岸田首相の「分配政策」は国民窮乏化の悪政だ!
2024/03/04
https://www.youtube.com/watch?v=jenyPts5rGQ&t=692s
(深田)
皆さんこんにちはITビジネスアナリストの深田です。今回は岸田首相の分配政策は国民窮乏化の悪政だと、私が言っていることの背景について、原田泰先生からお話をいただきたいと思います。先生今日もよろしくお願いします。
原田先生のご紹介をします。現在は名古屋商科大学ビジネススクール教授です。原田先生と私の出会いは、元労働大臣の近藤鉄雄先生の勉強会です。私は原田先生の本を何冊か当時読んでいたのですけれども、原田先生はこんな所に来るのだと思い、いつか私の勉強会にも座ってくれないかなと邪なことを思っていたら、ついにその願いが叶い、今日ご登壇いただきました。先生本日もよろしくお願いします。
(原田)
よろしくお願いします。
(深田)
今回、『日本人の賃金を上げる唯一の方法』というミラクルな本を出版してくださったのを拝読させていただいて、やはり原田先生は良いことを。本当にこの国の問題は、国民が今貧乏になってきていることが最大の問題です。よその国を助けるとか、そんな話をしている場合ではないのにと思っていたところを、こうして日本人の給料を上げる方法を書いてくださり、本当に嬉しいです。
先生、こちらの本の中で、分配政策が国民のことを救ってくれないことに言及されていますけれども、そこの処を詳しく教えていただいてよろしいでしょうか。
(原田)
はい、それは簡単なことで、分配って要するに一番行っても100%ですよね。100%を与えたらそれ以上は行かないわけですから、だから伸びるたって倍に伸びたら終わりで、それ以上増えないわけです。それだけのことで簡単なことです。
(深田)
乗数効果はないということですよね。
(原田)
そういうことです。
(深田)
私は、今回の岸田政権の少子化対策、あれも本当にうまく行かないでしょうと思っているわけですよ。なぜかと言えば、国民の皆から1000円ずつ取って、それで少子化対策を打ちましょうって、少子化対策になるはずがないのですよ。
そもそも問題は、結婚できないぐらい男女ともに貧乏になってしまったのが問題なのに、そのお金がない人から、さらに1000円取っては駄目だよねという、ここなのですよ。
それなので先生の分配政策では国民は豊かになれないというのは、もっと声高に言って欲しいと思いました。
(原田)
結構声高に言っているつもりなのですけどね。
(深田)
少し上品過ぎます。
(原田)
今、GDPの半分を国民が取っているとして、それの分配を増やせば良いのかって言ったら倍にしかならない。実際にそんなことはできないわけですから、6割とか7割にすれば良いのだと言う人がいる。しかし、それはその分企業の取り分が減ってしまう。企業は研究開発投資とか設備投資とか色んなことをやらなければならないわけですけど、そのお金が無くなってしまう。そうしますと長期的に増やすことにはなりませんという、それだけの話です。
だからGDPが増えることが大事で、それで1人当たりのGDPが増える、つまり賃金は1人あたりのGDPとほぼ同じように動いている。当たり前のことだと思うのですけれども。もちろん長く働くとか、それから男女とも働くとか、高齢者も働くとか、いろんな働き方はあると思いますけれども、それもいずれも限度があるわけですから、高齢者が働くのも限度があるのだから、増やすのは1人あたりのGDPが増えるように。1人あたりのGDPというのは、ほぼ生産性と いうことになります。ほぼ労働生産性。
(深田)
先生、労働生産性はどのような計算式になりますか。
(原田)
GDP割る労働投入量なのです。労働投入量だから、全ての人の働いている時間を全部足したもので割るということが、正しい労働生産性の求め方なのですが、実際にそういう統計があるのですけど、でも本当に日本国民が全体でどれだけ働いているかを正確に足すことは難しい。一応数字はあって、世界中と言っても先進国だけですけど、先進国全体ではそういう数値がありまして、その値を見ても、1人あたりGDPとほぼ同じような動きをしているわけです。
それで1人あたりGDPは賃金とほぼ同じような動き方をしているので、1人あたりGDPで見れば良いのではないのかと、それから労働生産性で見ると、例えばフランスとかの国の労働生産が高くなる。なぜかと言うと、失業率が高いからです。働いていない人が多いのに生産性が高いのは、生産性の低い人は仕事につけないという状況があるからです。
それは困るでしょうということで、働いている人だけの生産性を見て生産性が 高い低いと言っても良くない。だから失業している人の生産性というのはおかしいですけど、日本全体で見たら失業している人も働いている人も全部、全員の人数で割った生産性の方が良いのではないのかと。
どうせ同じように動いているから、これでいいということです。
(深田)
今のお話は、1人当たりGDPの伸び率が低い国というのは、結局労働生産性が低い。見た目のGDPが増えていても、その分労働投入量、外国から移民を、技能実習生を大量に入れて、その人たちに長く働いてもらっているという形では、見た目のGDPは伸びても、結果として人が増えているので、1人当たりのGD Pは伸びていないということですよね。
