていけるかなと思う。多過ぎ。昔の評論家のインタビューで、これだけ国内外の音楽の知識を持てたのは今ほど曲が少なかったからだと言っていたのを思い出す。自分はどこを興味持ち続けてカバーできるかな。
そんなことは別に良くて、歌詞含めこの時代にしか作れない曲だなということで挙げました。歌詞に「論破ゲーム」というのが出てきて、そうだよなここ数年この調子だよなということを思う。彼(いつも思うけど、あんなのをひらがなで呼称するからダメなんだと思う)の魔法が解け始めたのがこの前(同じくしょうもない人間によって、だけど)のことで、でもあの影響力はくだらない形で、しかしはっきりと残り続けるのだろうと思う。醜悪で嫌だな。
少しもったりしたリズム、ナンセンス、ファンタジーな世界観もとても気に入った。だけどきっとこれは終末に希望を感じているようにも読めて、なかなか難しい。ピーターパンも決して明るい話ではないと思うし。
⑦氷菓子/吉澤嘉代子
配給パルコだしED小沢健二だし「渋谷〜〜」という感じの映画の主題歌。正直観た直後ふーんって感想しか抱かなかったし、なんなら最初「つまらないかも……」と思っていたくらいなんだけど、この曲をちゃんと聴いたら、すごい、とてもエモいかも、と思ってしまった。後になって思えば「映画ってここまで映像使って変なことしてもいいんだ」という演出もあったし。「エモい」は吉澤嘉代子だけに使っていいことにしよう。
味覚ってのは意外とちゃんと記憶に残るもので、大失敗した炒飯とか、和菓子苦手だからソフトクリーム食べてた時の味とか、濃過ぎたレモンサワーの味とか、そういうのがその場面と結びついた形で「残ってる」。何かを味わうというのはついでにその場の空気感も同時にいただくわけで、この曲はその辺りの情感を掬いすぎというくらい盛り込んでいる。
⑧死んでくれ/Galileo Galilei
ポッドキャストを録っている時に「セカイ系好きなんだね」みたいなことを言われて、あそうなんだ私そうかそうか、と思った。Galileo Galileiはじめ尾崎雄貴ワークスは基本的に「君と僕」の話ばかりの印象で、それが響くときと響かないときがあるよね〜ということを思います。再結成後最初のアルバムからの一曲。The 1975との接続をかなり感じる音の感覚と、少々気持ち悪いばかりの依存性高めの歌詞。中学生の頃に「優しいバンドだな」と思っていたんだけど、その実すごいどろどろしたことを歌っているバンドなのかもしれない。この曲もすごい他責思考だし、怖い。けど好き。
よくわからないリミックスが出ていた。
⑨Be Who You Are (Real Magic)/Jon Batiste, J.I.D, NewJeans, Camilo
今年の元気ソング。こういうどこまでもポジティブな曲になかなか出会わないもんだから、シンプルに「いぇー」って思った。あんまりヒップホップはわからないけど、いいリリックを歌っているのは聴いたり歌詞読んだりしてわかった。ありのままが本当の魔法だなんて、曲の中だけでも夢見させてくれたこと。
Jon Batisteのアルバム「World Music Radio」とても良かった。多分ジャズの人なんだろうけど、通して聴くとその中でも色々な音楽を聴けるような印象を持ったし、曲同士のつながりが綺麗かつシームレスで、何度も聴ける、と思ったので選びました。
⑩まぶた/Vaundy
アルバムも出ていたけど、今年出したVaundyの曲の中ではこれが一番いいんじゃないかなと思う。「目を瞑ることで相手を理解する」という内容の歌詞には全く共感できないけど。破壊してでも向き合わなければならんでしょうがと思うんだけどな〜。ギターリフとドラムの音が好みです。
アルバム。自分のオリジナリティーみたいなものがあるとしたらそれはレプリカのようなものなのだという開き直り、見事。私みたいな見識狭い人間にすらはっきり元ネタがわかるようなものがたくさんあり、その感覚を覚えさせることすらも彼の狙いだったら面白い。「ZERO」の歌詞のあり方、桑田佳祐の作詞プロセスと同じだな、とか。ただはっきりさせときたいのは、この辺りの思想の表明、少なくともここ最近のJ-POP文脈では米津玄師がとっくに通っているところだから……。ただ、安易なオリジナル信仰とか、そういったものをぶち破ることの意義みたいなものを感じて、なんでかわからないけど自分にその使命を感じているんだったらそれはすごく尊敬されるべきことをやっているんだなとも思うので、今後も楽しみ。
