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story.04 昧爽の覚醒

正直、自分が一番驚いていた。

彼女と付き合いだして数ヶ月経った頃、初めて泊まりで旅行をすることになった。

それまで食事や買い物に行ったり、たまに僕の部屋に彼女が遊びに来たりはしていた。でも、完全に心を許してはいない自分がいた。

旅の途中、彼女は屈託もなく僕に荷物を預けてトイレに行く。出てきた彼女に荷物を返し、僕が行こうとすると彼女は「荷物持ってようか?」と聞いてくる。僕は「大丈夫」と言ってそれをかわし続けた。

一日遊んだ後ホテルに着き、先にシャワーを浴びた。次に彼女がシャワーを浴びている間、気づいたら僕は爆睡していた。

明け方、ふと目を覚ますと彼女が隣で穏やかに眠っていた。正直びっくりした。警戒心の強い自分が他人といて熟睡できたことに驚きを隠せなかった。

同時に物凄く安堵した。

気の置けない誰かと一緒にいる安心感。彼女と一緒なら結婚も悪くない、そう思えた。

そんな彼女が今は僕の妻で、妻の隣が一番落ち着く。

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