【話題提起】ヴェロニカ 南雲すみ

 こんな話を聞いたことがあります。

 ヴェロニカ(Veronica)は、カトリック教会・正教会の聖人でした。「ベレニケ(Berenice)」とも言い、エルサレムの敬虔な聖女でした。

 ある日、イエス・キリストが十字架を背負いながらゴルゴタの丘(あるいはゴルゴダの丘)を歩いていました。それを見たヴェロニカは彼を憐れみ、自身の身に付けていたベールを渡しました。額の汗を拭うよう、イエスに言ったのでした。イエスは申し出を受け入れ、額の汗を拭き取り、ベールをヴェロニカに返しました。

 すると、驚くべきことに、ベールにイエスの顔が浮かび上がってきたのでした。以後、ヴェロニカの絵画や彫像では『聖顔布』を手にした姿で表されるのでした。……

 僕はこの話を知って、三つ疑問が浮かびました。

①何でイエスは十字架を背負ってゴルゴタの丘を歩いていたのか。

 「ゴルゴタの丘」を調べてみると、どうやら新約聖書においてイエスが磔刑に処された場所らしいです。その因果なのか何なのか分かったものではありません。ヴェロニカがいつの人物なのか、実在していたのか、それすらも不明です。

②何でイエスはベールをヴェロニカに返したのか。

 汗を拭いた布を、洗濯もせずに借りた相手に返すなんて非常識過ぎます。ヴェロニカの服が一枚布で、ベールを貸したことで裸になってしまったのなら分からないでもないですが、そうでもなさそうです。僕だったら返ってきたところで、イエスが去った後、そっと捨ててしまいそうです。

③何でベールにイエスの顔が浮かび上がったのか。

 ここが一番の謎です。イエスの汗に形状記憶合金でも混ざっていたのでしょうか。あるいは、端からイエスのフェイスペインティングが施されていたのでしょうか。皺の形なら分かります。実際にそうなることもあります。ですが、「顔が浮かび上がってくる」のはおかしいです。一種の恐怖を覚えます。

 このエピソードの『主題』は何でしょう。「ヴェロニカの信仰心」「イエスの神がかった奇跡」「ホラー」。

 後世に描かれてきたベールを持ったヴェロニカたちは、どういった経緯で描かれたのでしょうか。作者たちは描いている最中、何を思っていたのでしょうか。作品によって、ヴェロニカやベールに写ったイエスの表情も異なります。

 今回は新約聖書を基に書きました。その中の「福音書」や、ヴェロニカの『聖顔布』のような「聖遺物」などにも興味があります。これからも複合的に、【Veronica】を解明してみたいです。

 皆さんはどう考えますか。