⑪地球儀/米津玄師
もう今年ぶっちぎりだったと思う。葬式でかけてほしい。
映画「君たちはどう生きるか」の主題歌。NHKのドキュメンタリーで、これじゃ批評が成り立たんみたいなこと言われていて、確かにそれはそうだけど、完全に批評を拒否する作品があったっていいのではと少し思ったりもする……というのは措いて、この作品があったこそ生まれた曲だけど、そこから離れても十分すぎるほどの価値がある曲だと思う。人が生きて、誰かと関わり、何かを創り、そして別れるということを全てこの曲に詰め込むことができているように感じ、米津玄師にとってもしっかり集大成となっているように思う。
どのように今生きる世界を肯定するかということ。眞人も孤立した世界を当初は憎みさえもしていて、米津玄師も「どこにも行けない」と繰り返していた中で、それでも向き合うことをやめなかったから、眞人には友達ができ、秘密を握ったまま世界を生きることができて、米津玄師も自分の進む道を(瓦礫がある中でさえも)歩くことができ、地球儀を俯瞰するように世界を見渡すことができた。私は肯定できるだろうか。
「千里の道も〜」とは全く違う、自分の「こうありたい」という願いから始まる創造に、一筋の希望を見出す様。
他にも
これくらいに。
番外編1 NewJeans
昨年冬のDitto公開以降、みんな綺麗だな〜かっこいいな〜こうありたかったな〜と思っていたらあれよあれよと1年経ち(夏を過ぎて秋、もちろんそれだけの1年じゃないよ)、最近ようやくYouTubeに乗る限りの全コンテンツを追うのをやめられるようになった(これまで全Vlog観てた)。とにかく勢いが止まらんので追う側も大変だったな今年という感じ。振り返っていきましょう。
怖い。病みのポップ化みたいなところは案外地続きで、最近のトー横だのODだのみたいなのをどうするかという問題はあるのかもなと思ったり。
怖いって。DittoのMVの世界のバージョンのMVで、やっと思い出と向き合って作れたんだね……………………………(デカ感情)じゃないんだよ。いつまで「ない記憶」の話をしなきゃならないの。
コカコーラとかあったけどとりあえず夏。6曲全てにMV付きという、休んで!?って思うような充実度、充実度というより単に情報量で圧倒されているだけなのでこれが健全なのかわからないけど、とにかくパワーパフガールズとのコラボは最高だったし、Cool With You(特にMV)の「越境とその代償」の残酷さは、幅広げ過ぎだよと思ったり。
サマソニ。暑くてよく覚えていない。いたな………………という感じ。このご時世に正しい喩えじゃないかもしれないけど、前から倒れた人が運ばれていく様は戦場みたいで、自分もいずれ……という不安がなおさらあの状況を混沌としたものにさせていた。みんな頑張ってたから、ここで倒れるのは5人に失礼だと思って耐えてたけど、思い出すだけで辛い。クッキー好きですか〜〜??じゃない、水分を奪わないで。メンバーたちも暑かっただろうに、本当に忘れられない夏です。
NHKで特番組まれてた秋(LOLのテーマソング?の「GODS」だけど、最初全くNewJeansがやる必然性を感じなかったけど、パフォーマンス映像を観てえなにこれ超カッコいいじゃんと思って評価逆転した)、Dittoがいろんな音楽賞をとった冬、ということで12/19に出たのがミックスアルバム。
思ったより結構ホリデーものだったので理由はわからないけどなんか安心。ミックスの技術、というか処理の仕方でこんなに声の聞こえ方が変わるんだと驚き。来年以降機会があればまた観に行けたらいいなと思います(今度は屋内で)。ビートルズに喩えたくなる気持ちはとてもわかるよ…………
番外編2 今年行ったライブ
・J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE 2023(初日、両国国技館)
・The 1975 At Their Very Best Tour(ぴあアリーナMM)
・J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S (2日目、六本木ヒルズアリーナ)
・米津玄師 2023 TOUR /空想(さいたまスーパーアリーナ)