(原田)
はいそうです。
(深田)
私もそう思います。だからむしろ日本がやらないといけないのは、設備投資をして働く時間を減らす。そうすると労働生産性が上がって1人当たりのGDPが伸びることにより、賃金もそれに伴って上がっていくというお話ですよね。
(原田)
そうです。労働時間を積極的に減らさなくても良いのですけど、いまは過労死とかの問題がありますから。
(深田)
経産省の役人が過労死していませんから。
(原田)
ただあの人たちも本当に生産性上げるために働いているのかよく分かりませんけどね。
(深田)
そうですよね。もう労働生産性が低い人たちに、労働生産性を上げろとか言われると非常に何か心外なのですよ。皆さんに、こちらグラフを見ていただきます。『日本の賃金はなぜ上がらないのか』ということですよね。
(原田)
まずこれは別に賃金が上がっていませんよねということを言っているだけです。日本は黄色でずっと上がっていない。その下から抜いているのがありますけど、これは韓国です。
(深田)
2012年でもう抜かれてしまっているのですか。
(原田)
2013年ぐらいですか。もうちょっとか。
(深田)
2014,5年で抜かれたかなと思いましたけど。いや本当にすごいなと思います。これはアベノミクスをやったけど、国民の賃金は上がっていなかった。これは、どのように責任を取ってくださるのですか。
(原田)
これは1人当たりですから。アベノミクスの初期は、高齢者とか女性の短時間労働者が増えたのです。今まで働けていなかった人たち。
(深田)
失業率が下がって、完全雇用に向かったけれども、賃金としては、時給は変わっいない。
(原田)
時給は、そんなに上がらない。時給はわずかに上がっているのですが、フルタイムの人の時給は高くて、フルタイムではない人の時給は低いわけですよね。そうすると自給の低い人が増えたわけです。だから1人当たりは増えないと言うか、ほとんど増えていない。
(深田)
いやアベノミクスを批判するつもりはないのですけど。
(原田)
ただ、みんな働いたのだから。
(深田)
無かったところから、お金がもらえたということでは良かった。
(原田)
そうだから働く人が増えたから、総賃金、賃金を全部足したものは増えていますよ。だからGDPも増えている。
(深田)
そうですよね。そこはありがたいのだけれども。
(原田)
だから賃金が上がるところまでは、なかなか行かなかったというのは。
(深田)
いや。それは技能実習生という安い労働力を入れたら、我々女性の給料が上がる前に、それをやってもらっては困るのですよ。女性の賃金が上がりきるのを待ってから、外国人の労働力を受け入れてくれないと。私たちのバリューが発揮出来ないですよね。
(原田)
だから外国人労働者って殆ど農業とかですね。それから、色んな工場とか、建設業の中の簡単な仕事をやっている人たち。3Kですね。キツイ、汚い、簡単ではないです。そのうち思い出すかもしれません。だから、女性の賃金を下げるというのは、あまりないと思うのですけれど、農業のあたりではあるかもしれませんね。
(深田)
今日のテーマは労働分配率。分配政策は誤りだ。こちらの表をご説明いただいてよろしいでしょうか。今度これはオレンジが日本なのですよね。
(原田)
はい、労働分配率を、アメリカが結構高いのですけれど、そのアメリカが、
(深田)
まず、労働分配率の定義からお願いします。
(原田)
労働分配率というのは。労働が働いた分と資本が働いた分ですね。だから全ての利益と全ての労働所得を足したものを、国民所得と言うのですけど、国民所得のうち労働所得の比率を言います。労働所得は、アメリカが高くて、アメリカが1番高い時が80%ぐらいだったのですけれども。全ての国は80%にしたらどうなりますかというのを見たものです。
(深田)
少し補足します。労働分配率は企業が稼いだお金を、どれだけ賃金に回すかということでいいですか。労働分配率という言葉、これ専門用語で分かりにくいので、ものすごく簡単にイメージで言えば、会社が売り上げを上げますよね。その時に、どれぐらいサラリーにそれが跳ね返ってくるのかという、そういった話なのですよ。労働分配率を上げるというのは、企業利益として内部留保を上げげるのではなく、もっと給料に回していきましょうという、そういう話でよろしいですね。
(原田)
その内部留保というのは、すこしまた違うのですけれど。内部留保は要するに、よく内部留保を分配しろとか言われますが、内部留保はもう使ってしまったお金が殆どなわけです。まぁ大体そんなことですね。
(深田)
私も、以前外資に務めていたのですけど、イギリスの企業だと、アメリカの外資の金融機関みたいに、がっぽりボーナスが貰えるというわけではなくて、実は意外と分配率は低いのですよ。とはいえ初任給で800万円から1,000万円あるので、十分高い方ではあるのですが、日本はそれに比べたらもっともっと低いですね。
(原田)
もっともっと低いですね。今年やっと30万ぐらいになって、初任給は大体24、5万だったわけですからね。
(深田)
いま金融機関の初任級がやっと30万円ですからね。
(原田)
まだ、30万円行っているところと、行っていないところがあると思いますけれどね。一部は30万円ぐらいになっていると思いますけど、大体24、5万円ではないですかね。
