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女性の育休取得80%超ってホント?

男性育休の経験から考えた、「ここ変えて!」シリーズ。
シリーズの出発点は女性の育休取得率。
女性の取得率の高さに疑問を抱いたことありませんか?

女性の育休取得率81.6%(2020年度)

私の職場の様子から考えると、女性の育休取得率は80%を十分に超えているだろうと想像できます。

でも、同業種ではない知人の中には離職している方々も見えるため、何となく違和感を覚え、いくつかのデータを見てみました。

報道される育休取得率は、厚生労働省の雇用均等基本調査によるものです。

『令和2年度雇用均等基本調査』の結果概要」によると、2020年度の育休取得率は、女性で81.6%、男性で12.65%でした。

第一子の出産を機に退職した女性46.9%

次のデータを見てみましょう。

現代日本の結婚と出産─ 第15回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書 ─」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、もともと就業していた女性のうち、第一子の出産を機に退職をした女性が46.9%、継続は53.1%となっています。

第一子の出産で女性の約半数が退職しているため、そもそも育休を取得できるのは就業している女性の半分しかいないことになります。

これらのデータを合わせて見ただけでは、状況をきちんと理解できないので、あまり報道されていないデータにも目を向けてみました。

『令和2年度雇用均等基本調査』の結果概要」における育休取得率81.6%は、無期契約の労働者の取得率です。

パートや派遣などの女性の有期契約労働者は含まれていません。

有期契約労働者の育休取得率は別に示されており、女性62.5%となっています。

この数字を見ても、まだ、なるほどとは思えない感じがします。

「正規の職員」の3割、「パート・派遣」の7割が出産を機に離職

現代日本の結婚と出産─ 第15回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書 ─」(国立社会保障・人口問題研究所)には、「結婚・出産前後の妻の就業継続率、および育児休業を利用した就業継続率」が示されています。

「正規の職員」は69.1%、「パート・派遣」は25.2%が就業を継続しています。逆に見ると、「正規の職員」の3割、「パート・派遣」の7割以上の方々が、出産を機に離職していることなります。

このデータを見ると、肌で感じていることと数字が、ようやく一致した感じを受けます。

厚生労働省の発表する育休取得率に、国立社会保障・人口問題研究所の「結婚・出産前後の妻の就業継続率、および育児休業を利用した就業継続率」も加味すると、働いている女性のうち、出産を機に3割の方が離職し、残りの7割のうちの81.6%が、育休を取得しているということになります。

調査した時期と対象が異なるため、単純にかけ合わせることはできませんが、約56%と聞くとしっくりきます。

有期で働いて見える方の実際の育休取得率となると、約16%。

離職の理由は、それぞれ事情があり、様々だと思います。

「正規の職員」の3割、「パート・派遣」の7割以上の方々が出産を機に離職している。

ここにも、何らかの社会的な問題がありそうです。

育児・介護休業法は改正される

2022年4月1日から、有期雇用労働者の育児休業取得要件が緩和されます。

<改正前>
(1)引き続き雇用された期間が1年以上
(2)1歳6か月までの間に契約が満了す ることが明らかでない
<改正後>
(1)の要件を撤廃、(2)のみに
※無期雇用労働者と同様の取り扱い

厚生労働省(2021)「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」より

育児休業の取得要件が緩和され、有期雇用労働者も育休が取得しやすくなります。

これで有期労働者が辞めなくても済むようにと、事が単純に進めばいいのですが。

社会的な問題は、無期と有期の取得要件の差だけにあるのではなく、有期で働かざるを得ない実態にもあるのだろうと。

2013年の労働契約法の改正により、有期契約の5年繰り返しで無期労働契約へ転換されることになりました。

その結果、私の周囲ではほとんどの方が5年で雇い止めとなりました。

私の職場で、有期契約5年経過で無期契約となったのは1件しかありません。

育休が取得できたとしても、有期契約の方は5年経てば辞めざるを得ないことに変わりありません。

大学卒業後、有期契約で社会人となった女性がいたとします。

無期契約の希望がかなわず、有期で働かざるを得なかった。

契約書には、働きぶりによっては5年以内に無期に転換される可能性があると。

有期契約中に育休を取得したら無期契約への転換の道が途絶えてしまうかも。

そう考えてしまうなら、有期契約中の妊娠を避ける選択をする方もみえるはずです。

「雇止め法理」の適用は、契約違反だと申し立てる労働者の行動からスタートします。

裁判所で争っている間、雇い止めにあった有期労働者はどうやって生活すればいいのでしょうか。

法律は優しくないんですよね。

社会的立場の弱い方に。

事業主は交わした労働契約書のすべてを労基署に登録しないといけないとか、有期労働者との契約状況を定期的に報告しないといけいないとか、中長期的な雇用計画を作成して公表しないといけないとか、強い立場の人に厳しくできないのかなと。

弱い立場の方が守られていると感じられる社会。

そんな社会で生活していきたいなあと。


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