・SUMMER SONIC 2023(初日、ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)
・Måneskin Rush! WORLD TOUR(有明アリーナ)
こうやって見返すと十分すぎるくらい行けているな私。Coldplay当たらなかったのも仕方ないと思える。
ギタージャンボリーはバイトがてらで見せてもらいました。4年前国技館で見て以来の斉藤和義と秦基博、大勢のポルノファンがいた岡野昭仁、なんともゆるかったけどパワフルな一面も見せてた藤原さくら×Reiを見ることができた。仕事してなかったな〜。
The 1975は、昨年から2年連続で観ることができた幸運をまずは喜ぶ。日本人揶揄の何かがあってからほどなくの来日だったせいか、こっちも勝手に緊張していた部分があったけど、最新アルバムの曲もやりつつ、とにかくバンドとしての強さをしっかり見せてくれて嬉しかった。他の公演でやってくれた曲をやってくれなかったりしていたけど、もうそれもご愛嬌。ロックスターだし何してもいいよ。また行きたいけど、来年のツアー日程をもってライブ活動を休止するらしく、また健康に帰ってきてほしいと願うばかり。
マップスはずっと気になっていたBialystocksを観ることができました。曲聴くと難しそうなことやっているなと素人耳にも思ったけど、ライブで見たら本当に難しいことやっていて、バンドメンバーすごいなと思った。屋外の雰囲気ととてもよくマッチしていた。Corneliusも初めて観ることができた。いわゆる「炎上新規」みたいなところがあるので、どんな感じなのだろうと思っていたけど、まさに音に殴られるという感じだった。ギターの音が刃物。その中で追悼の演出が出てきた時のお客の拍手とか、無機質だけどすごく一体となったステージだったと思う。
米津玄師。疫病禍以降初めてツアーに参加できて、その間に作っていた曲を披露していた時に、「ちゃんと3年間生きてこれたな」と少し泣いた。いつものダンサーさんたち含め、大きい会場になればなるほど演出がどんどん進化していっている印象。ステージを縦横奥に使って(どうなっているのか全くわからなかった)、楽しそうにライブをしていた。あと行くたび思うけどどんどん歌が上手になっている。疲れている様子が全くない(同じ会場の別日はセトリ変えていて、そっちの曲の方も聴きたかった……)。空想の力。
SUMMER SONICは2年連続の初日のみ(今年はMIDNIGHT SONICにも。メッセの床ひんやりして気持ちいい)。NewJeansで身の危険を感じたのは、SUMMIT All Starsではしゃいだからというのもある、かっこよかったし。メッセでBialystocksとか観ながら落ち着いて、HONNEをやっと観ることができました。意外とバンドサウンドでしっかりしていたけど、暖かみのあるステージで、単独あったら絶対行きたい。また日本きてね〜。星野源も初めて観ることができた(ビーチにはスクリーンがなくて、米粒みたいだったけど、いた)。Jacob Collierはとんでもなかった。縦横無尽に色々な楽器を演奏し、客に手振りだけで音程を伝えて3部合唱させてた。疲れながら観てたけど、こうして振り返ると満足度一番高かったかもしれない。来年も行けたらいいなと思います。
Måneskin。3階席だったけどほぼ正面で見ることができました。まず昨年観ることができてよかったけど、今年発売の最新アルバムひっさげてさらにカッコ良くなっているし、色気がすごい。この4人じゃなきゃいけないんです!という気持ちを表明するような全力のバンドサウンドで最高でした。ライブじゃないと感じられないタイプの気持ちよさがありました。イーサンの髪さらさら。
番外編3 追悼とリバイバル
今年はたくさんミュージシャンが亡くなってしまった印象で、それもだんだん私のような年齢の人もそこそこちゃんと知っている人が消えていってしまい、寂しい。特に私を音楽に向かわせてくれた人について。
高橋幸宏。私が小さい頃、ドラムを習い始めたきっかけの1人。スネアの音とか、機械的でありながら人の情感を感じるようなタイトなリズム感で、こんなふうに叩きたいと思っていた。病気する直前まで、METAFIVEというとてつもなくかっこいいバンドをしていて、こんなふうに歳を取りたいと思っていた。METAFIVEはいろいろなことがあって事実上解散したけど、Corneliusは無事見事なアルバムをもって復活したし、その中で「環境と心理」を歌い継いでくれたこと、何よりも嬉しかった(だからアルバム全体の評価は正直どうでもいい)。そしてMETAFIVEの残ったメンバーに新メンバーを加えて始まったTESTSETのアルバムも、YMO(もっというと80年代のニューウェーブ)の空気感をしっかり、そして今なりに受け継いでいて、ちゃんとここに残っているじゃん良かった、ということを思った。