(深田)
原田先生の初任給は幾らでしたか。
(原田)
私のとこは2万円とか3万円じゃないですか。1974年
(深田)
オイルショックの前で、インフレの前だから安いのですね。
(原田)
そうそう、安いのですよ。だから数万円ですよ。でも、それが上がっていきますからね。
(深田)
私は初任給が手取りで12万5000円ぐらいで、派遣で多分額面15万円弱だったと思うのですけれど、あれから20数年が経って、田舎の女友達は年収300万円も行ってないです。250、60万円という人が本当に多くて。
(原田)
そんなものだと思いますよ。
(深田)
それが大手なのですよ。
(原田)
ただ子会社で、子会社の賃金体系は違うという、そういうやつでしょう。
(深田)
大手の子会社の契約社員で、そんなに払ってくれないのは、分配率は問題ありかなと思ったのですが、こちらの表を見てみましょう。これ仮に日本の給料が、労働分配率がアメリカ並みに高かったらどうだったのかという仮定ですよね。
いま日本の労働分配率どれぐらいですか。50ぐらいあるのですけれども、これがアメリカ並の80%とした時に、各国はどうなるのかという。仮に労働分配率が80%だったらという前提を置いて、それを元に試算した7カ国の数字ということでよろしいですか。
(原田)
そうです。日本が真ん中ぐらいにありますけど、ともかく上がってないのは同じですよね。
(深田)
そうですね。これの要因は、次のページですね。
(原田)
1人当たりのGDP。つまり生産性ですね。
(深田)
1人当たり実質GDPが上がっていない。横ばいだと。日本は水色の点々で、全然上がっていないな。
(原田)
全然上がっていない。でも、1人あたりGDPにすると、この縦軸がアベノミクスですから。
(深田)
この棒が。
(原田)
そうそう、だからちょっと上がっていますよね。
(深田)
角度がちょっと。でも角度は大差ないですよその割に。
(原田)
ただね、この01年から2006年って、量的緩和をやっていた時代なのですよ。だから金融緩和して、上がっていた時代なのですよね。
(深田)
そうですよね。確かに、この時代やっていましたものね。次のこちらは、どうですかね。
(原田)
前のは先進国で、こっちはアジア先進国と比較しているのですけれども。アジアの中で横ばいだと。それ抜いているのが香港ですね。1番最初に伸びたのが香港。
(深田)
これアメリカですね。
(原田)
そうです。その下にあるのが台湾。ついに韓国に抜かれた。
(深田)
韓国にも実質GDPが抜かれてしまった。
(原田)
実は、シンガポールにはもう大昔から抜かれているのですけれども。
(深田)
シンガポールの合理化って、徹底していますものね。
(原田)
シンガポールは、今やアメリカのよりもずっと高いのですね。だから、シンガポールを入れると線がくっついてしまって、よく分からなくなってしまうので、シンガポールを抜いているのですけど。ともかく、日本はアジアの中でも伸びていなくて、アジアの先進国の中で1番最低となってしまったということです。
(深田)
政府の非効率さは、群を抜いていますからね。
(原田)
まあ台湾企業が日本に来るというのも、やはり日本の安い賃金狙いだという話もある。
(深田)
そうですよ。奴隷化政策です。
(原田)
日本の企業で安い賃金もらうより、台湾の企業に行って高い賃金もらった方がいいわけですよね。日本国内の中で。
(深田)
そもそも日本の企業の給料が安過ぎるだけで、TSMCが業界水準的に高い方なのかというと、そうではないわけなのです。
(原田)
ただね。それは日本に来る外国の人にしてみれば、自分の国で安い賃金をもらうより、日本に来てそんな高くないのですけど、母国よりも少しでも高い賃金もらいたいと言って来るわけですよね。だから、そのぐらいだったら外国の企業に来てもらえばいいじゃないかと。そうすると、日本人の賃金も上がりますよっていう話なのですよね。
(深田)
でも、そもそも日本の企業がダメになったかって。
(原田)
それが情けないじゃないかって言われていた。
(深田)
情けないじゃなくて、全ては経産省の産業政策が常に間違ってきたから、その尻拭いを日本国民がさせられているという状況なのですけれども。
先生ごめんなさい。先生は経産省ご出身ですか。
(原田)
経産省じゃないですよ。経済企画庁って今、内閣府です。
(深田)
経済企画庁は経産省ではないのですね。本当にね原田先生の『失われた10年』の名作。
(原田)
ありがとうございます。
(深田)
言葉だけが売れて、本が売れなかった。
(原田)
いやいや、まあ経済書としては、それなりに売れたと思うのですけど。
(深田)
何万部ですか?
(原田)
1万5000部ぐらいだったかな。
(深田)
皆さん、こちらの本も1万部行くように、どうぞ応援してください。ということで、皆さん。岸田政権の分配政策、分配だけじゃダメなのだ。結局は1人当たりGDPを伸ばしていかないといけないのだ!ということを、今日は原田泰先生に御説明をいただきました。
ということで皆さん、また原田先生のご登壇を楽しみにしてください。
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