救命目的以外の蘇生処置を撲滅したい

・人工呼吸器はつけないでほしいが、心臓マッサージはしてほしい。
・末期腎不全で透析が必要な状況であるが、透析は行わない。ただ、蘇生処置はしてほしい。
・癌が見つかるかもしれないので、内視鏡検査を提案して拒否した患者に蘇生処置はしてほしい。
・「急変時DNAR」としていたが、いざ「心臓が止まりました」と聞いたら気が変わったので、蘇生処置をしてほしい。

全部今まであった高齢患者の家族の要求です。
そして、これらを字面のまま受け入れて急変時コードを設定する医師もいます。

もう、こんなのやめませんか?
心臓マッサージは家族を納得させるためにやるものではありません。救命のためにするものです。
一番割を食うのは病棟の看護師です。忙しい中での人を集めて行う蘇生処置がどれだけ負担になることか分かっていますか?そして、それは全て無駄な行為になってしまうのです。

私であれば、上記の要求をした家族には次のように返答します。

・人工呼吸器はつけないでほしいが、心臓マッサージはしてほしい。
→心臓マッサージで心拍が再開した直後は、ほとんどの場合で意識がありません。人工呼吸器装着が必須です。
・末期腎不全で透析が必要な状況であるが、透析は行わない。でも、蘇生処置はしてほしい。
→透析をしないと救命できないのに、蘇生処置をしたからといって救命できません。そのような蘇生処置は行うことができません。
・癌が見つかるかもしれないので、内視鏡検査を提案して拒否した患者に蘇生処置はしてほしい。
→今内視鏡を受ければ、この先起こりうる死を避けることができるかもしれません。その内視鏡を拒否されるのに、心臓が止まった時に蘇生処置を行うような都合の良いことはできません。
・「急変時DNAR」としていたが、いざ「心臓が止まりました」と聞いたら気が変わったので、蘇生処置をしてほしい。
→このように急なことがあるかもしれないので、あらかじめ決めておいたわけです。我々は蘇生処置を行わない前提で対応したため、今から処置を行なっても救命は不可能です。

死に目に立ち会うということができる場合は、ほんの僅かです。
すでに救命不可能な状態で、家族が病院に駆けつけるまで心臓マッサージをしていようが、患者本人が目を覚ますことはありません。死亡確認の時間に関わらず、患者の魂はすでに死後の世界です。
救命以外の目的での蘇生処置撲滅を切に願います。


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