坂本龍一。そんなに全キャリアを追っているほどの者ではないけども、YMOの尖り切った状態の坂本龍一を主に(YouTubeとかで)見ていたから、晩年の細っていく様子はなんだか痛々しかった。安らかに眠れているといい。Ballet Mécaniqueが一番好きなのは前の記事にも書いたけど、今年出したアルバム「12」は、この上なく無駄を削ぎ落とした静謐さを湛えていて、ある意味で死期を悟ることができるのは幸せなことだったのかもしれないと思う。あまりに早すぎることには変わりないけど。また11月にAmbient Kyotoにいって、京都新聞の元々印刷所だった場所でアルバム「async」を映像付きでゆっくり聴くことができて、こういう包み込まれるような空間の中で聴くものなのかもしれないなと思った。神宮外苑のこととか、最後の最後まで色々なことにちゃんと危機感を持ち、発信していた。生きてきた時代による部分が大きいのだろうけど音楽をやっていたからこそ、その音楽自体の限界をよく知って、然るべき時には行動を起こしていたのだと思う。
(神宮の問題に完全に目配せした、色々なところにしっかり風刺で釘を刺してきたサザンの新曲。それはそうと80年代のポールっぽすぎてびっくりした)
The Beatlesが帰ってきた。帰ってきたというか、そこそこのモヤモヤは残しているけど。本当の「最後の新曲」となった「Now And Then」。リアルタイムで新曲に出会うことができたこの上ない幸せとともに、あーこれで本当に終わってしまったんだ、という寂しさを感じた。最初に聴いた時は後期っぽさのあるしみったれた曲だなと思っていたけど、聴く回数を重ねていくにつれジョンの声がちゃんと聞こえていることの感動、ジョージのギターのニュアンスをほぼ完全にポールが再現していること、聴いただけでそれとわかるリンゴの少しきっかりとしたリズムからずれているドラム、加えてコーラスに過去の曲のそれが一部使われていること、そういうの全てがわかっていく中で、改めてこれは一つの極地だなと思った。そもそもビートルズは当時の新しい技術をすぐに取り入れて、録音音楽を常に発展させてきた、曲の良さはもちろんそういう意味でも重要なアクターであるわけで、そう考えるとAIによる音声クリア化技術に手を出して曲を作るのはある意味必然なんだろうと思う。歌詞においてジョンがポールに……みたいなのにはいまいち乗れないけど、「時々」と「今とあの時」というダブルミーニングのタイトルには、やっぱり深く感じ入るものがあるなと思う。ファンに向けてのプレゼントだと思うし、ポールもリンゴもこの、きっと心残りだったプロジェクトを完遂させることができて、胸のつっかえが一つ取れたと思う。
こんな雑コラみたいなMV作っているけど、最後のおじぎしたところで泣いちゃうよ。
ついでに赤盤/青盤も、追加の楽曲を含めてリマスターされてリリースされました。ベスト盤に「これが入っていないじゃないか」というのは野暮だけど、個人的には充実していて個人的には良し。音も2009年リマスターの意味わからない左右分離ではなくなっていて、自然に戻ってくれた。この時代に生きるのも悪くない。
終わり〜
随分長々と書いているような気がするし、毎年尻すぼみな感じもする。挙げたのは11曲だけど、色々な関連事項を書くために今年リリースの曲を相当数乗せたと思います(30はいっている気がする。ここらへんの取捨選択ができなくて、全部載せてしまえ!となってしまうのは悪癖だと思う)。冒頭の言い訳の通り、やはり偏っていたけれども、偏っているなりに結構聴いていて、結構それぞれについていいたいことがあるじゃん自分、と思えているので、長々と書いてよかったなと思います。これは一つの自分とこの世界を肯定する作業なんだと思う。こんなふうに生きているよ、ということを読んでいるあなたに知ってほしいと思う。
最後に書くことじゃないけど、そして読まれるかどうかはまた別段の問題だけど、よかったら読んでね。