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印刷営業新人日記〈TLに携わって〉

みなさま、お久しぶりです。

去年の4月に藤原印刷に入社しました田川いちかです。

前回noteに投稿してから約1年が経ちました。
この1年で私は印刷の愛おしさや一筋縄ではいかない大変さを知ったり、
経験したり、1冊の本ができる過程の魅力にひたひたに浸かっております。
印刷会社として、自分の担当した本に愛情が湧かないわけがなく、完成した本を毎日愛でております。

その中から今回私が担当した『TL』をご紹介いたします。

昨年秋に丸の内で実施された〈ストリートスタディーズ〉から生まれた映像・音楽作品《TL》

▽TLとは

大手町・丸の内・有楽町エリアでは、彫刻が並ぶ〈丸の内ストリートギャラリー〉だけでなく、アーティストの滞在スタジオや現代美術ギャラリーなど、最先端のアートのトレンドに触れられるスポットが続々生まれています。そんな丸の内で第16回目となる「藝大アーツイン丸の内」が2022年秋に開催され、その会期中に実施された夜間ゼミ〈ストリート・スタディーズ〉での学びを元に制作された映像・音楽作品が《TL》です。そして、その一連の活動のアーカイブと、作品のライナーノーツ等がまとめられたZINEが今回担当した『TL』なのです。

▽印刷・製本のこだわりPOINT!

ここからは印刷・製本のこだわりPOINTをご紹介いたします!

①片面つるつる片面ざらざらの「OKブリザード」という包装紙を使用!
めくるたびに手触りが変わる魅力的でナイスな用紙、と同時に印刷がとても難しい用紙でもあります。もともと包装紙として作られた用紙なので、ざらざら面に印刷されることを想定されていません。
そのため紙粉が多くでたり、上手くインキがのってくれなかったり・・・大変ですが、ここはうちの腕の見せ所!包装紙での印刷経験が過去に何度もあるため、今回も綺麗な印刷を実現できました!

②印刷時の見当合わせ
「OKブリザード」はすべりやすいため、印刷時に表面と裏面の位置がズレる(=見当ズレ)が起こりやすい用紙です。加えて、今回表紙と表紙裏が反転してまるで透けているようなデザインのため、印刷時に位置がズレないようにシビアな調整をしています。

表紙と表紙裏が反転してまるで透けているようなデザイン

③画像補正
夜の写真が多いため、暗い部分が印刷時に潰れないようにプリンティングディレクターが画像補正をしています。

MVから切り出した夜の大丸有の写真

④特色1色ページとカラーページの融合
全64Pの半分が特色1色、半分がカラーというページ構成になっています。
内容に合わせて、インクを変える。読んでいて飽きない作りが『TL』の魅力のひとつです!

特色の青で印刷したページ
カラーページ


⑤中綴じの留め具が銅色
打ち合わせの際にグラフィックデザイナーの樋口さんがプロジェクト内容を詳しく説明してくださり、またMVも見せていただきました。
大丸有にはレンガ調の建物が多くあるため、街の雰囲気と合った銅色の留め具を提案いたしました。(一般的に中綴じの留め具は銀色が多いですが、実は銅色の留め具も製本会社さんは常備しているんです!)

⑥寸足らずの変形中綴じ製本
打ち合わせが進んでいく中で、2つのサイズ違いの判型の用紙を中綴じで留める製本が候補に挙がりました。予算内で理想のカタチに近づけるために現場からたくさん知恵をもらい、最終的にはじめの16Pが寸足らずという製本になりました。内容によって、紙のサイズを変える。ぱっと目を惹く仕上がりになりました。

協力会社のブックジャパンさんの技術なしではできなかった製本です

内容だけではなく、印刷・製本面でもこだわりが溢れている『TL』をみなさんにも実際に手に取っていただきたい…!

▽配布場所

有楽町ビル10FのYAU STUDIOで無料配布しています。
気になった方はどなたでも自由に持ち帰ることができますので、ぜひ丸の内エリアにお越しになった際はお立寄りください。ZINEの配布はなくなり次第終了です。

YAU STUDIOでの展示会の様子

▽TL完成報告会

ひとりも人が住んでいない「大丸有(大手町・丸の内・有楽町エリア)」。人が住んでいないからなのか、地面がコンクリートで敷かれているからなのか、私はこの街に対して、硬派でどこかひんやりしていて、静かな印象を抱いていました。しかし、TLの完成報告会に参加させていただき、アート作品のパブリックアートが多いこと、この街の隙間や影に居心地の良さをみつけた「雑草たち」が生えていること、人と人の繋がりを大切にしていることを知り、少し見方を変えるだけで大きくその街の印象が変わると実感しました。

報告会の最後には映像・音楽作品《TL》をみました。東京藝術大学の学生によるのサウンドと、映像のクオリティに圧倒され、特に印象深かったのは、舟越桂さんの《私は街を飛ぶ》という彫刻を絵で描いたスケッチブックを持って丸の内のいたるところに登場させる場面です。その場で動けない彫刻をいろんな場所に連れ出したいと考える学生がスケッチブックをもって歩く場面をみて、今まで感じたことない発想に思わず納得しました。

また完成報告会に参加されたひとりひとりの手元に『TL』の冊子が渡されている光景に胸が熱くなりました・・・

東京藝大の宮本准教授がプロジェクト内容を説明している様子

▽MVのURL

MVの視聴はこちらからご覧ください!東京藝術大学の学生が制作した惹き込まれるオリジナルサウンドトラックにもご注目ください。

▽TLに関わった方々

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制作:荒川真穂、飯沼爽、小田口桜子、上條晴翔、桂融、杉山明理朱、田村正樹、宮城薫、山田ゆり、山本光
映像撮影:河内彰
録音:市村隼人
デザイン:樋口舞子
ドローイング:荒川真穂、高橋梓、田村正樹、山田ゆり、山本光
写真:廣田達也
ZINE編集:渡辺龍彦

企画制作:東京藝術大学宮本武典研究室
協力:有楽町アートアーバニズムプログラム実行委員会、丸の内ストリートギャラリー
発行:東京藝術大学社会連携センター(東京藝大アーツプロジェクト実習 丸の内)

印刷:藤原印刷
製本:ブック・ジャパン株式会社
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▽まとめ

ゼロからイチを生み出していく藝大の学生さんたち、その生み出す過程でサポートしている各分野のプロの方々を見て、羨ましく、私もサポートできるひとりになりたいと心から思いました。

印刷会社は自ら何かを生み出すわけではなく、お客さまが生み出したものをカタチにするお仕事です。その中で今回の案件のようにお客さまが生み出したものをどうカタチに残していくのか、満足していただけるのか、よりコンセプトに合った本になるように、印刷会社としての知恵や経験を振り絞っていきたいと改めて思いました。

またこんなにもwebが当たり前になった時代に紙媒体として残していくことを選ばれたお客さまのために全力で協力していきたいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
明日からもはりきって、印刷に向き合ってまいります!

(田川いちか)


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